存在しない
文字数 1,534文字
周りに血塗れのパパとママ、
ミミを取り囲む黒い服装をしたひとたち……
――あの日、ミミの世界は変わった。
けどミミは生きている。ルミちゃんが教えてくれる。
"仕事"まであと少し、時間があったミミは、それまでの暇つぶしに、と…
ルミちゃんが趣味で作っている新聞記事をスクラップしたファイルをぱらりとめくった。
(変な趣味、って言ったら怒られた)
でも、少し目を通したらすぐにルミちゃんの趣向が判った。
あぁ…"仕事"で始末したやつらの記事かな?
こいつは一週間前に目玉をくり貫いて。あいつは3ヶ月前くらい…確か、普通に首を切ってやったんだ。
思わず笑みが溢れる。
暗殺者の仕業、なんて国は発表できるわけないから、適当に強盗の犯行、とか書かれてる。
全部ミミが、*してやったんだ。
大の大人ですら手出しできない、人間の屑を。
「………ぁ」
しばらくページをめくっていると 明らかに他の記事とは紙の色が違う一枚があった。
この一枚だけ、色褪せてちょっとくしゃっとなっていたのを伸ばした感じがした。
「山奥の小屋で、一家惨殺――っ、」
それは二年前の"あの"事件。そうか……惨殺、という事に"なっていた"んだ。
「被害者は………えっ」
被害者の名前を見て ミミは記事を疑った。
あの憎たらしいパパとママの名前と…あと一人、書いてあったの。
周りに血塗れのパパとママ、
ミミを取り囲む黒い服装をしたひとたち……
――あの日、ミミの世界は変わった。
けどミミは生きている。ルミちゃんが教えてくれる。
ならこれは、何?
最後の名前はミミ。ミミ=ルケシス。
きちんと遺体も三人、見つかったのだそうだ。顔や体がぐちゃぐちゃだったので詳しくは判らなかったと書いてはあるけど……
確かに ミミは死んでいた。惨殺されて……
なら、ならなら。今ここでスクラップ帳を見てるミミは…
誰?
その時扉が開け放たれ、ルミちゃんが帰ってきた。
時計を見るともう仕事の時間……
「おかえり……」
「ただいまミミ。もうすぐ、時間――」
そこまで言いかけて ルミちゃんは私の見てるものに気付いたらしく、怪訝そうな顔で近づいてきた。
「勝手に見たんだね」
「ごめんなさい」
「怒ってないから……大丈夫だよ。 さぁ、早く支度をして?」
「ま、待って……」
多分ここで聞かないと しばらくは機会がないかもしれなかったから……
「ミミは、死んでたよ?」
曖昧な言い方だけど、疑問をぶつけたの。
そしたら意外にあっさり、ルミちゃんは答えた。
「……それ、二年前に病気で死にそうになってた資産家の娘さんだよ。 ミミが連れて来られたすぐ後に、"可哀想に"息を引き取ってね。 一人だけ行方不明とかだと捜索されるから、ミミの代わりにその娘さんを……ね」
「……」
その娘が本当に"病気で息を引き取った"のかは、――もう本当にどうでもいい。
そんな事に一喜一憂するほど ミミは子供じゃない。
でも
「じゃあ、この世界にはもう"ミミ=ルケシス"は居ないんだ……」
世間的にはミミは死んでしまったから。
何故か、ちょっと、判らないけど悲しくて、うつ向いた時、
――頭に暖かい感触。
頭を撫でられている。
「よしよし」
「ルミちゃん」
「いいじゃないの? 世界にもうミミが居なくても」
だって。
そう それは単純な事。
「私が、ミミは此処に居るんだと知ってるのだから」
……あぁ そうなんだ。
ちっぽけな世界で構わない。そのちっぽけで でも愛すべき人が、ミミを判ってくれる。
なら、それ以上にミミは何を望むというのか。
「そうだね。 ……くすくす」
「何がおかしいの?」
「だって……死んでるはずの人間が、人を殺す。 くすくす…なんだか、面白いの」
それは常識では考えられない事。でも構わない。
「さ、行こうルミナ。 狂宴のはじまり、なの……♪」
ミミ達は、悪魔なのだもの。
ミミを取り囲む黒い服装をしたひとたち……
――あの日、ミミの世界は変わった。
けどミミは生きている。ルミちゃんが教えてくれる。
"仕事"まであと少し、時間があったミミは、それまでの暇つぶしに、と…
ルミちゃんが趣味で作っている新聞記事をスクラップしたファイルをぱらりとめくった。
(変な趣味、って言ったら怒られた)
でも、少し目を通したらすぐにルミちゃんの趣向が判った。
あぁ…"仕事"で始末したやつらの記事かな?
