第1話

文字数 420文字

若い頃は疎ましかった。
女は、何故こんなに深く眠るのだろうか?
夜中に目覚める。
悪夢に、尿意に。
いびき。
口を、開いている。
一説によると、飯を食うにも眠るにも、体力が要るそうだ。
飯はたいして食わない。
しかし、眠る。
朝日に、目覚める。
また眠る。
休みの日には、出掛けようよ、と声をかけても、二度寝どころか三度寝、四度寝。
昼まで寝ていたい。
だいたい、そう言うから、諸君、試してごらん。
男はその欲望を満たしてやるべきか、無理にでも叩き起こすか、悩む。
必ず悩む。
だから、ムニャムニャ、トントントン、あ、お味噌汁、なんて、先史的な夢は、それこそ眠って見れば良い。
すなわちスイッチであろう。
ふたりきりで暮らす時、女はそれをフル活用する。
仕事がないなら、欲望に抗わない。
仕事や用事があれば、驚愕すべき豹変を見せる。
そんな女のイメージを僕に植え付けたのは、君だよ。
だから、愛おしい。
今夜も、その大口開けた寝顔に「ご苦労さん、可愛いよ」
そんなのあっちは全然知らねえ。
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