第54話  染谷龍一視点  決意  6

エピソード文字数 3,161文字

よっしゃ! やってやるぜ。

 ますますハードになってゆく喫茶店。

 やっぱりだんじり祭りの効果は絶大だったようだ。


 気合は十分。後は無心で接客マシーンへと変貌するだけで良い。

それはいいんだけど……

 先程の楓蓮さんが脳裏に焼きついて離れねー。

 黒のショーツか。素晴らしい。


 ではなく……

ありゃ直視できねぇ……

 あまり見ないようにしよう。今の平常心がかき乱されてしまう。

 

 本当はじっくりと拝見したいのに、あまりにも綺麗すぎて……


 好きな人の顔を見れないって……なんなんだよ。

 

魔樹! 後は俺に任せろ。
あひ! お願いしゅまし

 そこからは俺と楓蓮さんと白竹さんによる、ゴールデントリオで何とか凌ぎきる。

 無心で接客を努めるが、店の外から無限に沸いてくる客を……潰す。潰しまくる。


 そんな状況のまま6時半。

紫苑さん! 坂田さん!
どうもっ! 遅れてすんません! すぐ着替えてきます!
私もっ。すみませんでした。
 すぐに更衣室へと消える紫苑だったが、坂田さんだけは俺の前に戻って来た。
あの……ほっぺが……

お~い! さおりん!

はよ来んかい! 先に着替えぇ

坂田さん。先に着替えちゃってくださいね。
はいっ! いてきます!

ふふっ。坂田さんは可愛いですね。

とっても働き者だし、きちんと挨拶もしてくれますし……


龍子さんの好みだと思いますよ。

 いあ。好みは……ぶっちゃけあなたです。

 無垢な笑顔を見せられると、暫くは直視できるが三秒ももたねー。


 

楓蓮ちゃ~~~ん! オムライス6つ頼むよ。頼んじゃうよ!

い、行ってきます……

 わかる。分かりますよ楓蓮さん。

 本当は接客したいんですよね?


 トボトボと厨房へ向かっていく後ろ姿がまた愛らしくて……

 つーか。喫茶店に来ると……平和だなぁとつくづく感じる。


 この世の最後の楽園。喫茶店エスペランザ。



 だから俺はこの場所を……全身全霊で守り抜く。


 どんな危険な奴が現れようとも……降りかかる火の粉は全て俺がなぎ払ってやる。



 ※



 ウチの接客のエースである紫苑が入ると、一気に優勢になる。

 

 あいつはマジで早い。

 オーダーとかも間違えないし、すんげー記憶力で驚かされるんだよな。

 レジも早いし、かつ丁寧。そして挨拶もとてもハキハキしており、マジで同じ人間なの? っておもう時がある。

 

 坂田さんや紫苑が接客に回れば、俺は自動的にオムライサーとなるべく厨房組に回る。



龍子さんも休憩どうぞ。行ってください
後は任せてくださいまし!

 なんだか最近。魔樹のキャラがわかんなくなってきた。

 

 おかしいな……


 紫苑や坂田さんは学校でのコイツを知ってるハズなのに……誰も突っ込まない。

 当然楓蓮さんも普通に喋ってるし……


 まぁいっか。ヤツはオムライス作成してるだけで幸せそうだし。


 というわけで休憩タイム。

おいおい。なんだこりゃ。

連絡来すぎだろ。

 休憩時間の間にスマホを確認すると、ヴァルハラメンバー達からの連絡がわんさか入ってやがる。

 総長という言葉がずらりと並び、龍一から龍子に指示を受けろとの報告に、今日は全員待機を命じた。


 ボロボロの奴らに護衛されても、何の意味も無いし、そんな奴らがウロウロしてっと、王二朗みてーにポリに職質されんぞ。



 その中ただ一人だけ。俺の意見に反し、護衛しますとか抜かす奴がいた。

 その昔。白竹さんをナンパしようとしたクソ野郎だな。 

 

 今はすっかり丸くなり、忠実なメンバーとなったが、あまりにも忠実すぎて笑えてくる。



 今日お前、顔面がクシャってたじゃねーか。また鼻が折れてんじゃねーか?


 とにかく。今日は顔を出すな。

 そう返信し、これ以上言うならぶっ殺すと続けて返信しても「しかし……」とか送ってきやがる。


分かってねーなコイツは。バカ野郎が。

「お前な……そんなボロボロの顔を楓蓮さんに見られてみろ。

 どうなるか分かってんのか?


