第2話     出会い

文字数 2,313文字

ミ〜ン〜 ミ〜ン〜 ミ〜 と,セミの鳴き声が公園中に響き渡っている中バスケットコートでは修太が毎日シュートの練習をしていた。
コートのフェンス越しに一台の車が通り過ぎ、後部席に座っていた老人が窓越から外を見るとバスケをやっている修太の姿が一瞬 彼の目に入っが、車は彼の姿を後にして走り去って行った。
老人が乗る車は何度も公園前を通るたびにバスケをやっている修太を見かける用になっていた。

ある日 突然、老人が運転手に声を掛けた。

「田中君 車を止めて呉れないか ここで降りたいのだが」

「え‼︎ あと少しでご自宅ですが…」

「公園に寄って行きたいんだ」

「…… 分かりました」

車を止め老人が降り、運転手が話し掛けた。

「奥様には近くの公園で降りて散歩をしながらご自宅に戻るとお伝えします」

と言って車を自宅に向け走り出した。

老人は公園に入って行きコートの中に有る木陰のベンチに座り暫く修太を見てて、ホ〜 背が低い子だがシューティングバランスが良いしドリブルの動きが早く素晴らしいボールのバウンドが軽く手に吸い込まれて行くみたいだ、それより普通小学生は皮では無くゴムボールを使うのが多いけれど この子は違う皮のボールに慣れてるとっ言うよりも手に馴染んでいる感じだし、あんなに年期の入ったボール… それだけシューティング・ドリブル練習をしてたといゅう事か?
上手い人に確り教われば今以上に上達すると思うが…。

老人がベンチから修太に話し掛けた。

「ね〜 君 小学生かい? ここで練習してるのかい?」
「え‼︎ 僕… そうだよ 毎日ね 来年から中学なんだ」
「ホ〜 何歳の時からバスケを始めたのかい?」
「ん〜 分からないよ 気付いたらこのボールで遊んでいたからさあぁ〜」
「小学生いにしては良いボールを持ってるね」
「このボールお父さんの形見なんだよ」
「ホ〜 お父さんの形見ね… でぇ バスケは亡くなったお父さんに教えて貰ったのかい」
「そうだよ〜 お父さんも公園でやってたから、 ボクも一緒に行って遊びながら教えて貰ってた」
「ホ〜 ストリートバスケか だからボールにキズが付いてるのか」
「あれ‼︎ また外した おじさんと話しながらやってるから外してばかりで入らなくなったよ‼︎」
「おっと ゴメンよ  気が散ったかい? そこからの距離だともう少し高めにと言うより空に向かって力を入れず高く山なりに打ってみてごらん」

「こんな感じ」

言われた様に修太は夏のまっ青な大空に向けてファッと打った… 力が抜けたボールは高く山なりの線を描きながら綺麗にゴール目掛けて一直線に…

「入った!」

修太は、お父さんが亡くなってからは人に教えて貰う事が無く、教えて貰えた事が嬉しかった。
お父さんと一緒に色々と教えて貰いながらバスケを楽しく遊んでいた事を思い出し、あまりにも嬉しくて老人が座っているベンチに走りハイタッチをしに行った。
笑いながらハイタッチを受けた老人はやっぱり思ったより筋が良い子だ、あれほど力が抜けたボールを打つとは思ってもいなかった。

「ね〜君 名前は?」
「三山修太‼︎」
「ホ〜 修太君か… 良い名前だ… ホォホォホォ〜」
「また 修太君の練習見に来て良いかね」
「良いよ」
「では、またね 一生懸命シューティングの練習頑張るんだよ絶対に君は今以上に上手くなるから」
「うん 頑張る 言われた様に高めに… だよね‼︎ またね バイバイ」
「そうだよ 忘れたらダメだよ ホォホォホォ〜」

とっ 言って笑いながら老人は公園を後にした。
修太も練習を終えてドリブルをしながら走って家に向かった。

ガラガラと横開き戸を開けて

「ただいま」
「おかえり 修太」

奥で夕食を作っているおばあちゃん(小野トキ)とお母さん(三山マリ 旧姓 小野マリ)が、おじいちゃんが本堂で待ってるから早く稽古着に着替えて行って

父親が亡くなった翌年に千葉県勝浦町に在る母の実家 修源寺に戻っり両親と生活をしていた。

おじいちゃん待たせてごめんね
「お〜と 来たか 待ったぞ…」

おじいちゃんは修源寺の住職 名は小野源太
夜は本堂で合気道道場として週2回町の人や子供達に教えていて、修太は毎日夕飯の前に教わっている。
稽古を終えて家族4人で夕飯を食べている時に母か…

「修ちゃん、今日何か良い事あったのいつもよりニコニコしてるよ」
「公園で練習してたらおじいさんにシュートのやり方を教えてくれた事を思い出して」
ばあちゃんが
「そりゃ〜よかったの どんな感じの人じゃった?」
「そうだね、うちのじいちゃんは坊さんの着衣と夜は稽古着にスエットとは違いビシッとスーツを着ててダンディーな感じだったよ」
じいちゃんが
「ワシだってダンディーだぞ」
皆んなで笑いながら
「どこが‼︎」

その頃、老人は自宅のリビングルームに有るソファーに座り考え事をしていたら、妻(和江)が隣に座り話し掛けてきた。

「あら〜 帰ってたの気付かなかったわ どうしたんですか、 楽しそうな顔して考え事ですか?
田中さんから聞いたわよ 途中で車を降り公園に寄ってから歩いて帰って来るなんて。珍しいわね… 公園に寄るなんて〜 何か楽しい事有ったのかしら?」
「ちょっと興味深い小学生の男の子と知り合ってね」
「あら 珍しいわね。小学生の男の子なんて、もしかしてその男の子バスケットをしてたの?」
「おゃ‼︎ 分かりましたか」
「そりゃ〜 分かりますよ。長い間お父さんと暮らしてるんですよ、余程の事が無い限りお父さんが車から降りて公園に寄るなんてね」
「ホォ〜 そうだね」
「また、公園に行くんでしょ‥‥ たまには散歩した方が良いわよ」

「そうだね ホッホッホッホ〜」


この日が初めての修太と老人の出会いだった。

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