こいつは一週間前に目玉をくり貫いて。あいつは3ヶ月前くらい…確か、普通に首を切ってやったんだ。
思わず笑みが溢れる。
暗殺者の仕業、なんて国は発表できるわけないから、適当に強盗の犯行、とか書かれてる。
全部ミミが、*してやったんだ。
大の大人ですら手出しできない、人間の屑を。
「………ぁ」
しばらくページをめくっていると 明らかに他の記事とは紙の色が違う一枚があった。
この一枚だけ、色褪せてちょっとくしゃっとなっていたのを伸ばした感じがした。
「山奥の小屋で、一家惨殺――っ、」
それは二年前の"あの"事件。そうか……惨殺、という事に"なっていた"んだ。
「被害者は………えっ」
被害者の名前を見て ミミは記事を疑った。
あの憎たらしいパパとママの名前と…あと一人、書いてあったの。
周りに血塗れのパパとママ、
ミミを取り囲む黒い服装をしたひとたち……
――あの日、ミミの世界は変わった。
けどミミは生きている。ルミちゃんが教えてくれる。
ならこれは、何?
最後の名前はミミ。ミミ=ルケシス。
きちんと遺体も三人、見つかったのだそうだ。顔や体がぐちゃぐちゃだったので詳しくは判らなかったと書いてはあるけど……
確かに ミミは死んでいた。惨殺されて……
なら、ならなら。今ここでスクラップ帳を見てるミミは…
誰?
その時扉が開け放たれ、ルミちゃんが帰ってきた。
時計を見るともう仕事の時間……
「おかえり……」
「ただいまミミ。もうすぐ、時間――」
そこまで言いかけて ルミちゃんは私の見てるものに気付いたらしく、怪訝そうな顔で近づいてきた。
「勝手に見たんだね」
「ごめんなさい」
「怒ってないから……大丈夫だよ。 さぁ、早く支度をして?」
「ま、待って……」
多分ここで聞かないと しばらくは機会がないかもしれなかったから……
「ミミは、死んでたよ?」
曖昧な言い方だけど、疑問をぶつけたの。
そしたら意外にあっさり、ルミちゃんは答えた。
「……それ、二年前に病気で死にそうになってた資産家の娘さんだよ。 ミミが連れて来られたすぐ後に、"可哀想に"息を引き取ってね。 一人だけ行方不明とかだと捜索されるから、ミミの代わりにその娘さんを……ね」
「……」
その娘が本当に"病気で息を引き取った"のかは、――もう本当にどうでもいい。
そんな事に一喜一憂するほど ミミは子供じゃない。
でも
「じゃあ、この世界にはもう"ミミ=ルケシス"は居ないんだ……」
世間的にはミミは死んでしまったから。
何故か、ちょっと、判らないけど悲しくて、うつ向いた時、
――頭に暖かい感触。
頭を撫でられている。
「よしよし」
「ルミちゃん」
「いいじゃないの? 世界にもうミミが居なくても」
だって。
そう それは単純な事。
「私が、ミミは此処に居るんだと知ってるのだから」
……あぁ そうなんだ。
ちっぽけな世界で構わない。そのちっぽけで でも愛すべき人が、ミミを判ってくれる。
なら、それ以上にミミは何を望むというのか。
「そうだね。 ……くすくす」
「何がおかしいの?」
「だって……死んでるはずの人間が、人を殺す。 くすくす…なんだか、面白いの」
それは常識では考えられない事。でも構わない。
「さ、行こうルミナ。 狂宴のはじまり、なの……♪」
ミミ達は、悪魔なのだもの。
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