1-1-5〜天雷の刑〜

文字数 1,488文字

 地面に黒い稲妻が走り、周りの人を瞬時に斬りつけて柏麟(ハクリン)の方へ向かう。

 柏麟(ハクリン)は、左手を茶碗のような形にし、その中に神々しい光を発する気をため黒い稲妻に放つ。瞬時に金色の光る鎖になり、黒い稲妻を止める。
 黒い稲妻は、黒い影をまとった人であった。
 金色の光る鎖にその人の手足は縛られている。
 柏麟(ハクリン)は、縛られている人の元に瞬時に移動し、縛られている者を美しい顔から想像できないほどの形相で睨みつけ、
「お前

がこのような自体を招いたことは分かっている」
「我の前で跪け!」

「っく...押しつぶされる...」
 金色の光る鎖に縛られた者は、身体が動かないばかりか、(ひざまず)く動作をしてしまっている。
(こっ、これは...霊圧(れいあつ)!!)
(こいつとの間にこんなにも差があったなんて...)
 仙術(せんじゅつ)の修行した度合いによって位がある。
 霊圧(れいあつ)とは、位が自分より下の者に、自分の『気』を相手の上に載せて、動きを封じる仙術(せんじゅつ)である。

 星命(セイメイ)が、柏麟(ハクリン)の前に現れ
「先程の振動で招陰陣(しょういんじん)が消滅したことを確認しました」
「また、お父様の件ですが、見つかりましたので(わたくし)が作った陣で場所がわかるようになっております」
(わたくし)は先に行ってお父様の記憶が戻る方法を試して参ります」
と言い、すぐに姿を消す。

「残念だが、お前に聞くことは何もないようだ」
 柏麟(ハクリン)は中指と人差し指を立ててその間に紙のようなものを出現させ、そこに金色の文字のようなものを書く。それを地面に投げつけると地面には五芒星が出現する。
 そして、刹那の無音のあと、雷雲が現れ、青い稲妻を跪く者に一撃する。耳を塞ぐほどの音を立て、巨大な砂煙を発生させる。
ーーーーーーーーーー
 稲光が轟いた時、近くにいた、ある門派に所属する二人組は、足がすくみ固まっている。
「これは...天雷(てんれい)!!」

「神の怒り...」

「足が震える...。怖くて近づけない...」

 しばらくすると、砂煙が徐々に勢いをなくし、少し周りを見渡せるようになった。
 二人組は、辺りを見回し、別の門派の三人組を見つけて、
「あの、厳しい師匠で有名な門派の者さえも腰が抜けている...」

 砂煙が収まり、中金色の光が出現する。
 二人組は、金色の光の方へ向かい、金色の巨大な柱を目にする。
「あの天雷(てんれい)を跳ね返すほど強力な結界だったのでしょう...」

 すると、黒ひげをもじゃもじゃと生やした男が後ろから姿を現す。
「師匠!」
 
「太古の伝奇にこうある」
「『都の災難訪れし時、最強の神、姿を現し災いの元に鉄槌を下す』と」
「じゃ...最強の神、柏麟(ハクリン)上帝(じょうてい)!!」
 
 次々と門派の者が集まってくる。
 周りの者が呆然と立ち尽くす中、この二人組は、
「敬意を表せ!! 柏麟(ハクリン)上帝(じょうてい)がお見えになるぞ!!」
 砂煙が収まると全員が(ひざまず)き、柏麟(ハクリン)の姿を拝もうとするが、すでにその姿はなかった。
 柏麟(ハクリン)が残した、五角柱の金色の壁が広がり文字が浮かび上がる。
『これ以降は、巨大な邪気は発生しないだろう』
『だが、三界(さんかい)安寧(あんねい)の為、修行に励むことは大切だ』
『来年の武道大会にて三界(さんかい)の平和を願う祭事を行え』

「はっ。我ら、三界(さんかい)安寧(あんねい)の為に」
ーーーーーーーーーーーー
 柏麟(ハクリン)は、ある男性が横たわっているのを見ながら星命(セイメイ)に、
「やはりその方法でやれば、記憶が戻るのか...」

 星命(セイメイ)は、
「そうでした〜」
「お父様の司命(しめい)簿()が復元できて本当によかった」
「あとは、連れて帰りましょう」
「この方のご家族が待つ、我らの神殿に」
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