一
文字数 650文字
もう、彼の所には戻らない。そう決めて、部屋を出たのに。
「雨かよぉ……」
あーあ。ついてないんだよね、とことん。
でも、愚痴ってても仕方がない。ただひたすらに、濡れながら歩いていくだけ。ああ、いやだいやだ、雨大嫌い!
そうだ、あのヒトのとこ行こう。いつでもおいで、って、いつも言ってたもんね。
うわ。窓辺がもう、なにこれ。鉢だらけ。なんだろ、この尖った葉っぱのやつ、やたらある。嫌い!
わたしの好きな敷物、片付けられちゃってるし。おまけに、ベッドの脇に、これ、灰皿じゃん!
「君がこの部屋に来る間は、煙草は吸わないし、吸わせないよ。安心して」
なーんて言ってたくせに。
……そりゃ、まあ、わたしもね。もちろん彼が本命だったんだけど。ここのヒトのことだって、大好きだったよ。けっこう頻繁に会いに来てたし、たまにお泊りだってしてた。彼もここのヒトも、それは承知の上だったと思うけどな。
はあ。
もう、どうしようかな。きっと他所だって同じだよね。あーあ。
あっ、雨、上がったみたい。虹が出てる!
キラキラして綺麗! 登りたい! あそこにいる雀みたいに羽が生えて、飛んで行ければいいのに。
ん、飛んで行けるのかな。なんか今なら、行けそうな気がする。
ねえ、あなた。
わたしがそばにいなくてもさ。いつまでもいつまでも、未練がましく食事を用意したり、わたしの使った毛布抱きしめて、泣きながら眠ったりするの、やめてね。
彼のそういうの見てられなくて、胸が痛くて、わたし、出てきちゃったんだから。
じゃあね。
「雨かよぉ……」
あーあ。ついてないんだよね、とことん。
でも、愚痴ってても仕方がない。ただひたすらに、濡れながら歩いていくだけ。ああ、いやだいやだ、雨大嫌い!
そうだ、あのヒトのとこ行こう。いつでもおいで、って、いつも言ってたもんね。
うわ。窓辺がもう、なにこれ。鉢だらけ。なんだろ、この尖った葉っぱのやつ、やたらある。嫌い!
わたしの好きな敷物、片付けられちゃってるし。おまけに、ベッドの脇に、これ、灰皿じゃん!
「君がこの部屋に来る間は、煙草は吸わないし、吸わせないよ。安心して」
なーんて言ってたくせに。
……そりゃ、まあ、わたしもね。もちろん彼が本命だったんだけど。ここのヒトのことだって、大好きだったよ。けっこう頻繁に会いに来てたし、たまにお泊りだってしてた。彼もここのヒトも、それは承知の上だったと思うけどな。
はあ。
もう、どうしようかな。きっと他所だって同じだよね。あーあ。
あっ、雨、上がったみたい。虹が出てる!
キラキラして綺麗! 登りたい! あそこにいる雀みたいに羽が生えて、飛んで行ければいいのに。
ん、飛んで行けるのかな。なんか今なら、行けそうな気がする。
ねえ、あなた。
わたしがそばにいなくてもさ。いつまでもいつまでも、未練がましく食事を用意したり、わたしの使った毛布抱きしめて、泣きながら眠ったりするの、やめてね。
彼のそういうの見てられなくて、胸が痛くて、わたし、出てきちゃったんだから。
じゃあね。