第13話  蓮の恋愛事情 2

エピソード文字数 3,253文字



 ※


 聖奈との話し合いを終え、階段を降りる。


 下駄箱を開けて一人寂しく下校しようとすると、後ろから妙な声が定期的に聞こえてきた。

 さっきから聞こえてたが、その声が白竹さんっぽく感じると、俺は振り返った。


ひぃ~ふぅ。ひぃ~ふぅ

 そんな声を上げる白竹さんが見えると、後ろには数人の男が付いて来ていた。



 なんだありゃ。

 白竹さんは息を切らして必死に歩いてるが、後ろにいる男達は至って普通。彼女を心配するように、取り巻きのようにも見える。




 いや、違うな。

 傍から見ると男共から逃げてきたようにも見えるぞ。




 彼女が靴を履き替えている間にも、男に喋りかけられている。

 

 ん? あれ? よく見ると……


 染谷君や俺に絡んできた上級生もいるじゃねーか。などと思っていると、




「お。ヘタレ発見」と長髪野郎。


 あちゃ~見つかってしまった。面倒くさいなもう。

 俺を見るなりこちらに寄ってきた長髪野郎は、馴れ馴れしく俺の肩をぽんぽんと叩く。



お前さ、友達が一人でボコボコにされてんのに、よく逃げれるよな?
ボコボコと言うのは嘘だろ? 染谷くんは無傷だったぞ。
お前マジで男なの? 情けねーなおい

ああうぜぇ。


ウザすぎて速攻パンチしたくなる。

そんなエキサイトしそうな俺の傍に、白竹さんが寄ってくる。

黒澤くん。どうしたのでし? この方はお知り合いさん?
そうそう。こいつさ、俺のパシリなんだよ。美優ちゃんも好きに使ってもいいぜ



 なんだこいつ。白竹さんの知り合いなのか?

 えらく馴れ馴れしいんだけど。



 ってか白竹さん。こんな男とつるんではダメですよ。とか思っていると、他の男から「今から何処か行こうよ」と詰め寄られている。




 と、そこで俺はこの状況が分かってきたのだ。


 あ、そっちの人間達か。

白竹さん? もしかしてナンパされてるんですか?
あひ。そ、そうでしゅ

 そうでしゅか。こりゃ白竹さんも大変だな。


 もしここが学校じゃなくて、楓蓮だったとしたら容赦なく暴れまわるだろう。

 何だか妙にエキサイトしてきた。


 自分の事は我慢できても、友人だと思える人にちょっかい出すヤツは許せない。


 ここは俺がどうにかしなければ……そう思っていると白竹さんは長髪野郎を指差し、やたら強い口調で言い放ったのだ。


あなた。黒澤くんにイジワルしたのでしか?

イジワルっていうか躾だよ。可愛がってやってんの


別に殴ってもいいんだぜ?

あふ。しょ、しょんなことをしてはいけませぬ!
すると白竹さんは顔色を変えたと思ったら、手に持っていた鞄を置くと、ファイティングポーズをとり始めるのだ。
み、美優は怒ります! やっつけます。やっつけるよ!

いやいやいや……


ちょっと白竹さん! こ、拳がプルプル震えてます。

あなたにバイオレンスなストーリーは無理っす!

とか思った瞬間だった――






ぐはっ!


長髪野郎の顔の横に上履きが見えたと思えば、思いっきり顔にめり込んだのだ。


勢いよく吹き飛んだ長髪野郎は下駄箱に激突すると白目を向いていた。




ありゃ一撃だ。完璧に入ってたぞ。

ったく。いくら潰しても沸いてくるね。鬱陶しい


 吐き捨てるように言い放ったのは、銀髪のイケメンもとい……



 え? あれ?

 あれは……魔樹さん?



 ※

美優。ごめん。遅れちゃった

 ナンパ野郎と白竹さんの間に立ちはだかったのは、楓蓮がバイトする喫茶店にいた魔樹さんだった。


 というか、同じ高校に通っているのは知らなかったぞ。




 さっき長髪野郎に背後からローリングソバットをかましたのはこいつだ。


あのね。みなさん? どれだけ美優に言い寄っても……無駄だから。


これ以上付きまとわないでくれる? うっとーしいんだけど

 白竹さんの周りにいた男達に言い放つ魔樹さん。



 っていうか……魔樹さん?

 喫茶店のクネクネキャラと全然違うんですが。あの僕っ娘キャラはいずこに?