 竜王を見つけてボコられた。って正直に言ってみろ。

 あの人は……お前らの為にも動くような人だって分からないのか」


「俺から楓蓮さんにいっておくから、安心しろ」

【鼻】

すみませんでした。確かに姫なら……言い出しそうだ。

そんなことになれば……そんな情けないことになれば……


護衛している俺達が一体なんなのか……

ヴァルハラメンバーのメンツ丸潰れっす! 


すみません龍子総長! 今日一日。全力で休みます。

 これでよし。メンバーへの連絡は以上だ。

 

 

 次の案件。

 

 龍子の電話番号に残された伝言。俺は早速電話してきた相手に掛ける。

どうも。龍子だ。どーいうことだよ

【半グレ集団。その1】


悪いが……俺達はこの件から手を引かせてもらう。

あの青髪のせいでチームは壊滅状態だ。


あんたの強さも知ってるし、あの男もイカれてる。

みんなで相談した結果、俺達はどちらつかずの中立の立場と取らせてもらう

ああそうかい。わかった。その代わり……こちらの情報も漏らすなよ

それなら俺もお前らとは関わらん。いいな?

 そう言って通話を切って、天井に溜息をぶっこいた。


 参ったねあの青バエ野郎……

 早速一つのチームを潰しにきやがったか。


 電話をかけてきたチームは、竜王一人にボコボコにされたらしい。



 王二朗いわく、捨て駒で人を襲うのが常套手段らしいから、即興の兵隊でも作ろうとしたのだろう。



 まぁでも。今のチームはマシだな。

 ちゃんと連絡は寄こして来たからな。


 その辺はやはり……龍子と王二朗で一悶着起こしたチームだけある。




 問題は……簡単に和平交渉に成功したチームだ。

 こいつらは簡単に寝返る可能性がある。


 別に寝返られても大した痛手ではないが……情報収集に支障をきたす方が困るのだ。

ああ~~ったくもう面倒臭ぇ……

 あの時ぶっ殺せなかったのがマジで腹が立つぜ。


 脳内で何度も「リミットが来てなければ楽勝だった」と繰り返し、今にもキレそうであった。


 

 そんなエキサイト中、更衣室に入って来たのは……楓蓮さんだ。


 さっきまでのキレッキレな俺を仕舞いこみ、にこやか笑顔を発動した。

あっすません。すぐに行きます
別に急がなくても大丈夫ですよ。大分客減ってきたみたいだし

 いやあの……更衣室で二人っきりというシチュエーションが……


 今日に限って、アルティメットな楓蓮さんを直視できず……

どうしたんですか? その顔……
 その一言に一瞬で我に返った俺は、すかさずこう返した。
あ~これ。久しぶりに翔姉にシゴかれましてね……ボッコボコです

 本当の事なんて言えやしない。

 言ったらこの人。今すぐに竜王探しに行きそうだし。


 後で真面目に説明しますから。

本当。ですか?
う、うんうん! 久しぶりに山田一家の地獄の鍛錬を……
酷い傷だ。ここまでやるなんて……俺の親父と一緒じゃねーか

というか、ウソっぽい。気がする。

目が泳いでるし。

ねぇ。本当ですか?
ほ、本当ですって! いあ~鉄アレイでぶん殴られた時は死を覚悟しましたね。
……ん? 何か隠し事?
……はい?
何かありましたら、私も相談に乗りますよ
むりむりむり! し、至近距離すぎる!
ふふっ、何かありそ~な予感。
な、何にもありませんよ。大丈夫ですっ!

 至近距離から万遍の笑みを受けると、すかさず顔を隠した。


 ダメだこの人……

 なんでそう……可愛いすぎるんですか?

やっぱ先行きますっ! い、行ってきます!

