※※※

文字数 560文字

(全ては幻想。自らが作り出した、幻。)

********

「寂しい?」

誰かが聞いた、
――…ああ、この人は知ってるじゃないか。

遠回しに、言わないでいい。

「×××…?」

「正解です。私が残ってしまったという事は××の中で、一番印象が薄かった娘は私なんだ」

「それは、どういう」

××はふわりと長い髪を揺らし背中を向けてきた。
シャンプーの良い香り。ああ、知っている。

「簡潔に説明するね」「××、今まで貴方の世界は夢。」
「覚えてる?悲しい事があって、現実から瞳を剃らした日を」

――…この人は何を?
ゆ、め?

「それすら、曖昧なのですね。」

呆れた風に呟き、×××は微かに唇を動かす

か わ い そ う

「そんな目で見るな、お前はそんな娘じゃないだろう…?」

「夢の中では、演じただけにすぎない。それすら気付かない××…ホントに可哀想。」

―――もう、一番愛した人の顔すら見い出せないでしょ。

本当に泣きそうな顔で見られて胸がちくりとした。



いつも、傍にいた笑顔があった。
いつも愛して愛されて、
抱き締めてくれた存在が

確かに。



「…――っあ゛あぁあ゛ぁ!」


頭に響くきーん、という音に耳を塞ぐ。
次には。×××すら。

×××?
…――誰、だっけ。


「ごめんなさい、信じてあげられなくて」

誰宛かも何宛かも判らない。ただ自然と溢れた謝罪を、

もう、だぁれも聴いてなんかくれない。
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