番外編短編・2024年1月

文字数 574文字

「へえ、陰謀論って社会的孤立からはじまるのかー」

 紗江子は、たまたまそんな情報を見た。

 社会的孤立→共通の敵(DS、悪の組織など)→界隈で結束→さらに孤立。このループ……。

 紗江子は今は普通の主婦だが、カルトにいた事もあり、他人事ではない。手法も全く同じというのも何とも言えない。後で知った事だが、当時の教祖はわざと変な修行をさせ、信者たちが孤立させる事を目指していたという。当時は、家族や友人、知人などに「論破」されていたものだが、教祖の手法にまんまと乗った形になる。後で親や友人にも謝罪されたが、当時のどんどん孤立して孤独になっていく経緯を思い出すと、トラウマレベルで嫌なものだった。

「そういえばお隣のレイコさんも陰謀界隈のインフルエンサーだっけ?」

 レイコとは最近は近所付き合いもなく、逆に「近づくな」と睨まれる事も多かったが、居た堪れない。

 とりあえずレイコに話しかけたりしてみるか。

 たぶん、こう言った人への特効薬は科学的な事を言って論破し、排除する事ではない。それは逆効果だ。人は正論ではなく、愛でしか救えないのだ。

 それに今は正月だ。普通は家族と一緒にいるものだが、一人でいるレイコを見ていたら、逆にこっちが嫌な気分になってきた。

「レイコさん、あけましておめでとう! 今年もよろしくお願いしますね!」

 紗江子は、彼女に話しかけていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み