第27話 青潮シャコ
文字数 2,138文字
海中から楽しげな歌声が聞こえてきた。
「ダーリン、ダーリン待っててね……もうすぐ逢えるよ、待っててね♪」
浮上してくる等身のアンモナイト──浮上してきたアンモナイトは、立ちはだかるように海中に浮かぶ等身のサザエ貝の前で止まる。
イソギンチャクを表面に付着させた、サザエが言った。
「海底にもどれ、陸は危険だ」
泡を出しながら反論するアンモナイト。
「いやだもん、やっとダーリンと約束した年齢になったんだもん──真緒くんのお嫁さんになるんだもん」
貝殻の管から泡をブクブクと出すサザエ。
「陸に行くコトは許さん! シャコ、おまえは騙されているんだ。魔王真緒とか言うフナムシ野郎に」
「真緒くんの悪口は、お兄ちゃんでも許さないよ……力づくでも陸に行く」
「だったら、兄であるオレを倒してから行け!」
数分後──
「マリンスノー! ガラクティカ!」
の叫び声が海中から響き、等身のサザエ貝は海上へと吹っ飛び水平線の彼方へ飛んでいった。
海中のアンモナイトから出ていた、グローブをはめた女性の腕が貝の中に引っ込み、浮上を再開する。
「ダーリン待っていて、すぐに行くから……浮気しちゃダメだよ」
アンモナイトに入った海中人『青潮シャコ』は、明るい海上へと出た。
「海の上だぁ」
海上をプカプカと浮かんで砂浜に近づいていくアンモナイト。
人が立てるくらいの深さまで浮かんできたアンモナイトは、急に海の中に沈み。代わりに球体のクリアーなカプセルに頭を入れた女の子の頭が海面に現れる。
海水に満たされたカプセルを被った女の子が、浜に近づくにつれて全身が現れる。
頭には海水が詰まった球体のカプセル、背中に海水ボンベを背負い、水着の腰にはアクセサリーのようなアンモナイトを下げている。両手にはボクシングのグローブがはめられていた。
海から上陸した青潮シャコを、海水浴客は特に気にするコトもなく海水浴を楽しんでいる。
半魚人カップルの女性が、男性半魚人から背中にサンオイルを塗ってもらいながら。
「あっ、海中人」
と、呟いたくらいだった。
シャコはガニィ星人姉妹が営業している、海の家に向かった。
海の家では、ココア色の肌をした変わった女がゴザの敷かれた桟敷席に座って、焼きそばを食べていた。
背中まである金髪、大漁旗をベースにデザインされたセパレート水着型のパイロットスーツ。
傍らには銛〔もり〕が置かれている。
首からは西遊記に登場する沙悟浄のように、海カッパのドクロが連なった首輪を提げていた。
大漁旗水着の女がシャコを見て言った。
「あれ? シャコ、久しぶり……海中人が上陸してくるなんて珍しいね」
女性型巨大ロボット『紺碧のテイルレス』のパイロット『バッカ・コ・コア』とハイタッチをする青潮シャコ。
「コ・コアの方こそ、いつもテイルレスの操縦席にこもって、外に出てこないのに……テイルレスはどこ?」
「同じ巨大ロボット仲間の『黒鉄のビスマス』から、パイロットについての真剣な悩み相談を受けて、直接話しを聞くために出掛けて行った……ロボット同士の話しだから、搭乗者は遠慮してくれってさ」
「ふ~ん、コ・コアが食べているそれナニ?」
「カニ焼そば」
「あたしも、それ食べたい……すみませーん」
シャコは食べ終わった皿を運んでいる、茜を呼び止める。
ガニィ星人の茜が横歩きでやって来て言った。
「カニカニ、ご注文ですか?」
「カニ焼そば一つ」
「支払いは?」
「これで足りますか?」
シャコは真珠を一粒差し出す。
「十分、お釣りが出る……すぐに作りますからね、お姉ちゃんカニ焼そば、一つ……こら、チャーハン作りながら寝るな!」
海の方を見ると、ガニィ星人姉妹の用心棒怪獣『黒井キング』が溺れていた。
十数分後──カニ焼そばが運ばれてきた。海水カプセルを被った海中人が、どうやって食べるのか見ていると。
シャコはカプセルの上部をパカッと開けて、海水の中に焼そばを入れた。
茶色に濁る海水カプセルに浮かび回っている麺や具をシャコは、流しそうめんを食べるように口で吸い込んで食べた。
濁っていた海水は循環して、ろ過されカプセルの中の海水は元通りの澄んだ海水になった。
コ・コアが言った。
「海中人って、そうやって食べるんだ……初めて見た」
茜が海の家の奥から持ってきた札束をシャコに渡す。
「はい、これ焼そばのお釣り……ガニィ星の紙幣で十億ガニィの一部、地球の貨幣価値に換算すると約二億マオくらいかな? ガニィ星の貨幣は地球でも使えるから、十億ガニィ全部は持ち運ぶの大変だから残りは、この電子マネーカードに入れておいたからね……このカードで電車にも乗れるよ」
コ・コアがシャコに訊ねる。
「これから、どうするの?」
「魔王真緒くんの所に行って、お嫁さんになる」
「そう、がんばってね」
シャコは、グリフォンが鎮座しているようにみえる、岬の磯に目を向けて思った。
(そう言えば、ダーリンと初めて出会ったのは、あの磯浜だったな)
シャコの記憶は、幼い頃……子供だったマオマオと、夕日の磯浜で指切りをした時間にもどっていた。
