企画書

文字数 3,551文字

【Artist】
透明人間(とうめいにんげん)


【Member Profile】
鈴木 圭(すずき けい)(keyboard & chorus)
 ある日,婚約者から「いつも私に合わせてばっかりで,まるで透明人間みたい」と言われて婚約を破棄された27歳。仕事も休職し,失意の中,通っていた精神科医に「婚約者と出会うより前から好きだったことはないですか?」と聞かれ,かつて習っていたピアノをきっかけに,失意のなかロックバンド「透明人間」を立ち上げる。

山江 紘一(やまえ こういち)(guitar & chorus)
 元々組んでいたインディーズバンドが自然消滅し,もう一度ステージを目指すか,ギターの講師として働いていくか悩んでいた。二十代最後の夜に,圭がSNSに上げたデモ曲に伴奏をつけたことから,圭と共に「透明人間」を組む。自動ドアに感知されない,歩いているとメガネに虫がぶつかってくる,隣に座っていることに気付かれず,膝に荷物を置かれる…などなど,伝説の絶えない透明人間 of 透明人間。

杖村 華(つえむら はな)(vocal)
 木野花という芸名で「奇跡の透明感!」「今世紀最後の純粋中学生!」と少年誌の表紙を飾った元女優。高校2年生の頃,スチル撮影で「個性がなくて,これだと透明感じゃなくて透明人間だよね」とカメラマンに言われてから,人前に立てなくなり,芸能界を引退した。26歳になった現在はタクシー会社の電話番のアルバイトで食いつないでいる。長かった黒髪は,金髪ショートに変えた。長い前髪で目元を覆い,淡い水色のマスクをしてステージに立つ。

高井戸 栄次(たかいど えいじ)(bass)
 華が歌ったデモに魅せられて,メガネが透明のセルフレームという理由だけで参加した陽気なベーシスト。3回目の大学3年生で,ついに軽音楽サークルにも居場所がなくなった。普段は見せないが,他の3人に比べて自分の人生経験が浅く,思慮に欠くことをコンプレックスに感じている。ビンテージのベースから生み出される,「いなたい」ベースラインが売り。なぜか音痴でコーラスができない。


【Support Member】
日野 空気(ひの くうき)(drums)
 栄次の大学の先輩でプロのドラマー。サークルで浮きがちな栄次をずっと心配し,出会ってすぐの頃から「大学を辞めて,音楽で食うといい」と言い続けてきた。本名は「日野勇気」だが,透明人間の活動の時だけ「日野空気」に変えている。

Pom(ぽん)(drums)
 メジャーデビューが近くなった頃,サポートとして音楽事務所の関係者から紹介された女性ドラマー。ピンクに染め上げられた長髪を揺らしながら叩くパワフルな見た目とは裏腹に繊細なプレイが得意な技巧派。メジャーデビューに際して,日野とどちらをメインに据えるかでメンバーを悩ませる。


【Biography】
 大学を出て就職し,社会人5年目を迎えた鈴木圭は,学生時代から付き合っていた彼女と婚約をしていた。ずっと彼女に尽くし,わがままを聞き,懸命に「いい彼氏」を全うしていた。しかし,最後は「いつも私に合わせてばっかりで,圭くんはまるで透明人間みたい」と言われ,婚約は破棄される。両親からの心ない言葉や,相手の母親からの雑言で精神に不調をきたして休職する。その時,かかった精神科医のすすめもあって,昔習っていたピアノを再び弾き始める。ようやく復職の目処が立ったところで,鼻歌と伴奏だけの『風』というオリジナル楽曲をSNSにアップする。
 二十代最後の夜に圭の投稿を見た山江紘一もまた,人生の帰路に立っていた。紘一は,手遊びがてらアコースティックギターで即興の音を付けて,圭にレスポンスをした。これがきっかけとなり,2人の「透明人間」が結成される。
 動画サイトに何本か楽曲を上げてみるが,「透明人間」の楽曲たちの再生回数は伸び悩む。耳触りのいい歌詞と特徴のないメロディ,印象も声量も薄い圭の声。限界が見え始めて,楽曲の制作ペースも鈍ってゆく。
 その頃,杖村華はアルバイトで「透明人間に仕事を頼んでるわけじゃないんだ!」と叱責を受けていた。ぼんやりと動画サイトの検索バーに「透明人間」と打ち込み,華は『風』に出会った。ある夜,河川敷で散歩をしながら『風』を口ずさんでいるところを,ベンチにひっそり座っていた紘一に気づかれる。
 顔出しNGという条件で「透明人間」に華が加入し,3人体制が始まる。『風』は華の透き通る歌声を活かすべくアレンジを変えて,曲名も『夜風』と改めた。『夜風』がコアな音楽好きの間で広がりを見せるなか,高井戸栄次が自身を売り込むダイレクトメッセージを送ってくる。「メガネが透明のセルフレーム」というだけで,他の3人と比べると「透明人間」との繋がりは希薄だが,明るいキャラクターに似合わない「いなたい」ベースラインに満場一致で加入が決まる。洋楽に詳しい紘一とは対照的に,邦楽の影響を強く受けた栄次の加入は,バンドにとってのブレイクスルーとなった。
 
