第1話
文字数 884文字
■長男(5時25分)
僕の朝は早い。誰もが寝ている早朝に目を覚まし、家族を起こさないように準備して静かにバイトに出かける。
専門学校に通う僕は、毎日出される課題をこなすのに精一杯の日々を生きている。学校から帰って夜中まで課題をやって、何とか期限に間に合っている感じだ。
暇な時間は全然ない。けれど少しは小遣いが欲しい。時間を作り出すとしたら、寝る時間を減らすしかなかった。
結局、僕は朝の新聞配達のバイトを選んだ。コンビニとかの方が楽だけれど、なまった身体を動かしたい気持ちがあったから。
最初は真っ暗で寒い夜明けに、家を出るのがきつかった。今はだいぶ体が慣れてきたせいか、辛さは感じなくなっていた。
配達が終わって家に着く頃になると、空が明るくなってくる。とはいえ家族はまだ眠っているから、なるべく静かに鍵を開けるようにしている。
音を立てないように歩いて、静かにバスルームの扉を閉める。働いた後に浴びるシャワーは格別だ。母が用意してくれたバスタオルで体を拭いたあと、冷えたミネラルウォーターを飲むと、さらに最高の気分になる。
仕事が終わったといっても、今日みたいに授業がある日は、仮眠程度しか休むことはできない。それでも僕は貴重な睡眠時間を削ってリビングのソファに座り、少しだけテレビを見ることを習慣にしている。
時間は10分ぐらい。ふうと息をついて、テレビの電源を入れる。家族を起こさないよう、音量の【小】ボタンを連打するのが癖になっていた。
選んだのは、早朝しかやっていないニュース番組。いつも同じ時間帯にテレビを付けるから、決まってキャスターの女の子――毎日人は変わる――がニュースを読んでいるシーンが映る。
音を出せないので、彼女たちが喋っているニュースの内容は、映像とテロップから想像するしか無い。ただ内容よりも、僕のように早起きして頑張っている人たちがテレビの向こうにいるんだと思うと、観ているだけではげみになる。だから僕はこうしてキャスターたちの姿を眺め、元気をもらってから、眠ることにしている。
そして僕の寝る前の挨拶は、いつもこう。
「おはよう!」
僕の朝は早い。誰もが寝ている早朝に目を覚まし、家族を起こさないように準備して静かにバイトに出かける。
専門学校に通う僕は、毎日出される課題をこなすのに精一杯の日々を生きている。学校から帰って夜中まで課題をやって、何とか期限に間に合っている感じだ。
暇な時間は全然ない。けれど少しは小遣いが欲しい。時間を作り出すとしたら、寝る時間を減らすしかなかった。
結局、僕は朝の新聞配達のバイトを選んだ。コンビニとかの方が楽だけれど、なまった身体を動かしたい気持ちがあったから。
最初は真っ暗で寒い夜明けに、家を出るのがきつかった。今はだいぶ体が慣れてきたせいか、辛さは感じなくなっていた。
配達が終わって家に着く頃になると、空が明るくなってくる。とはいえ家族はまだ眠っているから、なるべく静かに鍵を開けるようにしている。
音を立てないように歩いて、静かにバスルームの扉を閉める。働いた後に浴びるシャワーは格別だ。母が用意してくれたバスタオルで体を拭いたあと、冷えたミネラルウォーターを飲むと、さらに最高の気分になる。
仕事が終わったといっても、今日みたいに授業がある日は、仮眠程度しか休むことはできない。それでも僕は貴重な睡眠時間を削ってリビングのソファに座り、少しだけテレビを見ることを習慣にしている。
時間は10分ぐらい。ふうと息をついて、テレビの電源を入れる。家族を起こさないよう、音量の【小】ボタンを連打するのが癖になっていた。
選んだのは、早朝しかやっていないニュース番組。いつも同じ時間帯にテレビを付けるから、決まってキャスターの女の子――毎日人は変わる――がニュースを読んでいるシーンが映る。
音を出せないので、彼女たちが喋っているニュースの内容は、映像とテロップから想像するしか無い。ただ内容よりも、僕のように早起きして頑張っている人たちがテレビの向こうにいるんだと思うと、観ているだけではげみになる。だから僕はこうしてキャスターたちの姿を眺め、元気をもらってから、眠ることにしている。
そして僕の寝る前の挨拶は、いつもこう。
「おはよう!」