金庫の品

文字数 395文字

屋敷の主人が亡くなったとの連絡を受けて、遺品整理の業者が飛んできた。
仕事一筋と顔に書いたベテランは一通り部屋を見回すと、
テキパキと持ってきた箱に詰めていったが、押し入れの奥にいかにも価値のありそうな金庫を見つけた。
依頼人に訳を話すとすっかり意気投合し、中身を見てみることに。
錠前技師を呼びつけ、あーでもないこーでもないと言っている姿を、
片付けそっちのけで二人は見つめていた。

もうダメかと諦めた矢先「ガチャ」という音がし、大の大人が大はしゃぎ。
鬼が出るか仏が出るかという心持で引き出しを恐る恐る開けると、中からくたびれた巻物が出てきた。

「なんだ、ただの紙クズじゃないか」
鍵師、歴史に精通していたのか「これは明治初期の不動産に関する書物です」と答える。
「どう見ても、ただのゴミじゃないか」
「いいえ、我が国のホコリ(誇り)です」
「何がわかるって言うんです」

「はい、ここらの地理(塵)がわかります」
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