 男の制服を着ているので男だって分かるが、それにしても綺麗な銀髪だな。

 しかも白竹さんの顔のパーツを装備した美青年。女子生徒の制服にしても全然違和感が無いぜ。



美優に近づくな。消えろよ
一撃で長髪野郎をダウンさせたのが効いたのか、ナンパ野郎達は魔樹さんと距離を取ると、あっさりと散開し、別々の方向に逃げてしまう。
ふぅ。本当にキリがないね。これだから共学は……

ナンパ野郎がしつこいのは、俺だって楓蓮で体験した事があるだけにその気持ちが分かる。



白竹さんも俺以上に付きまとわれてると思うと、ご愁傷様としか言いようがない。

で? 君は逃げないの? 潰しちゃうよ
は? なんだこいつ。
俺にケンカ売ってるの?

違うよ魔樹! 彼は……黒澤くんはクラスのお友達なのでし

遠方組のお人でして、な、仲良くやってもらってまする

    白竹さんが説明してくれると、魔樹はようやく俺を睨むのをやめたのはいいが、今度は明らかに鬱陶しそうな顔になっていた。

くりょさわくん。あのね。彼は魔樹っていって私の双子の弟なのです。よろしくね。

そ、そうなんですか? 双子……でも何となく似てるというか……

おっと。危ない。咄嗟に会話を合わせたが……

既に知っている事だが、蓮で聞くのは初めてだからな。


そういうリアクションを取らないといけない。

ふんっ。別に言わなくていいのに

 明らかに敵意むき出し。ナンパ野郎とあまり変わらない態度。


 見るからに「失せろ」と言わんばかりである。

黒澤くん。大丈夫だからね。


もし変な人に絡まれたら、魔樹がやっつけてくれるよっ

と白竹さんが言うが、魔樹は「やりません」と即答していた。
何で僕がこんな奴を助けないといけないの? ふざけないでよ

なんだそれ? さっきから俺にケンカ売ってる感半端無い。ってかケンカ売ってるよな?

ふてくされたような魔樹は、腕を組みながら続ける。

あとさ、美優と友達になるのはいいけど、好きになっても無駄だから。先に言っておくよ
は? 何言ってんだこいつ。

本当の事だろう? 君もね、それを認めた上で彼女に接してくれるなら僕も黙っておくけど。


何かあったら……そこで寝転がってる男のようになるから


初っ端からここまで俺を煙たがっているのが分かると、流石に顔に出ちまう。

行こっ美優。早く帰ろう。もう頭痛いんだよ
待って。あ、あの黒澤君。今日の事はちゃんと。ああっ



 連れて行かれる白竹さん。だけど俺も同じ方向へと歩き出す。

 帰り道は一緒だからな。途中「離して」と連呼する白竹さんを無視し、強引に連れて帰ろうとするのだ。



 こればかりは助けられないな。二人は双子の姉弟なんだろ?

 危険は無いが、これ以上はなんらかの事情があるかもしれないし、聞かないでおこう。



 ってか。こういう面倒事を見ると、二人とは距離を置きたくなってくる。

 関わりたくないというか。できればバイオレンスなイベントは避けたいんだよ。





 そのまま校門を潜っても、俺は二人の後を歩いていた。

 まだ二人は揉めているようだな。



魔樹! お願い。ちゃんとお話をさせて!

強引に連れて行かれる白竹さんだったが、魔樹の手を振りほどくと、彼女らしからぬ声を上げた。

離して! 魔樹っ! せ、せっかく近くの席になったのにぃ、な、仲良くしたいの!



これじゃ私……また……

仲良くしたい……


その白竹さんの言葉が聞こえてくると、無意識に「待てよ」と二人に声を掛けていた。


立ち止まる白竹さんに、魔樹は俺の忠告を無視するように彼女の手を取ろうとした。その時――

てめぇ。いい加減にしろよ。さっきから勝手に出てきてやりたい放題、好き放題言いやがって。


彼女は話があるって言ってんだろ?

なんだって?

これには魔樹も無視できなかった。


ピタっと立ち止まると、こちらに振り返り、すぐさま睨みつけて来る。



―――――――――――――――――

 登場人物紹介。


 長髪野郎。


 蓮や龍一にケンカを吹っかけ、今度は美優をナンパしようとして魔樹に蹴られる。



 どう考えてもやられ役っぽいけど、実はレギュラーに昇格する人。


 名前がどんどん変わります



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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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