マジで戦争にはメチャクチャお金が掛かるっす。

文字数 3,398文字

 オレの考えなンすけどね。
 戦争(センソー)やるとなると、色々用意しないといけなくなるじゃないっすか。
 モリモリに盛って、馳車(クルマ)は千台ぐらい必要かなぁ。革車(トラック)も千台ぐらい欲しいし、ビシっとキめた兵隊(メンバー)を十万ぐらい集めとかないと。
 (タベモン)なんかも、千里の彼方(とんでもなくとーく)まで輸送(ケータリング)しないといけなくなるから、その費用を捻出しないと、でしょ?
 ビッグな

を打ち上げちゃうンだから、ご近所サンへの根回し(ゴセッタイ)も念入りにして置く方が良いんじゃないかな?
 あと、行った先で必要になる機材に資材、予備の(クルマ)(イショウ)も追加することになりますよねー。
 これ全部揃えると……そうですねー、まあざっと一日一千(ゴールド)ぐらい使っちゃうかな。ざっくり概算で。
 それくらい準備して、やっと

が成り立つ感じ、みたいな。

 そうやって準備万端整えちゃって始める戦争(センソー)ですけど、ヤってる期間がだらだら長くなっちゃうと、これ大変。
 全体的に見るとイイカンジに勝てそうなフンイキでも、実際動いてる兵隊(メンバー)はもーダルンダルンにだらけちゃって、やる気なんかはゴルゴリ減っちゃう。
 そんなときに、
「向こうの城に攻め込んじゃって」
 って命令されても、そりゃ無理ですよー。だって、やる気スイッチ【オフ】なんだもの。これ動けないでしょ。


 あと、長いこと遠征(エンセー)すると、どうしたって外泊外食が続いちゃう。

のご飯は高く付くから、お(ウチ)の方だってお財布がスッカラカンになっちゃうし。
 そんな、ヘロヘロの貧乏(ボンビー)状態の時に、絶賛戦争中の相手の別働隊とか……もっと困っちゃうのは全然別の国なんかから、
「お、アイツんとこ、今くたびれてるじゃん? ちょっと突いたら簡単にやっつけられるんじゃね?」
 って、カジュアルに攻め込まれたら、どうなるか判りますヨネー?
 どんな超絶天才でも、そんなときにイイカンジの対策が打てる訳がないじゃないっすか。


 故に兵は拙速なるを聞くも、未だ巧の久しきを睹ざるなり。
 あっ、オレ今、イイ感じのこと言っちゃったカナ?


 つまり、戦争(センソー)
「まだちょっと現場慣れしてないけど、チャチャっとやって上手くいった」
 って話は聞こえてきても、
「プロがズルズル長引いた状態で成功した」
 っていう現場なんて見たことがない。
 戦争(センソー)を無駄にズルズル長引かせて良いことあったっておハナシ、まず、オレ聞いたことないですもん。


 戦争(センソー)は「面倒くさくてお金がかかって、人はバンバン死ぬし、ヘタこくと国が滅ぶ」っていうマズイ部分をよく理解してる人じゃないと、「凄く上手くいくと相手の国の利権がまるっと手に入る」ってことのほんとの意味も判ンないんじゃないっすかね。

 そーゆー「戦争(センソー)のやり方がよくわかってるリーダー」は、戦争のために一回兵隊(メンバー)募集をしたら、二度目の追加募集をするようなヘマはしないし、本部に資材やケータリングの追加発注を三回もするようポカはしませんって。

 ま、お金(コレ)は自分のとこで用意するとして、食べるものは現地調達っすよ。あ、奪うんじゃなくて、ちゃんと買いましょう。そうやって兵隊(メンバー)が腹ぺこリンコにならないようにするの。
 戦争(センソー)やって国がビンボーになるってのの一番の理由は、機材とか材料とか食い物とかをわざわざ地元から持ち出して、遠くまで運んじゃったりしないといけないから、なんですよ。モノは持ってかれちゃうは、遠くまで運ぶ手間も負担させられるわで、残った地元民(ジモティー)はどんどんビンボーになってっちゃう。

 それから、基地とか駐屯地の近くって割とインフレになるンすよ。物資が品薄になっちゃうもんですから。それで物価だけが上がるから、何でも買うのが大変になる。で、一般人(パンピー)はもっと貧乏(ボンビー)が加速して、キングボンビーになっちゃうの。
 そーなると大変。兵隊(メンバー)さんを出す余裕がなくなる。だって、兵役ってのはつまり自分の体で払う税金、つまり血税ですもん。財産がないと税金は払えないしー。

