第1話 過去
文字数 556文字
二十年後の君へーー
俺は立派な医者になるーー
昨日の夜、俺は卒業した中学校の校庭に埋めたタイムカプセルを掘り出した。ロック解除番号は三年四組、0304だ。自分宛の封筒を開けて医者のところを二重線で消してデザイナーに書き換えた。
林医院の息子ーーそれが俺の名前だ。
「アイツだろ、オカマな奴……あんなんで将来、医者になれんのかーー?」
(……いつ誰が医者になるって言ったかよ……みんな勝手に俺の人生を決めやがって……)
中学時代のおれは確かに無口でパッとしない生徒だった。口下手なせいであっという間にキモいとレッテルを貼られてしまった。
ーー女子の口コミ力は全校生徒を制すーー
俺は地元から少し離れた有名私立高校へ進学したが、自分の気持ちに無理やり蓋をしてもやはり心の奥底の炎を完全に消す事はできなかった。
今は穏やかな気分だ。夜な夜な隠れて手作りしたワンピースを着ている。人生で初めて化粧もした。
(やっぱり最後はここがいい……)
小学生の頃、愛ちゃん、純子ちゃん、修くんと遊んだ場所だ。真っ暗で何も見えない。裸足で踏みつける小石が小さな音をたてる。足裏に感じる最後の痛みを楽しんだ。一歩ずつ流れに任せて足を進めた。やがて足がつかなくなり俺は流れに身を任せた。
(……気持ちいい……お父さん、お母さん、ごめんなさい……)
俺は立派な医者になるーー
昨日の夜、俺は卒業した中学校の校庭に埋めたタイムカプセルを掘り出した。ロック解除番号は三年四組、0304だ。自分宛の封筒を開けて医者のところを二重線で消してデザイナーに書き換えた。
林医院の息子ーーそれが俺の名前だ。
「アイツだろ、オカマな奴……あんなんで将来、医者になれんのかーー?」
(……いつ誰が医者になるって言ったかよ……みんな勝手に俺の人生を決めやがって……)
中学時代のおれは確かに無口でパッとしない生徒だった。口下手なせいであっという間にキモいとレッテルを貼られてしまった。
ーー女子の口コミ力は全校生徒を制すーー
俺は地元から少し離れた有名私立高校へ進学したが、自分の気持ちに無理やり蓋をしてもやはり心の奥底の炎を完全に消す事はできなかった。
今は穏やかな気分だ。夜な夜な隠れて手作りしたワンピースを着ている。人生で初めて化粧もした。
(やっぱり最後はここがいい……)
小学生の頃、愛ちゃん、純子ちゃん、修くんと遊んだ場所だ。真っ暗で何も見えない。裸足で踏みつける小石が小さな音をたてる。足裏に感じる最後の痛みを楽しんだ。一歩ずつ流れに任せて足を進めた。やがて足がつかなくなり俺は流れに身を任せた。
(……気持ちいい……お父さん、お母さん、ごめんなさい……)