現代人の一生と承認欲

文字数 1,637文字

現代人の生涯と承認欲の育ち方をみてみよう。
一例を挙げてみる。

生まれた子供はまず親に認められたいという気持ちが育つ。
なにか新しいことを習得すると、すごいね、上手だねと褒められる。
親に褒められることを嬉しく思う。
承認欲を満たすのは気持ちがいい。

〇〇ちゃんは歩くのが早い、運動神経がいい。
〇〇くんは言葉が出るのが早い、数字がもう言える様になった。
親戚、知人、同級生の親、保育園の先生から評価を受ける。
こういうことをすれば良い評価がもらえると学習する。

学生時代になると成績表が導入される。
各科目でテストが行われ、授業態度を含めて担任教師に評価される。
各科目の優、良、可という3段階ないし5段階で評価され、その合計点を競争するように煽られる。
社会が決めた枠組みで、あなたの成績は30点中18点です。
次はもっと頑張りましょうと言われる様になる。

『もっと良い成績を取りなさい。あの子はあんなに優秀なのに全くうちの子は。』
『スポーツができる人はかっこいい。』
『良い成績は取れないから、危ないことをして周囲の気を引こう。』
『あの子のように綺麗になりたい、整形したい。』
こうすれば親に家族に先生に、同級生に認められると考える様になる。
この繰り返しで承認欲を満たすと気持ちがいいことが自分の中に刷り込まれる。

恋愛をする。
特定の異性を好きになり、その異性にも自分を認めて欲しいと思う。
気を引くために身なりを整え、話題を考え、デートプランを考える。
どんな食事が好きか、プレゼントが好きかをリサーチしておくことも忘れない。
お互いに愛し合っていると思うが、価値観が違うだとかそういったことで結局別れる。

周囲の人々が認めるような優良企業に就職したいと思う。
優良企業に入るためには有名大学に入ることが近道だ。
有名大学に入るにはテストで良い成績を取らなければいけない。
良い成績を取るには勉強しなければならない。

優良企業に就職できても、承認欲は付きまとう。
社会に出ても承認欲を満たすことをが当たり前になる。
『上司からよくやったな、と言われたい』
『資格を取って同級生を見返してやりたい』
『怠けていると思われたくない』
『もっと仕事をうまくこなして上のポジションに着くんだ』

結婚して家庭を持つ。

都内に一戸建てを購入し、外車を買って休暇には子供達と一緒に旅行に行き、バーベキューをすることが夢になる。
それが世間にとって良いとされているから。
その理想に向かって働く。
より良い給料のポジションへ、会社へ転職をして働き続ける。

同僚や旧友とはこんな仕事をしている、どんな家を買ったか、どんなところへ旅行へ行ったか、
自分のライフスタイルはどうだ、家庭は円満かなど話をして、自分の生活を認めてもらいたい。
昔話にも花が咲く。
昔はこんなに馬鹿なことをした、悪いことをした。そういえばこういう恋愛をした。
過去の自分はこんなことをしていたんだ、と自分の成功談や体験談を誇張をしてそれを認めてもらいたいと思う。

子供が生まれると自分の所有物化して、自分の子供が優秀であることに満足を覚える。
逆に出来が悪いと怒り、体罰を与える。
自分の子供には上述のように、自分がされてきたことを刷り込む。
そうして育った子供が社会へ出てゆく。

子供達が去っても仕事は続く。定年まで働く。
勤めが終わると周囲から認められる機会が減る。
なにをしていいのかがわからなくなり鬱々とする。
その後は余暇を海外旅行や趣味の時間に当てる。
ハワイに行ってプールサイドでビールを飲み、夕陽を見る。
孫の顔がみたいと子供に圧をかける。

そして病や寿命で死期が近くなる。
なるべく周りに迷惑をかけないようにしたいと言って家を離れて施設で死ぬ。


承認欲は生まれた時から徐々に自分のものになる。
元から備わっているようなものになる。
承認欲を満たすためにさまざまな夢を持ち行動する。
社会は欲を提示する。
こういうことが理想なんだ。
世間的に素晴らしいんだと謳う。
それを叶えるため人は死ぬまで承認欲を満たし続ける。
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