 で、遠征兵隊(メンバー)は足らないから兵力は下がるし、地元は貧乏(ボンビー)でヘロヘロという状態に(オチイ)っちゃうのね。そうすると一般人(パンピー)の暮らしは、戦争(センソー)する前と比べて、七割引の生活レベルまで落っこちゃうかもしんない。


 いやぁ、王様だって()()(ゴト)なんかじゃないんだから。
 戦争が長引くと、現場から、
「戦車が壊れて、馬が逃げたんで、追加発注しまーす」
甲冑(イショウ)とか矢弩(コドウグ)戟楯(キザイ)とか蔽櫓(オオドウグ)が、なんか足りないっぽいんですけどー」
「輸送用の牛車(トラック)が欲しいでーす」
 なんて注文がドンドン来るようになる。
 そーすると、国家予算の……そーですね、ざっくり六割方はそっちに回さないといけなくなりますよ、多分。
 ええ、六割引ですよ。戦争(センソー)前の四割で生活するの、キビシーですよー。

 そーゆー地元の負担を増やしちゃいけないって考えられる頭の良い現場リーダーは、せめて食い物ぐらいは現地調達しようって努力するもんです。
 遠征先で現地調達した「百四十本の魔剤(エナジードリンク)」は、運ぶ手間は省けた上に、その分の敵の食料を減らしたことにもなる訳で、ざっくり言うと、地元から「二千八百本の魔剤(エナドリ)」を運んでくるのと同じくらいの価値になる感じかなー。
 同じ意味で、「馬や牛の(チモシー)を三十袋」が現地調達できたら、それは地元から「(チモシー)六百袋」を運ん来たのと同じぐらいの価値だってことですヨ。とってもリーズナブル。


 あ、それから。敵を()っつけるだけなら「怒り」って「

」だけでもできちゃうんすけど、敵の物資を()ってきちゃうには「それで自分たちが得をする」ンだって「

」とか「

」が必要なんですよねー。

 だから、
「戦車戦をやって、敵の車を十台も鹵獲(ロカク)しました!」
 なんて成果があったら、ケチケチしないで一等最初に戦車をぶんどってきたメンバーにたんまりご褒美を上げちゃいましょうヨ。
 そうすると褒められた人は、
「また頑張ろう!」
 ってなるし、今回褒められなかった人も、
「次は頑張って褒めて貰うんだ!」
 ってなる。
 ちょっとご褒美の費用を余分に出すだけで、みんな目標が一つに絞って突き進むようになるから、コレマタお得ですよー。

 そうやって()ってきた戦車は、敵チームの旗なんかむしっちゃって自分の旗に取り替えーので、元から自分のチームのだった戦車と混ぜて使っちゃいます。
 コレで遠い地元に補給を頼まなくても戦力増えちゃったりするから、マジお得でしょ?

 それから「敵チームを辞めます」っていう人達のことは、どんどんウエルカムしちゃう。
 そんで優しく接して、ちゃんと美味しいご飯を食べさせてあげちゃうンです。そしたらすんげー喜んで、こっちの見方に付いてくれちゃったりするもの。
 自分とこから追加メンバー呼ぶ手間を省いて人数は増やせるし、ご新規さんは敵サンの内情が判ってると来た。スゴクお得だと思いますよー。

 コレが、敵に勝った上に、ますます自分たちが強くなってくマジック。ゴイスーでしょ?


 何度も言いますけどぉ、戦争(センソー)は勝つことが一番タイセツ。だらだら長引かせちゃダメ。

 で、ですね。現場の(リーダー)は、現場(センジョウ)のことだけじゃなくて、地元で頑張ってる人たちの生活も、国の未来も、(トー)(ゼン)、王様の命も、全部背負ってる訳で。
 そういうことは、戦争(センソー)の本質が判ってる(リーダー)なら、チャンと知ってるもンなんすよ。
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登場人物紹介

孫武

中国古代・春秋時代(紀元前6世紀)の武将・軍事思想家。

「孫子の兵法」の作者。

斉の国の貴族だけど、いろいろあって呉の国に就職。

内政をやったり、外交(戦争を含む)をやったりして活躍したらしい。

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