ファイナルバトル・ヤギサオ編(2)

エピソード文字数 2,622文字

「行くぜ!」

「おう!」

剣を振りかぶり、グラディが駆け出す。続くランス。大ダコを斬る。突く。
一方、ナギ達に襲いかかる半魚人。ナギが火炎銃で焼き払う。リンはレンをかばいながらタクトを操る。走る。踊るように跳ぶ。リンの戦い方は華麗だ。しかし半魚人は後から後から湧いてくる。

水しぶき。飛び退いたリンの目の前に突如、大蛇が。赤い口を開いて、リンに。

「あ!」

タクトを向ける。間に合わない。敵が大きすぎる。飲まれる。赤い赤い口がかぶさって来る。

ドン! グラディがリンに体当たりした。危機を免れたリン。グラディは剣を大蛇の口に。大蛇は剣を咥え、グラディを振り上げる。振り落とされるグラディ。別の大蛇が現れて、飛ばされたグラディを飲み込もうと待ち構える。今度はグラディが危ない!

ビシィ! ナギの放った火の玉がグラディを狙う大蛇に命中した。大蛇がのけぞる。グラディは危機を逃れ、落ちながらもすぐに態勢を立て直す。だが、剣がない。大蛇に飲まれてしまったのだ。

「グ、グラディ!」

ランスがグラディに槍を投げる。グラディに襲いかかる大ダコ。槍を受け取り、大ダコをなぎ飛ばす。ランスとグラディ。背中合わせに槍を振り大ダコの群れに立ち向かう。しかし、

海の中から立ち上がる八つの大蛇の頭が、ランス達を狙う。二人は大ダコをなぎ払いながらも、襲ってくる大蛇を槍で突く。顎を貫き、眼を潰す。だが、

別の大蛇の頭が、やられた頭の傷口を舐める。傷口が、すぐに回復してしまう。

「くそっ! こいつら、不死身だ!」

グラディとランスのピンチ。

「ザコはアタシに任せて! ナギはタコをお願い!」

リンは半魚人どもをタクトで消して行く。ナギはグラディ達のもとに走り、大ダコに炎の魔法弾で立ち向かう。レンはみんなに回復魔法をかけ続けるが、レンのMPにも限りがある。敵が、多すぎる。

大蛇の頭の一つが、ランス達の隙をつき、レンを飲み込もうと襲いかかる。

「ナギ! お姉ちゃんを!」

リンの声で気づいたナギが、レンに襲いかかる大蛇の口の中に炎をぶち込む。ひるむ大蛇。だが、今度はリンが油断した。レンの無事に気を取られた隙に、伸びてきた大ダコの腕に足を取られた。

「キャアア!」

生け捕ったリンを噛み砕こうと、大ダコの口が開く。間一髪、タクトを。大ダコを消す。しかしすぐに別のタコの腕が、リンのタクトを持つ腕に絡みついた。続けて足が、左腕も、大ダコに捕らわれる。タクトが、使えない!

大ダコも半魚人も次々現れる。レンを守りながら戦うナギ。レンもナギもMPが切れつつある。

グラディとランスは、大蛇の攻撃をかわすのがやっとだ。傷つけても傷つけても、大蛇は回復してしまう。

このままでは駄目だ。みんな、やられる。助けて、悪魔さん。隙を見てナギはペンダントを手にする。

だが。
そのペンダントが、奪われた。

「ほう、これがお前の切り札か?」

突如ナギの目の前に現れた男。

ナギは、一瞬にして恐怖に体が凍りつくのを感じた。

キキキキ! リョータが身を細めて怒りを露わにする。軍服のようなものを身にまとった男は、2メートル以上の高さからナギを見据える。冷たい。一瞥で相手の心臓を凍らせるほど冷たい眼。青い皮膚。さらに冷酷さを感じさせる薄い唇が、歪むように微笑む。

「かわいい顔をして、私に刃向かうとはな。お前がパセムの妹……この世界の管理者か?」

「ナギ! 逃げて! そいつがリークよ! 1対1じゃ勝てない!」

リンが叫んだ。リンは両腕両足を大ダコに蹂躙されながらも、喰われまいと必死に踏ん張っている。

「ハッハッハ! さすがだな、リン。バカ姉妹、また会えたな。しかし、これで終わりだ。私から一度逃げられた幸運を無駄にしたな。どこか世界の隅で穴ぐらにでも隠れておれば良かったものを。リン、今度こそお前に拷問虫をくれてやろう。タコよ、しっかり捕まえておけ」