「ダーリン、ダーリン待っててね……もうすぐ逢えるよ、待っててね♪」
浮上してくる等身のアンモナイト──浮上してきたアンモナイトは、立ちはだかるように海中に浮かぶ等身のサザエ貝の前で止まる。
イソギンチャクを表面に付着させた、サザエが言った。
「海底にもどれ、陸は危険だ」
泡を出しながら反論するアンモナイト。
「いやだもん、やっとダーリンと約束した年齢になったんだもん──真緒くんのお嫁さんになるんだもん」
貝殻の管から泡をブクブクと出すサザエ。
「陸に行くコトは許さん! シャコ、おまえは騙されているんだ。魔王真緒とか言うフナムシ野郎に」
「真緒くんの悪口は、お兄ちゃんでも許さないよ……力づくでも陸に行く」
「だったら、兄であるオレを倒してから行け!」
数分後──
「マリンスノー! ガラクティカ!」
の叫び声が海中から響き、等身のサザエ貝は海上へと吹っ飛び水平線の彼方へ飛んでいった。
海中のアンモナイトから出ていた、グローブをはめた女性の腕が貝の中に引っ込み、浮上を再開する。
「ダーリン待っていて、すぐに行くから……浮気しちゃダメだよ」
アンモナイトに入った海中人『青潮シャコ』は、明るい海上へと出た。
「海の上だぁ」
海上をプカプカと浮かんで砂浜に近づいていくアンモナイト。
人が立てるくらいの深さまで浮かんできたアンモナイトは、急に海の中に沈み。代わりに球体のクリアーなカプセルに頭を入れた女の子の頭が海面に現れる。
海水に満たされたカプセルを被った女の子が、浜に近づくにつれて全身が現れる。
頭には海水が詰まった球体のカプセル、背中に海水ボンベを背負い、水着の腰にはアクセサリーのようなアンモナイトを下げている。両手にはボクシングのグローブがはめられていた。
海から上陸した青潮シャコを、海水浴客は特に気にするコトもなく海水浴を楽しんでいる。
半魚人カップルの女性が、男性半魚人から背中にサンオイルを塗ってもらいながら。
「あっ、海中人」
と、呟いたくらいだった。
シャコはガニィ星人姉妹が営業している、海の家に向かった。
海の家では、ココア色の肌をした変わった女がゴザの敷かれた桟敷席に座って、焼きそばを食べていた。
背中まである金髪、大漁旗をベースにデザインされたセパレート水着型のパイロットスーツ。
傍らには銛〔もり〕が置かれている。
首からは西遊記に登場する沙悟浄のように、海カッパのドクロが連なった首輪を提げていた。
大漁旗水着の女がシャコを見て言った。
「あれ? シャコ、久しぶり……海中人が上陸してくるなんて珍しいね」
女性型巨大ロボット『紺碧のテイルレス』のパイロット『バッカ・コ・コア』とハイタッチをする青潮シャコ。
「コ・コアの方こそ、いつもテイルレスの操縦席にこもって、外に出てこないのに……テイルレスはどこ?」
「同じ巨大ロボット仲間の『黒鉄のビスマス』から、パイロットについての真剣な悩み相談を受けて、直接話しを聞くために出掛けて行った……ロボット同士の話しだから、搭乗者は遠慮してくれってさ」
「ふ~ん、コ・コアが食べているそれナニ?」
「カニ焼そば」
「あたしも、それ食べたい……すみませーん」
シャコは食べ終わった皿を運んでいる、茜を呼び止める。
ガニィ星人の茜が横歩きでやって来て言った。
「カニカニ、ご注文ですか?」
「カニ焼そば一つ」
「支払いは?」
「これで足りますか?」
シャコは真珠を一粒差し出す。
「十分、お釣りが出る……すぐに作りますからね、お姉ちゃんカニ焼そば、一つ……こら、チャーハン作りながら寝るな!」
海の方を見ると、ガニィ星人姉妹の用心棒怪獣『黒井キング』が溺れていた。
十数分後──カニ焼そばが運ばれてきた。海水カプセルを被った海中人が、どうやって食べるのか見ていると。
シャコはカプセルの上部をパカッと開けて、海水の中に焼そばを入れた。
茶色に濁る海水カプセルに浮かび回っている麺や具をシャコは、流しそうめんを食べるように口で吸い込んで食べた。
濁っていた海水は循環して、ろ過されカプセルの中の海水は元通りの澄んだ海水になった。
コ・コアが言った。
「海中人って、そうやって食べるんだ……初めて見た」
茜が海の家の奥から持ってきた札束をシャコに渡す。
「はい、これ焼そばのお釣り……ガニィ星の紙幣で十億ガニィの一部、地球の貨幣価値に換算すると約二億マオくらいかな? ガニィ星の貨幣は地球でも使えるから、十億ガニィ全部は持ち運ぶの大変だから残りは、この電子マネーカードに入れておいたからね……このカードで電車にも乗れるよ」
コ・コアがシャコに訊ねる。
「これから、どうするの?」
「魔王真緒くんの所に行って、お嫁さんになる」
「そう、がんばってね」
シャコは、グリフォンが鎮座しているようにみえる、岬の磯に目を向けて思った。
(そう言えば、ダーリンと初めて出会ったのは、あの磯浜だったな)
シャコの記憶は、幼い頃……子供だったマオマオと、夕日の磯浜で指切りをした時間にもどっていた。
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