 泡沫の若手インディーズバンドが溢れるなか,「透明人間」はメンバー名と公式ビジュアルを一切出さない技巧派バンドとして駆け上がっていく。そして,テレビにも顔を出さないまま,新時代のロックバンドとして,ついに「ハレノヒ」でメジャーデビューと清涼飲料水のタイアップが決まる。


−−−そして迎える夏フェス。「透明人間」は海辺のステージの大トリを飾る。

 1曲目,「ハレノヒ」のイントロが始まると同時に,華は淡い水色のマスクを投げ捨てた。照明で虹色にも映る金色の髪を揺らし,手を叩きながらオーディエンスを一気に煽る。そして,華は叫ぶようにこう言った。

「「こんばんは!!私たちが透明人間です!!」」

その瞬間,「透明人間」だった全員が,その夏で一番熱いスポットライトを浴びる。



【Discography】
『夜風』
 元は『風』というタイトルで「平日の深夜2時,広い公園のベンチで風の匂いを嗅いでいる時のあの感じ」というコンセプトで圭がデモを鼻歌とピアノで録っていた。紘一はこれを聞いて,アコースティックギターをつけた。「透明人間」が結成するきっかけになった一曲。
 やがて華が加入して3人体制になってからアレンジを変えた『夜風』として再録し,動画サイトに上げたところ,華の透明感のある歌声が注目を集めた。


『ハレノヒ』
 メジャーデビュー曲で清涼飲料水のCMに大抜擢された。元々は「あの人と晴れの日を迎えられたら」という今まで通りの内向的な楽曲だったが,栄次の一言で「晴れの日は何度もある,あの人にはあの人の,自分には自分の晴れの日が必ずやってくる」という前向きで伸びやかなロックナンバーになった。華が楽しげにハンドクラップをオーディエンスに求め,「そこに居合わせた全員の掛け声とハンドクラップがあって完成する曲」とメンバーも口を揃える。


【Goods】
・ロゴTシャツ
白いTシャツに反射プリントで「透明人間」のロゴが描かれたTシャツ。暗いところでフラッシュ撮影をすると反射してロゴが浮かび上がる。『夜風』のジャケット撮影でメンバー分だけ制作して以来,「気づかれないくらい微妙に素材を変えながら(圭)」出し続けている定番グッズ。公式ページに上がった着用モデルがボーカル・華ではないかと話題になったが,事務所のアルバイトの女性で,華ではない。

・ロゴタオル
Tシャツと対照的に黒地に黒色でロゴが刺繍されたタオル。フロアで頭から被ると,影と同化して「透明人間」になれるグッズ。髪色が明るいためにフロアで目立ってしまう華からの熱い要望で作られた。

・アクリルキーホルダー
ホテルの鍵を彷彿とさせる透明なキーホルダー。中に立体的なロゴが埋め込まれている。最初は栄次のメガネフレームをイメージして作っていたが,いつの間にかそのコンセプトは消えている。

・ラバーバンド
バンドと言えばという理由でなんとなく作った。他のグッズに比べると制作意図が希薄で,ある意味では透明人間らしいグッズになってしまった。それでもまあまあ売れているので継続して作り続けている。

・ステッカー
「私は透明人間です」「隣の透明人間」「透明人間も写るんです」「透明人間なんかいない!」の4種類が作られた。それぞれ,前から順に圭,紘一,華,栄次のコメント。初めてメンバーごとのグッズを作ったが,誰のステッカーが一番売れているかについては敢えてメンバー・スタッフの誰もが触れないようにしている。




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