第1話

文字数 910文字

僕は小学生の頃、もしも明日自分がいなくなるのなら誰にどんな手紙を残すか、という授業を受けた。確かその授業で僕は当時好きだった子にラブレターを送ると言った。
そして妻の恭子と9歳娘の愛華と僕の3人家族になり、ある日娘の授業参観ででその僕が小学生の頃と同じ授業があった。娘は、
「私はその手紙で私を産んで育ててくれたお父さんとお母さんに感謝の言葉を言いたいです。」
と発表した。その発表を聞いてついつい泣きそうになった。僕はその発表を聞いて改めて考えた。もし僕が明日いなくなるのなら僕は一体誰にどんな手紙を書くのだろう。
僕は妻に尋ねてみた。しかし妻は、
「明日死ぬことより今日を生きることを考えろ。」
と言う。確かにその通りなのだけれど、そういうことじゃない。
僕はその日の夜、妻と娘と親友の双子に手紙を書くことにした。まずは愛する妻に書いた。
「もし恭子がこの手紙を読んでいるならば私はすでに死んでいるのでしょう。妻と娘を残して死んでしまう俺だけどこんな俺でも愛していてくれてありがとう。こんな俺からの最後の願いだ。娘を幸せにしてやってくれ。今までありがとう。これからもずっとあの世でお前を愛し続ける。」
次に娘に書いた。
「愛華、父ちゃん死んじゃった。もう父ちゃんは帰ってこれないけど父ちゃんはいつも愛華の胸の中にいる。父ちゃんがいなくて寂しいときは胸の中の父ちゃんを呼んでみるといい。いつでも愛華をなぐさめに行くから。これからは母ちゃんをしっかり支えてくれ。絶対に幸せになってくれ。父ちゃんからの最後の願いだ。」
最後に親友の双子の慶太と慶介に書いた。
「慶太、慶介、久しぶりだな。といっても俺はもう死んでるんだが。そんなことよりお前ら元気に生きてるか?結婚もしないで2人で喧嘩ばっかりしてるんじゃないか?お前ら早く結婚して子供作れ。喧嘩なんかできないほど、周りも気にならないほど大切なものに気づけるからさ。これが俺からの最後の願いだ。」
俺は手紙を泣きながら書いた。別に明日死ぬわけでも自殺するわけでもないのに。そういえば明日から出張で遠くに行くから早く寝ないといけない。
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