第3話(10)

エピソード文字数 2,920文字

「……絶加速……。――――!」
《従兄くん? 私の奥義で、なにする――《ドスッ》――きゅぅぅぅ…………》

 説明しよう! 魔王使いに支配されたレミアが本気で手刀を打ち込み、シズナは失神したのである!!
 ふふんっ。こうやって高速命令+不意打ちのコンボを叩き込んでおけば、目覚めた時に『暑くて倒れたんでしょ』で丸く収まるのだ!

「レミア、命令使ってごめんね。許してください」

 一仕事終えた俺は、彼女がいる方向にこうべを垂れる。
 意識を奪って動かすってのは、どうにも好きになれない。だから毎回、こうせずにはいられないんだよねぇ。

「色紙クン、どうしましたの? トラブルが起きてますの?」
「さっきまで厄介なのが起きてたんだけど、魔王使いの力で解決させたよ。今のは、レミアを操ったお詫びなんだ」
「あっ、そうだったんですの。色紙クンは優しいんですわね」

 反省していると、麗平さんはふわっと目を細めた。

「強大な力を持てば、それを最大限利用したくなるもの。自分勝手に力を使わないって、意外にできないんですわよ」
「そう、かな? 当たり前だと思うがなぁ」
「現に、セブンナイツになるには――騎士の武器を与えられるには、人一倍心が温かく綺麗でないといけませんの。そうじゃないと、たとえ善人であっても、力に溺れて悪用してしまいますからね」
「ふーん、そんなモンなのか。その心境は解せないなぁ」

 だって、善人なんでしょ? 善い心を持った人なら、善悪の区別がつくはずだ。

「ほんとのほんとに優しい人は、それを理解できないものですわ。これからもずーっと、そのキミでいてくださいまし」
「気絶させる男は優しくないと思うが、うん。力に翻弄されずに生きていきますわ」
「へへへっ、期待してますわよ。んじゃ色紙クン、肩車をしてくださいな」
「あいよっ。了解です」

 俺は今度こそ麗平さんを担ぎ、彼女は空間の裂け目に両手を挿入。黒い線の中をモゾモゾ探り、美麗な装飾が施された金と銀の双剣を取り出した。

「これが、探し求めていた聖なる剣か……っ。俺達はついに、再封印に必要なものを手に入れたんだね!」
「ええっ。やっと、やっと見つけましたわ……! ラーとミー、会いたかったですわよっ!」
「うぉっ!? 麗平さんの全身が輝いてるっ」

 聖剣を手にした彼女の身体から、白く清らかな光が放たれる。
 騎士ミラルには、呪いがかかっていた。こうしてソレを打ち消せる得物と再会できたから、力が戻ったんだな。

「…………これでウチは、ガレを封じ込められますわ。無事に完了したあとは、キミの護衛に加わるのも面白いですわね」
「三人もずっと屋上ってのは大変なんで、学校編を担当してくれると大助かりだよ。是非、そうして頂きたい――と言っていたら、早速そんな展開になりましたな」

 すっかり定番となったイベントの、幕開け。俺らの目の前に、身長2メートルはある単眼の大男が2人出現した。

「『チェンジ・マナ』は、オレ様達のモノ。心臓、喰らう」
「そこの女に興味はない。死にたくなかったら去れ」

 オレンジ色の皮膚でスキンヘッドの異形達は、口から1・5メートルはある金属製の棍棒を出してゲヘへと笑う。
 コイツらは比較的温厚っぽいけど、俺を狙う者に変わりはない。こうして仕掛けてきたのだから、あの世に旅立って頂こう。

「一応、『金硬防壁』を展開してっと。麗平さん、戦場の死神女神の御力を拝見させてくださいな」
「モチ、そうしますわっ。『金剣(きんけん)』ラー、『銀剣(ぎんけん)』ミー、踊りますわよ!」

 右手に金色、左手に銀色の刃物を携えた麗平さんは、まるで空を翔る流星のように疾走。流れるように左の大男に肉薄し、下ろしていた銀剣を華麗に振り上げた。

「この女、速い! だが――防ぐっっ」

 ヤツは既の所で棍棒を割り込ませ、ガキンッという金属音がこだまする。

「オレ様たち『強肉族(きょうにくぞく)』は、筋力が随一だ。力比べなら負けんぞ子ネズミ!」
「……ザコの証の一つ、人を見た目で判断する。ウチの売りは、速さだけじゃないんですわよっ!」

 彼女が神速で手を引いて思い切り再度振り上げると、「ぐあっ!?」。ヤツの驚き声と共に、金属の棍棒が宙を舞う。
 麗平さんはなんと、両手で握られたデカい得物を片手で弾き飛ばしてしまったのだ。

「得物がない敵は、赤ちゃん同然っ。ジエンド、ですわね――」
「甘い! オレ様がいるぞ!!

 ここで、片割れが助太刀。麗平さんの横側から、大上段に構えた凶器を振り下ろしてくる。

「隙ありだ! このまま潰れて死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
「にひひっ。その程度では死にませんわっ」

 麗平さんはそちらに目をくれてないにも拘らず、金剣で軽々と攻撃を受け止める。流石は五千万人分の力がある、選ばれし戦士だ。

「くっ……っ。うぐ……! ぅぐぐ……っ」
「やられたらやり返すのが、戦う者の流儀ですわ。ラー、お仕置きしなさいっ」

 彼女がニンマリすると、金剣が光を放ち金粉が噴き出る。そしてその粉は磁石に対する蹉跌のように、瞬く間に片割れの身体に纏わりついた。

「っっ!? これはっ、なんだ!?
「これは心に悪い部分があればあるほど熱くなる、正義の金粉ですわ。悪心の量により最大1000度に到達するんだけど、キミはどうかしら?」
「がへっ…………」

 言下、ヤツの身体が溶けた。
 あらら~。アイツには相当悪い心があり、かなりの温度まで上昇したようだ。

「ラー、お仕置きサンクスですわ。今度は、ミーにやってもらいましょうか」
「ひっ、ひぃぃぃぃ! うああああああああああああああああ!!

 武器を飛ばされ相棒を殺された大男は、背を向けて反対方向に駆け出す。
 これは、言わずもがな逃走。ヤツはワープをせず――すっかり平常心を失くし、情けない悲鳴を上げて無様に走る。

「うああああああああああああああああああ! ぅああああああああああああああ!!
「ウチは、戦場の死神女神。敵として出会ってしまったら、生きては帰れないんですわよ――」
「この者に、麗平様の御手を煩わせる価値はございません。残党はわたくしめにお任せを」

 敵の逃走経路にサクが現れ、虚空から青い日本刀を取り出し構える。
 彼女は刀を青色の鞘に入れたまま、腰を落とした。あれは抜刀術の体勢だ。

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! どけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
「わたくしめは、悪には容赦致しません。下衆よ散れっ!」
「し、死にたくないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! だっ、だぁ!」

 大男は間合いに入った瞬間、無理矢理身体を捩じって方向転換。俺から見て、右側――誰もいない方向に駆けていく。

「抜刀術って、こういう変化には対応できないんですわっ。黄村クンっ、ウチが代わりにアイツを――」
「お、べ?」

 遮二無二四肢を動かしていた大男の身体が、突如分割。上半身は斜めに落っこち、下半身は数メートル進んで大地に転がった。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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