ナギのペンダントは、リークの右手の中に。悪魔は、招べない。リークはナギを見据える。その恐ろしい瞳から目が離せない。体がガクガクと震える。指先一つ動かせない。これが本当の恐怖。これが、ラスボスの脅威。間違いなく、この男は、指一本で、ナギを、殺せる。

「ナギ! そいつから離れろ! 早く!」

グラディが叫ぶ。やはり剣と槍では勝手が違う。槍スキルを極めていないグラディには不利な戦い、大蛇を払いのけるのが精一杯だ。

「フン、小煩いガキどもが。そいつはヤマタノオロチという大蛇だ。そいつを倒したければ、八つの頭を同時に切り落とすんだな。一つ切り落としても、すぐに再生するぞ。八つで一体だからな。せいぜいあがいて、八つ裂きにされるがよい。さて、管理者よ。私が怖いか? そんなに怖いか? ようし。もっと怖がらせてやろう」

「ナギに、触るなああっ!」

渾身の力で、リンはどうにかリークにタクトを向けた。消えろ。

しかし、
リークは不敵に笑うだけだ。何も起こらない。

「! どうして消えないの!?」

「無駄だ、リン。私にそれは通用しない。お前の消去魔法を無効化するバリアを私はまとっているのだ。お前の幼稚な魔法など、敵ではないわ。おとなしく待っていろ。この女の眼と舌をくり抜いてから、お前の耳に拷問虫を入れて」

突然。リークに雷が落ちた。衝撃。ナギは呪縛を解かれて倒れこむ。やったか?

しかし、リークは全くの無傷で、微動だにせずそこに立っている。

今の一撃が、レンの唯一の攻撃魔法だった。しかし、それも封じられた。唇を噛むレン。

「面白いな、白魔法師。私が雷属性だということを忘れたか? お礼をやるぞ、バカな白魔法師」

まずい! レンは魔法を唱える。瞬時にレンに落雷。爆発。

「レンさん!」

間一髪、防御魔法は間に合った。それでもダメージは大きかった。レンは一命こそとりとめたものの、気を失い、倒れ伏した。

「フン、後でじっくりバーベキューにしてくれよう。どれ、管理者よ。遊びは終わりだ。ナギというのか? 名前くらいは覚えておいてやろう。じっくりと、絶望を、味わえ」

リークは嘲笑いながら、ペンダントを持つ手をナギの目の前に差し出す。そしてそれを、

ぐしゃりと、握り潰した。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ナギ ……本篇主人公。16歳。失踪した兄を探すため、冒険の旅に出る。

パセム……ナギの兄。ナギを守るためにゾンビと戦い、行方不明になる。

アビス……ナギの親友。元気よく、いつもナギを励ます。パセムを慕っている。

フロス……ナギの親友。明るく好奇心旺盛で、人なつこい。

ムジカ……ナギの親友。おっとりした少女だが、天才的ピアニストでもある。

グラディ……ナギの幼なじみで、連邦一の剣士。一子相伝の雷剣の使い手。

ランス……グラディの親友で、連邦一の槍使い。口下手でどもるところがある。

エジェット……グラディの祖父で剣の師匠。

リン……黒いゴスロリの黒魔法師少女。右頰にコウモリのタトゥがある。

ピンセル……リンと一緒におり、空間の隙間を走る車を操る。喋らない。

リョータ……メルカートおじさんの家で出会った七色インコ。

ノートン……真実を伝えるベリテートのジャーナリスト。

悪魔……???

ルナ……ハティナモンで出会った不思議な女の子。回復魔法が使える。

ティマ……連邦とは海を隔てたモルニ国出身の女の子。ネピオルネスのスコラに通う。真面目でしっかり者。

アミィ……ティマの親友で、同じくモルニ国出身。活発で明るい性格だが、スコラはさぼりがちになっている。

レン……リンの姉で、数少ない白魔法師。様々な回復系魔法を使う。誰よりも優しいが、変わり者な一面もある。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み