 おかしい。今日の俺はやたら上がっちまう。まともに話が出来ない。

 絶好のチャンスなのに、逆に逃げてばかりじゃねーか。


 なんでそうなるんだよ。

 分からない。分からないけど……


 何となく、こんな俺を見られるのがとても恥ずかしく思ってしまう。


 

 ああ……でも……

ウソばっかりだ……


何もかも。全て……

 だから余計に、楓蓮さんを直視できないのかもしれない。


 あなたにウソを付くたびに、顔もまともに見れなくなってしまいそうだ。

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登場人物紹介


 ★登場人物でも若干のネタバレを含みます。第一部からお読みいただきますようよろしくです。

 ★逆に第二部の登場人物を先に読んでから、第一部をお読み頂きますと、別の意味で楽しめます。

 

 ★読者視点は神視点。登場人物の心の声も聞こえます。(フキダシの色がこの色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年

 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 自分自身の事よりも、仲間の為ならば凄まじく有能になる。

 ★ 白峰楓蓮 しらみね かれん


 蓮の女性の姿。類稀なる美少女だが本人にはあまり自覚がない。


 外部には黒澤家の親戚(蓮の姉)となっている。

 楓蓮では世間との関わりあいを最小限にしてきたが、徐々に一人の女性として目覚め始める。

 

 自分を理解してくれる人間が増えるたびに楓蓮は飛躍的に成長してゆく。  

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生

 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。

 

 二部中盤で凛オンリーの章があります

★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは黒澤家の秘密を知るものだけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。

★ 黒澤 玲斗 くろさわ れいと

★ 白峰 麗華 しらみね れいか


蓮や凛のお父さん。ただいま遠方で仕事中。

麻莉奈や平八。ティナとは大親友。


後半から再び登場します

★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。

 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。


 高校当初から蓮と関わりを持ち、お互いに影響されてゆく。無二の親友?

 記憶喪失だったが、徐々に昔の事を思い出してゆく。


 二人目の主人公。

★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲

 おっぱい職人。ツイッタのフォロワーは10万以上の有名人。

 作中でも最強だと言われるが……

★ 白竹 美優 しらたけ みゆう

 

 男女入れ替わり体質

 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。とても内気で、語尾が変になる。

 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は魔優と入れ替わっている

 歌が上手く、全国でも有名な絵師でもある。(エロ同人が本業)

 

 三人目の主人公。 

★白竹 美樹 しらたけ みき


 白竹美優の男性の姿。

 外部では白竹魔樹と名乗っているので、彼を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で厨房担当したり、サイクルの都合上、学校でも魔樹として振舞う。

 男の子の身体で遊ぶのが大好き

★白竹 魔優 しらたけ まゆう


 男女入れ替わり体質。

 外部では白竹美優と名乗っているので、彼女を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で接客担当。サイクルの都合上、学校でも美優として振舞う。

 心の中は女の子なので、こちらが真の姿となる。

 四人目の主人公

★白竹 魔樹 しらたけ まき


 魔優の男の姿。外部に知られているのは魔樹である。

 蓮の隣のクラスで、常にクール。成績も良く、空手や合気道を習得。

 学校内では魔樹王子と呼ばれるほどモテる。


 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は美優と入れ替わっている

 乙女ゲー大好きのツンデレ。

★白竹 麻莉奈 しらたけ まりな


美優。魔優の母。入れ替わり体質。


とてもピアノが上手く、蓮はプロの犯行だと断定。

双子の母だけあり、とても美人だが色々とヤバい人。

男の姿は、でかい上にマッチョらしい。


★ じいじ


 白竹家のおじいさん。喫茶店のオーナー。

 小太りでツルっぱげ。チョビ髭が可愛い。

 厨房担当で楽しい事があると、その場でクルクル回りだす。

★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 男女入れ替わり体質。

 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的で、クラスでも人気がある。

 楓蓮に一目惚れし、ずっと彼女を追い求める。

 オムライサーでありポニテマニア。

 

 五人目の主人公

★山田 龍子 やまだ りゅうこ


 龍一の女性の姿。

 楓蓮を追って同じ喫茶店で働く事になる。全国でも有名な山田組の人間。

 ケンカが強く、蓮も認めるほど。

 楓蓮に近づく男を排除しようとする俺っ子。

★山田 虎子 やまだ とらこ


男女入れ替わり体質。龍一の弟(妹)

全国統一を夢見る女の子。既にチームを結成しており、チームヴァルハラと名づける。

口調はキツいが、兄弟には頭が上がらない。

デコトラならぬデコチャリで街中を暴走する。

★染谷 翔一 そめや しょういち 


男女入れ替わり体質。龍一の兄(姉)

