人間代表になりました!

文字数 1,815文字

どこだここは!

周りを見渡しても鉄筋だけになったビルや苔だらけになった店の看板など機能をなしていない街が目に入った。


誰もいない……のか?

辺りを見回すが、人影は見えない。ただ風に吹かれて積もった砂がさらさらと流れていくだけだ。

何か少しでも生きた物の鼓動を感じたくて耳を澄ませる。

もしかしたら足音や物音が聞こえるかもしれない。

風が周りの音を遮る。


意識を集中するんだ。風の音は切り取ってそれよりも遠くで何か音が鳴っていないかに意識を集中しろ。

!!

弓矢を持った少女とゴスロリの幼女が激しい戦闘を繰り広げながら主人公の前に姿をを現した。

な、なんなんだぁ!!

ケモ耳にしっぽが生えた褐色の少女が弓矢で攻撃をして、ゴスロリ幼女が魔法的なもので応戦していいる。

な、なんて……

最高なシチュエーションなんだぁ!!

あまりの声の大きさに戦いに集中していた二人の意識が主人公へと向けられた。だが横の敵を意識しつつも武器をこちらに向けている状況で俺が危険なことには変わりない。


誰だ
ふぁ!声も可愛い!最高なんじゃ~
何よこのいかれた男は、あんたの味方じゃないの
こんな奴しるか。お前の見方ではないのか

そんなわけないでしょ。これだから獣は浅はかで嫌なのよ。

まぁどっちも味方でもないのなら殺すだけよ

それに関してだけは同感だな、敵なら殺すのみだ
幼女は存在自体が尊い。ありがとうございます(心の中で合掌)
ちょっとそこのあなた
はい?
あなたどこの種族のものなの。返答次第によっては殺すけど名前を名乗る権利をあげるわ

えっと俺は、主人公です。ゲームの女の子を落とすことだけが特技のオタク男子です。

種族って言われると困るけど……人間かな?

人間……お前は魔術を使わないのか
使えたらもっといい人生送ってる
そこの獣畜生みたいな出で立ちもしてないし、武器を持っていないところを見ると本当に何もできないただの人間みたいね
えぇ、なんの力もないごく普通の人間ですとも
少しの間沈黙が流れた。二人の少女はこちらを静かにじっと見つめている。
ふっ
ふふふふふ、あははははは
幼女の高い笑い声が荒廃した街に響き渡る。
ごめんなさい、可笑しくってこらえきれずに笑っちゃったわ
私も正直驚いている。まさか生き残りがいたなんてな
えぇ、確かにあの時全員皆殺しにしたと思ったけどどこかに隠れていたのかしらね

お前は胸を張るべきだ。滅びたはずの種族の唯一の生き残りなのだからな。

私はお前に敬意を払おう。

私の名は彩夜だ。獣族の長であり戦士でもある。この大戦でまたお前たちの種族を争えることを喜ばしく思う。

そうね、私も生き残りには敬意を払うべきだわ。

私の名前はクラルテ、魔族の唯一の生き残りよ。どうか存分に楽しませて頂戴ね。

俺が生き残り?一体どういう意味なんだ

貴方何も知らないの?まぁいいわ教えてあげる。

この戦争は三大種族が生き残りを掛けた戦いなの。一つは魔族そして獣族あとなんの力も持たない人間ね。でも戦争が始まって直ぐに私とそこの獣女があなたたち人間を滅ぼしたわ。それからは魔族と獣族がただひたすらにしのぎを削っていたわけ。

だがそこにお前という滅びたはずの種族の生き残りが現れたというわけだ。

勿論だが私たちはお前を敵とみなし容赦なく殺しにかかるぞ。

そういうこと!

だから、存分に逃げて喚いてくださいね。

お、俺もしかして人間代表なのか……

ってかこの状況すごくやばくね!

ふふ、それじゃ生き残りをかけたデスゲームを再開しましょうか!

とにかくその場を離れなければとどこに向かうでもでもないが走り出した。

走りながらこれからこの世界でどうやって生き残っていくかを考える。

あの二人を倒さないと俺の身の安全は保障されない。でも俺には立ち向かう武器がない。

どうすれば……

はっ!

一つだけあるじゃないか。誰にも負けない特技が

あの二人を攻略して仲間にすればいい。

この大戦にルールなんてない。とすれば一種族が生き残るのではなく全種族が共存すればいい。

そうと決まれば!

まずは拠点となる場所を確保したのち、あの二人を攻略するために情報を集めるか!

後ろから二人が終わってきているかはわからない。ただ今はとにかく安全な場所へ逃げるだけだ。その後のことはゆっくり考えればいい。

この世界に俺がどれだけの間いるのかもわからないし、もしかしたら元の世界へ帰れないのかもしれない。それでも目の前に置かれた状況を楽しむことはできる。

がぜん楽しくなってきた!最高ゲームじゃねーか!
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登場人物紹介

私は、クラルテよ。フランス語で光や輝きという意味なの。

女の子に歳を聞くのは無粋じゃないかしら、まぁでもいいわ。

これでも私まだ12歳なの。

魔族、魔術師の家系のことよ。その種族の生き残りであり、唯一の戦士よ。

もちろんだけど、魔法系の攻撃が得意よ。だから肉弾戦はあまり得意ではないわ。だって私まだ12歳の子供だもの。

でも生き物を殺すのは大好きよ。鮮血が飛び散る瞬間は何事にも変えられない快感を感じるわ。もちろん生き物の中に人も含まれるからね。


私の名は彩夜(さや)、獣族の数少ない生き残りで長でもあり戦士でもある。

我々の種族は少数ながらも生き残りがいてな、敵である魔女に見つからないようにひっそりと暮らしている。

私たちは普通の人間とは成長の速度が違ってな、まぁ簡単に言えばお前たちよりも長生きしているのは確かだ。だがあまり体に触ってくれるな、特に耳や尻尾は厳禁だ。

私は弓矢のを主とした遠距離攻撃が得意だ。矢が雨のように無数に降り注ぐ奥義を受けて生き残った者はいない。接近戦もできなくはないが、父上の形見である刀をあまり抜きたくはない。無情に罪もない命が散っていくのは心が痛む。

あまりしゃべることは得意ではない、あと無駄なことが嫌いだ。よく笑顔が可愛いと子供たちに言われるが、私は常に冷静でいることを心掛けている、戦場に笑顔はいらない。

主人公、ごく普通のおたく系男子高校生。何の力もないが女の攻略することは誰にも負けない特技だ。

「俺に落とせない女の子はいない!」

目の前にケモ耳少女とゴスロリ幼女が戦っているだと……一言で言って最高です。

え?俺人間の最後の生き残りなの??まじで?


てなわけで俺、人間生き残り代表になりました!

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