第1話

文字数 860文字

 

 


 これは1977年11月に発売された渡辺真知子の「迷い道」の歌い出しである。
 各年代層から構成される組織や場面で過去を語る際には、細心の配慮が必要だ。特に、話題となる過去を知らない若者達にとっては、昔話は否定も肯定もできない、ただ(うなず)くだけの話で、面白くも何ともない。一歩間違えると、上から目線の自慢話、成功体験に聞こえてくる。
 去る6月9日に国会で行われた党首討論会で、「コロナ禍で開催するオリンピックの意義は何か?」という討論があり、菅義偉首相が延々と過去の東京オリンピックの話をしたのには、腰が抜けるほど驚き、そして落胆した。
 多種多様な大勢の人と話す内容は、誰もが参加できる「現在」と「未来」に関することがいい。イギリス人は天気の話が好きだと聞く。これは誰もが「今の天気」の話には加われるという、彼らの社交上の知恵ではないだろうか。
 当院の所属する医療グループの創始者である名誉理事長から、「院長は病院職員に夢と希望とロマンを語れ」と薫陶(くんとう)を受けた。現在、過去、未来の中で、一番大切なのはこれからの未来なのだと、今になって改めて思う。
 今から30年前の1991年8月1日、当院は山形県庄内町に開院した。
 「井戸を掘った先達に感謝」。先達の苦労と努力の積み重ねがあって今があり、さらに発展を目指す。

 「迷い道」の終わりの歌詞のようにならないように(笑)。

 さて写真は、2020年5月に羽越本線の通称「西袋のストレート」で撮影した下り貨物列車だ。焦点距離 750mm の超望遠レンズを使用した。

 線路の遥か彼方に点のように見えた機関車が一直線に近づいてくる。ファインダー内で機関車の前面がだんだん大きくなる。カタンカタンと線路が鳴り出す。やがて機関車が画面いっぱいになる。この迫力は感動的だ。
 もし「未来」からファインダーを通して当院を見たら、この機関車のように力強く見えるのだろうか?
 進め!前へ!

 んだんだ!!
(2021年8月)
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