龍一が恐れる唯一の兄貴。百人でかかっても勝てないらしい。

ただいま、新婚生活真っ最中。

★染谷 桜 (そめや さくら)


 翔一の奥さん。普通の人間。

 とても清楚で大人しそうな美人だが染谷三兄弟は彼女に対し頭が上がらない。

 翔一を女らしくする為、日々調教中。

★百済 紫苑 くだら しおん


 高校二年。軽音部。実家はソッチ系統の百済組。

 楓蓮達と一緒に喫茶店でバイトを始める。関西弁ちっくな喋り方だが、とても優しく後輩想い。

 蓮の同じクラスである、米山まゆこと、坂田沙織は小学校からの付き合い。

 マイブームはマジョリーナちゃん(ミニチュアダックス)を可愛がる事。

★坂田 沙織  さかた さおり


 高校一年。蓮と同じクラス。

 いつもニコニコ。おっとりとした口調でマイペース。

 紫苑と同じ軽音部。ベース担当。

 親が犬のブリーダーで楓蓮に二匹のダックスを譲る。

★ 西部

 蓮と同じクラス。

 事あるごとに蓮に絡んでくるが、その目的は聖奈や美優と接点が持ちたいが為である。

 ツイッター名では「モントゴメリー」。おっぱい職人を神と崇める。

★真鍋

 蓮と同じクラス。西部の友達。

 頭は良く、テストでも上位だが、彼もおっぱい職人を神と崇める。

 ツイッター名は「穴バースト」

★米山 まゆこ (だんじりバージョン)


 蓮と同じクラス。坂田とは昔からの親友で、紫苑は先輩に当たる。

 魔樹王子にベタ惚れてしまい、蓮に紹介してもらえるよう頼んだ。

 バスケ部所属。一年なのに相当の実力を持っている。

★ 三輪 加奈子 みわ かなこ

 

 蓮と同じクラス。坂田沙織の友達で幼稚園からの付き合い。

 男の子同士がホニャララするのが好き。

★ 清原 愛美 きよはら まなみ


 魔樹と同じクラス。米山まゆこと中学時代からの付き合い。

 ちなみに魔樹王子と呼び出したのはこの子。

★ 梶谷


 蓮と同じクラス。西部の友達で小学生からの付き合い。

 バスケ部所属。一年でレギュラー筆頭。

★高坂


蓮と同じクラス。梶谷の友達。

ギャルゲーのアイドルプリンセスをこよなく愛する男の子。

★ 鼻


楓蓮が命名。

その昔、蓮にケンカ売ってきたり、美優をナンパしたり、ろくでなし男であったが楓蓮や龍子にボコられる。だが楓蓮に鼻を治してもらったと勘違いしている。

楓蓮に殴られてから、とんでもなく優秀な男へ変貌する(だがケンカは弱い)

★ヴァルハラメンバー 


 只今メンバーは八人。

 虎子率いるチームヴァルハラメンバー。俗に言う不良だが、楓蓮。龍子。虎子には従順。

 実は全員イケメンレベルだが、とにかく頭も弱く、ケンカも弱い。

 NO表示されており、変なヤツが混じってます。 

 竜王 冴子 りゅうおう さえこ


 高校一年。西部曰く、彼女と美神聖奈。白竹美優を三大美女認定している。

 いつも笑顔。とても愛想が良い彼女だが……

 王二朗曰く、超危険人物。鞄にスタンガンを隠し持ち、女の子を襲うらしい

★ 播磨 王二朗 (はりま おうじろう)


 高校一年。竜王冴子と共に登場。190センチの巨漢であり極道顔。

 とてもじゃないが高校生には見えない容姿に、シルエット姿となっている。

 警官とエンカウントすると、ほぼ職務質問されてしまう。

 ゴリラのモノマネが神がかっている。

★竜王 将哉 りゅうおう しょうや


 萌ゴリと共に現れた男性。とてもイケメンだが萌にナンパーマンであると暴露されてしまう。萌は恋人だと告げるが……楓蓮は最初から将哉を警戒する。 

★稲坂 萌 いなさか もえ


 楓蓮が早朝マラソンに出かけた際に知り合った女性。

 巨漢で筋肉質なので、楓蓮は男だと勘違いするほど。

 とても気さくでしゃべりやすい印象を受けた萌ゴリ。ちなみにラッキースケベ体質。

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