第1話

文字数 1,175文字

 タケ(竹)はイネ科タケ亜科に属する常緑性の多年生植物で、繁殖力が強いことが特徴だ。
 毎年、地下茎の節から出る若芽がタケノコで、その成長は非常に速い。芽が地表に出る頃には1日数cm、10日で数10cmほど伸る。成長のピーク時には1日で1m以上伸びることもある。また、地下茎も生命力が旺盛で、最大で1年に5~8mも地下茎が横に伸びた記録があるほどである*。(*身近で不思議なタケの生態に迫る! ;久本 洋子: 農林水産省>ホーム> aff(あふ)バックナンバー2021年>21年3月号 から引用した)
 そして「(たけのこ)」は、竹の若芽のことで、発芽して 10日以内の食べられる状態のタケノコを指す。
 一方「竹の子」も竹の若芽のことを指すが、こちらは 10日経って食べるには余り適さない状態のものを指す。
 ちなみに、タケノコの(しゅん)は 10日間とされている。この漢字の「旬」は、中国では時間の単位で 10日間を表わす。漢字の「旬(=10日間)」の上に”竹冠”の「竹」を載せて「(たけのこ)」と読み、タケノコの旬である10日以内の食べ頃の若芽を指すことは成る程…と、妙に納得させられる。

 ところで山形県庄内地域は群生孟宗(もうそう)竹林の北限地とされ、皆、遅い春の訪れとともに(たけのこ)の旬の到来を待ちわびる。粘土質の土壌や豊かな雪解け水が、白く柔らかい良質な孟宗筍(もうそうたけのこ)を育て上げるという。庄内では5月初旬~6月初旬の数週間は、食も話題も朝から晩まで、(たけのこ)一色になる。
 地元のスナックのお通しもママさん手作りの(たけのこ)のご馳走である。話題も「庄内の(たけのこ)は如何に美味しいか」で盛り上がる。先日は(たけのこ)の成長が如何に速いかの話だった。
 その壱:
 裏山に大きな孟宗竹林を所有する農家の主が、(たけのこ)の朝掘りをしていた。地面からわずかに出た(たけのこ)の若芽を見つけた。「さあ、これを掘ろう。」とした時に携帯が鳴った。話し終えて振り向いて先ほどの若芽を探したが、若芽は既に大きくなっていて先ほどとは景色が違っていた。
 その弐:
 ある朝、(たけのこ)掘りをした際に、(たけのこ)の先端に帽子を載せたことを忘れて夕方取りに行ったところ、1mほどに伸びた(たけのこ)の先に帽子があって、大層驚いた。
 その参:
 若い会社員が夜、泥酔して孟宗竹林で寝込んでしまった。朝、(たけのこ)の若芽の先端が緩んだ会社員のネクタイに引っ掛かった。会社員は気が付かず寝込んだままだった。その間、(たけのこ)はどんどん伸びて、会社員はネクタイで首が吊れてしまった。(←ホントかなぁ…)
(写真↓*https://premium.photo-ac.com から引用した)

 東京の呑み屋では、ある話題で地域がこれほどまでに盛り上がることは滅多にない。
 一方、庄内の(たけのこ)の話題は、(たけのこ)が採れ始めた瞬間から一気に盛り上がり、旬を過ぎるとあっ!という間に話題から消える。
 庄内はホント、面白い所だ。

 んだんだ。
(2024年6月)
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