【昔話】 ✿ 西方ヒストリア6

エピソード文字数 1,205文字

忠平の妙案で、賊らは次々にワナにはまった。


するとそこへ、家臣・黒木が、ただならぬ様子で忠平の元へかけてきた。

実は…賊の一人が、崖の岩肌を下っておるのだ!


それがしも、他の者も、さすがに手が出せん!


忠平!どうすれば良い?

拙者にお任せを。——この者の見張りを頼み申す。

忠平は、捕らえた賊のおかしらを黒木に任せると、崖へ急いだ。


落とし穴や、ワナにはまった賊たちの悲鳴や、助けを求める声が聞こえる。


村の男たちは、彼らを次々お縄につけているようだ。




よし、うまくいったようだな


さて。逃げた賊を捕まえて、今こそ殿の恩義に報いなければ!

決意を新たに、森を駆ける。


崖先に人影が見えた。


村の者たちは下を指さし、困った様子で顔を見合わせる。




命知らずの、阿呆め! このを下るとは、正気の沙汰ではない!

ひぃ!? あの、足をすべらせおった! おおお、落ちる―――!?

いざ!
忠平は、タンッと崖から飛び下りた。
な、なんという無茶を!!  おぬし、死ぬ気か―――!?

すると忠平は宙でくるっと回転した。


長い鎖を勢いよく飛ばす。鎖は放物線をえがき、崖の上の樹にくるくると巻き付いた。


忠平は鎖を左手に巻き付け、獲物を狙うタカがごとく、疾風(はやて)のように降下した。

ひ、ひぃぃ――――!!

真っ逆さまに落ちていく賊の手を、忠平はしっかりとつかみとった。


鎖が、崖の上からピンッと張り、二人はふりこのように横にゆれる。

捕まえた
ど、どうして、おいらを助け…

死して、おぬしがいくのは地獄だ。


ここは現世の浄土。死に急ぐこともなかろう

忠平は、賊とともに崖の上にもどった。


村人たちが鎖ごと二人を引き上げてくれたのだ。


忠平が助けた賊も、捕らえられた他の賊も、お殿様の前に引き出された。

皆の衆、よくやってくれた。大儀である

お殿様は、忠平、家臣、村の男たちへ、ねぎらいの言葉をかけた。


そして、捕らえた賊たちへ、厳しい面持ちで目をすわらせた。

里へ踏み入り、私欲のままに民の物を奪い、むやみやたらに山の獣を狩ったな


田畑を荒らしたところもあると聞く。罪は大きいぞ。罰は受けてもらわねばな

ふんっ、さっさと首をはねやがれ

俺たちには、帰る里も家もない。


殿様には、俺ら野良犬の気持ちなんて、分かりゃしねぇ。

殿に、なんと無礼な口を!


ええい、そこになおれ! 即刻、斬り捨ててくれよう!

やめよ、黒木

されど…!! 里を荒らしておきながら、反省の色など垣間見えぬ!!


断じて許すわけには参りません!

いや。自ら「首をはねろ」と申すとは、賊にしては潔い。


彼らの所業、決して許すわけにはいかぬがな。

行き先がたとえ地獄だとしても、俺は首をはねられるのはイヤだな。


それなら、あのまま崖から落ちて、閻魔様に会いたかったよ

………。

まぁ、仕方がないさ。悪いことしたしな

賊は、諦めたように溜息をついた。

そうか、そうか。 


では…

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登場人物紹介

日高萌栄 (ひだか・もえ


中学2年生、13才の少女。

カピバラをこよなく愛する。

重黒木 鋼じゅうくろぎ・はがね


中学2年生、13才の少年。機械いじりが得意。

椎葉 発(しいば はつ)


中学2年生、13才。

萌栄の友達。花火師の孫。

黒木 殿下(くろき でんか)


萌栄のライバル

那須 雨音(なす あまね)


殿下の友達。

黒木 媛(くろき ひめ)


殿下の妹

日高 結芽(ひだか ゆめ)


萌栄のお母さん

日高 地平(ひだか ちへい)


萌栄のお父さん

日高 雲水(ひだか うんすい)


萌栄の祖父

重黒木 功(じゅうくろぎ こう)


鋼のお父さん

重黒木 理玖 (じゅうくろぎ りく)


鋼のお母さん

椎葉 康次(しいば やすじ)


発の祖父。花火師

黒木 智子(くろき ともこ)


殿下、媛のお母さん。

黒木 未夏 (くろき みか)


クラスメイト

中武 陽(なかたけ はる)


クラスメイト

那須 貴也(なす たかや)


クラスメイト

那須 由子(なす ゆうこ)


クラスメイト

お殿様。


西方の里を治める、お殿様。

南朝の忠臣、その子孫。

忠平(ただひら)


お殿様が助けた忍者。

加藤清正に仕えていたが、毒殺の濡れ衣をかけられ、逃げてきた。

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