第9話
文字数 1,344文字
「二年ってどれくらいでち?」
「十二か月で一年。だから、二十四か月かな?」
一通り泣いて冷静さを取り戻したヒメちゃんは、時の流れについてキャンベル君に教えてもらいました。
「ヒメちゃんは、九か月しか生きてないでち…?」
「そうだね」
「おかしいでち? ヒメちゃんは二年は生きられるんでちよね?」
「事故や病気がなければね」
天寿を全うできていたら、もっと長い間飼い主さんの側にいれました。
でもここで、ある疑問がヒメちゃんの頭に生まれます。
「どうしてヒメちゃん、九か月で死んでいるでち?」
「さあ? それはわからない。ここでは何で死んだかまでは知ることができないから」
九か月と二年では、長さが全然違います。
キャンベル君はあることを教えました。早く死ぬ理由は簡単で、誰かに襲われて食べられたり、事故に遭ったり、病気になったりするとそうなるようです。
そのどれかにヒメちゃんが当てはまるわけですが、
「ヒメちゃんは寿命で死んだわけではないんでちよね?」
「もう何度も言っているじゃないか。流石に九か月で寿命が尽きるハムスターはいないよ」
同じく九か月で亡くなったハムスターはみんな例外なく、病気や事故で死んでいました。
しかしヒメちゃん、事故に遭った記憶はありません。
「じゃあ病気かな? よくあるんだ。飼い主がちゃんと把握してなかったり、そもそも飼育をサボったり……」
「そんなはずはないでち!」
しかし、ヒメちゃんはキャンベル君の言葉に反発しました。
「ご主人しゃまはヒメちゃんのことを大切にしてくれていたでち!」
「でも、事故じゃなければ病気としか考えられないよ?」
「で、でも……」
もしヒメちゃんが病気で死んだとしたら、それは飼い主さんがヒメちゃんを愛せず飼育を疎かにしたということになってしまいます。
そんなはずがありません。
「ヒメちゃんはご主人しゃまに愛されてたでち! あり得ないんでち、病気は!」
「だけど! その年齢でここにいるってことは、そういうことだよ? 他のハムスターにも聞いてみなよ?」
「言われなくても、でち!」
ヒメちゃんはこの天国にいる他のハムスターに聞いて回りました。
しかし全員が、こう言いました。
「その年齢で死ぬのは、事故か病気だけだよ。寿命はあり得ない。事故の記憶がないなら、間違いなく病気だ」
と。
「う、嘘でち……」
どうして病気になったのかは、わかりません。ですがみんながそう言うのなら、ヒメちゃんは病気で死んだということです。
それ自体は、もう受け入れられます。ですがそうなると、
「飼い主は君のことを大切にしなかったんだろう」
みんな、そんな言葉をヒメちゃんに与えるのです。それが受け入れられないのです。
「ご主人しゃま……」
あの楽しかった日々。キャベツをもらったことや撫でてもらったこと、部屋を散歩させてくれたこと……。思い出は沢山ありますが、それらは全て嘘だったのでしょうか? 飼い主さんの笑顔は、偽りだったのでしょうか?
「嫌、嫌でち! 考えたくないでち! ご主人しゃまはヒメちゃんのことを愛してくれていたはずでち! 大切だったはずでち!」
ヒメちゃんは飼い主さんのことが好きで、愛していました。ですが、その逆……飼い主さんはヒメちゃんのことを愛していたのでしょうか?
「十二か月で一年。だから、二十四か月かな?」
一通り泣いて冷静さを取り戻したヒメちゃんは、時の流れについてキャンベル君に教えてもらいました。
「ヒメちゃんは、九か月しか生きてないでち…?」
「そうだね」
「おかしいでち? ヒメちゃんは二年は生きられるんでちよね?」
「事故や病気がなければね」
天寿を全うできていたら、もっと長い間飼い主さんの側にいれました。
でもここで、ある疑問がヒメちゃんの頭に生まれます。
「どうしてヒメちゃん、九か月で死んでいるでち?」
「さあ? それはわからない。ここでは何で死んだかまでは知ることができないから」
九か月と二年では、長さが全然違います。
キャンベル君はあることを教えました。早く死ぬ理由は簡単で、誰かに襲われて食べられたり、事故に遭ったり、病気になったりするとそうなるようです。
そのどれかにヒメちゃんが当てはまるわけですが、
「ヒメちゃんは寿命で死んだわけではないんでちよね?」
「もう何度も言っているじゃないか。流石に九か月で寿命が尽きるハムスターはいないよ」
同じく九か月で亡くなったハムスターはみんな例外なく、病気や事故で死んでいました。
しかしヒメちゃん、事故に遭った記憶はありません。
「じゃあ病気かな? よくあるんだ。飼い主がちゃんと把握してなかったり、そもそも飼育をサボったり……」
「そんなはずはないでち!」
しかし、ヒメちゃんはキャンベル君の言葉に反発しました。
「ご主人しゃまはヒメちゃんのことを大切にしてくれていたでち!」
「でも、事故じゃなければ病気としか考えられないよ?」
「で、でも……」
もしヒメちゃんが病気で死んだとしたら、それは飼い主さんがヒメちゃんを愛せず飼育を疎かにしたということになってしまいます。
そんなはずがありません。
「ヒメちゃんはご主人しゃまに愛されてたでち! あり得ないんでち、病気は!」
「だけど! その年齢でここにいるってことは、そういうことだよ? 他のハムスターにも聞いてみなよ?」
「言われなくても、でち!」
ヒメちゃんはこの天国にいる他のハムスターに聞いて回りました。
しかし全員が、こう言いました。
「その年齢で死ぬのは、事故か病気だけだよ。寿命はあり得ない。事故の記憶がないなら、間違いなく病気だ」
と。
「う、嘘でち……」
どうして病気になったのかは、わかりません。ですがみんながそう言うのなら、ヒメちゃんは病気で死んだということです。
それ自体は、もう受け入れられます。ですがそうなると、
「飼い主は君のことを大切にしなかったんだろう」
みんな、そんな言葉をヒメちゃんに与えるのです。それが受け入れられないのです。
「ご主人しゃま……」
あの楽しかった日々。キャベツをもらったことや撫でてもらったこと、部屋を散歩させてくれたこと……。思い出は沢山ありますが、それらは全て嘘だったのでしょうか? 飼い主さんの笑顔は、偽りだったのでしょうか?
「嫌、嫌でち! 考えたくないでち! ご主人しゃまはヒメちゃんのことを愛してくれていたはずでち! 大切だったはずでち!」
ヒメちゃんは飼い主さんのことが好きで、愛していました。ですが、その逆……飼い主さんはヒメちゃんのことを愛していたのでしょうか?