【昔話】 ❀ 西方ヒストリア3

エピソード文字数 1,492文字

盗みを働き、山の獣をむやみやたらに狩る山賊たち。


村人たちが困り果てていると聞いた忍者・ 忠平(ただひら) は、お殿様に「妙案がある」と申すのだった。

まず、山賊たちの動向を探ります


はじめに村が襲われたのはいつでしょうか。

三月(みつき)ほど前、年のはじめの頃であった。


それが、いかがした?

日が経っていますね。


とすると、山賊たちはどこかにねぐらを設けたはずです。


おそらく水を確保出来る場所でしょう

水を確保できる場所…。


はて、どこじゃろう?

私が見つけて参りましょう

おぬし1人では無理じゃ。


わしも同行しよう。


このあたりの山の、川や滝のある場所なら心得ておる

黒木様。かたじけない

家臣・黒木と、
忠平(ただひら) は、森の中へ「山賊たちのねぐら」を探しにでかけた。

水のある場所というと「布水の滝」か「蛇渕(じゃぶち)」かのう。

どのような場所なのです?

布水は、落差の高い荘厳な滝じゃ。

あまりに高すぎて滝壺は作られとらん。だが水は確保できよう。


蛇渕(じゃぶち)は、青く美しい滝壺じゃ。

滝自体は小さいが、十分な水量を確保するなら、あちらかもしれぬ。行ってみよう

二人は「蛇渕」へ向かうことにした。

山奥に、このような美しい場所があったとは!


なんと清らかな水でございましょう。まさにここは秘境でございますね

……。
黒木様?

ここは秘境。「龍」の住まう、神聖な場所じゃ。


本来は、おぬしのような輩が踏み入るなど決して許されぬ

家臣・黒木は、腰の鞘から、するりと銀の太刀を抜き取った。


剣先を、忠平にぴたりと合わせる。

わしは、殿とは違う。


やましい心をいだき、この里へ参ったのであろう。


嘘を申したら承知せぬぞ。

黒木様、そのようなことは決して…!!


わたくしは、殿へ恩義を返しとう一心でございます!

たわけ! 忍びは、うまく回る舌を持つという。


おぬしは「肥後の主君亡きあと、あらぬ疑いをかけられて城を出た」と申したな?


肥後に探りを入れところ、清正公を殺めたのは、徳川の「忍び」と噂だそうじゃ!


それがお主なのであろう!

濡れ衣でございます。


わたくしまで殺められそうになり、逃げたまでのこと。

偽りにせよ、誠にせよ。


そのように、疑いをかけられた者を、置いてはおけぬ。


なにより、殿にあらぬ疑いがかけられるとも知れぬ。

忠平は黙って、家臣・黒木の話を聞いていた。


静かな沈黙の中に、蛇渕の滝の水音が立つ。


しばらくして、忠平は暗い面持ちを引き締め、まっすぐに家臣・黒木を見つめた。

殿に迷惑がかかるというのなら、私は去りましょう。


しかしながら…

忠平は膝を折り、深く頭を下げた。

殿のお役に立ちとうございます。


現世の浄土たるこの里を荒らす山賊たちを、私の技でこらしめてやりたいのです。


それまでは、しばしこの身を里に置かせくださいませ。


黒木様、伏してお願い申し上げます。

おぬしが、それほど恩義を感じているのなら。


その証を見せよ

承知。ありがたき幸せ

家臣・黒木は、太刀を鞘にしまった。

はっ、黒木様! 遠くから話し声が聞こえまする…


隠れましょう

二人は草むらに身を潜めた。


いっとき間を置いてから、がやがやと話し声が近づいてきた。

( この者は、こんなに遠くの物音を察知していたのか… )

肥後…日向…薩摩…聞き慣れぬ方言も多い。


里の者ではありません。おそらく山賊でしょう

彼が方言を聞き分けていることに、黒木はさらに驚いた。

このまま身を隠し、あとをつけましょう。


ねぐらをつきとめ、賊の人数・年齢・武器をさぐるのです

あいわかった

 ♡ Special Thanks


【蛇渕の写真】

 引用:宮崎県町村会「西米良村」 https://youtu.be/0l3IQe8NTB0



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登場人物紹介

日高萌栄 (ひだか・もえ


中学2年生、13才の少女。

カピバラをこよなく愛する。

重黒木 鋼じゅうくろぎ・はがね


中学2年生、13才の少年。機械いじりが得意。

椎葉 発(しいば はつ)


中学2年生、13才。

萌栄の友達。花火師の孫。

黒木 殿下(くろき でんか)


萌栄のライバル

那須 雨音(なす あまね)


殿下の友達。

黒木 媛(くろき ひめ)


殿下の妹

日高 結芽(ひだか ゆめ)


萌栄のお母さん

日高 地平(ひだか ちへい)


萌栄のお父さん

日高 雲水(ひだか うんすい)


萌栄の祖父

重黒木 功(じゅうくろぎ こう)


鋼のお父さん

重黒木 理玖 (じゅうくろぎ りく)


鋼のお母さん

椎葉 康次(しいば やすじ)


発の祖父。花火師

黒木 智子(くろき ともこ)


殿下、媛のお母さん。

黒木 未夏 (くろき みか)


クラスメイト

中武 陽(なかたけ はる)


クラスメイト

那須 貴也(なす たかや)


クラスメイト

那須 由子(なす ゆうこ)


クラスメイト

お殿様。


西方の里を治める、お殿様。

南朝の忠臣、その子孫。

忠平(ただひら)


お殿様が助けた忍者。

加藤清正に仕えていたが、毒殺の濡れ衣をかけられ、逃げてきた。

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