第10話 意味
文字数 1,571文字
「人生このままでいいのだろうか」
そう思うことが多くなってきた。そんな、ある日、友人から一通のメッセージが来た。高校時代に同じ部活だった、田中君からだった。彼とは、Facebookで久々に繋がり、メッセージをくれたのだ。
「元気だった?」
と書かれたメッセージに「元気だよ」と返信をした。今の状況を話せる相手では無かった。田中君のFacebookの投稿はきらびやかだった。彼は、一年浪人をして、県内トップの大学に入学した。
金髪女性が好きなので、外国人留学生とドライブや遊びに行っている写真が何件もあった。また、ロシアに留学したとみられる写真もあった。私とは全然違う。
「田中君は元気だったの?」
と聞いた。元気に決まっているが。だが、意外な答えが、返ってきた。
「元気じゃないよ。うつ病になったから」
驚いた。田中君がこちら側の人間になっていたとは。私達はメッセージのやり取りを続けた。
「過去の投稿を見ると元気そうじゃん!色んな所行っていて楽しくしていたのかと思った」
「表面上は楽しそうだけど、実はそうじゃないって感じかな」
「実は私も精神科に通っているんだよね」
私は、田中君がうつ病を告白したので、自分のことを話すことが出来た。高校時代から精神を壊したことや、今も服薬していることを伝えた。田中君は少し驚いていたが、仲間だねと返信してきた。
それからはラインを交換し、たまにやり取りをした。私は、以前、自分のために買った精神療法の本を見つけ、田中君の症状に合いそうなページを写真に撮って送ったりした。
また、田中君が死んでないか心配になったら、他の用事を装って、LINEを送った。何か自分に出来ることがあればしたいと思ったのだ。
それから、友人から連絡が来ると、心療内科に通っていることを告白されることが多くなった。ある友人は、学校を辞め、何もせずに引きこもりになっていた。また、ある友人は、不安を感じるとパニックになり悩んでいることを相談してくれた。
自分が鬱症状で辛いとき、消えてしまいそうだったように、友人達も私の知らない間に消えてしまうのではないかと心配になった。自分の知っている病院を紹介したり、話を聞いてあげるよう心掛けた。
また、不思議な告白は更に続た。短期のバイトで、市役所で働いていた時のことだ。管理職の男性が、私と同じ位の娘を持っていて、精神的な病で苦しんでいることを打ち明けてくれた。その人だけではなく、他の、短期のバイト先でも、「実は子供が吐いたり過食したりを繰り返して入れさ・・・」とか、「娘が引きこもりでさ・・・」と打ちあけれたりした。何故私に打ち明けてくれたのかは知る由もない。ただ、誰かに話したかったのかもしれない。
そのたびに、
「苦しんでいるのは、私だけじゃ無かったのか」と気が付かされた。
そんな日々を過ごすうちに、人のために何かをしたいと思うようになった。気が付くと、インターネットで福祉について調べた。そして、福祉系の通信制大学への願書を書いた。二四歳で大学生となった。
それからは、心が辛い友人の話を聞くよう心掛けた。連絡が取れなくなってしまった友人には、手紙を書いたりもした。そういう時、自分の経験が役立った。どういう風にはな仕掛けてほしいのかが、何となくわかった。
そんな毎日を過ごしている今日この頃である。
たった一度のセックスで生まれた自分には、とても意味があった。みんなのために毎日過ごせばいい。きっとそのために、生まれたのだから。
追記
あっさりとしたエンディングですが、ノンフィクションですので、これが全てです。最後まで読んで頂いて、本当にありがとうございます。拙い文書ですが、「色んなひとがいるんだな」「色んなひとが生きているんだな」と思ってもらえれば、幸いです。
そう思うことが多くなってきた。そんな、ある日、友人から一通のメッセージが来た。高校時代に同じ部活だった、田中君からだった。彼とは、Facebookで久々に繋がり、メッセージをくれたのだ。
「元気だった?」
と書かれたメッセージに「元気だよ」と返信をした。今の状況を話せる相手では無かった。田中君のFacebookの投稿はきらびやかだった。彼は、一年浪人をして、県内トップの大学に入学した。
金髪女性が好きなので、外国人留学生とドライブや遊びに行っている写真が何件もあった。また、ロシアに留学したとみられる写真もあった。私とは全然違う。
「田中君は元気だったの?」
と聞いた。元気に決まっているが。だが、意外な答えが、返ってきた。
「元気じゃないよ。うつ病になったから」
驚いた。田中君がこちら側の人間になっていたとは。私達はメッセージのやり取りを続けた。
「過去の投稿を見ると元気そうじゃん!色んな所行っていて楽しくしていたのかと思った」
「表面上は楽しそうだけど、実はそうじゃないって感じかな」
「実は私も精神科に通っているんだよね」
私は、田中君がうつ病を告白したので、自分のことを話すことが出来た。高校時代から精神を壊したことや、今も服薬していることを伝えた。田中君は少し驚いていたが、仲間だねと返信してきた。
それからはラインを交換し、たまにやり取りをした。私は、以前、自分のために買った精神療法の本を見つけ、田中君の症状に合いそうなページを写真に撮って送ったりした。
また、田中君が死んでないか心配になったら、他の用事を装って、LINEを送った。何か自分に出来ることがあればしたいと思ったのだ。
それから、友人から連絡が来ると、心療内科に通っていることを告白されることが多くなった。ある友人は、学校を辞め、何もせずに引きこもりになっていた。また、ある友人は、不安を感じるとパニックになり悩んでいることを相談してくれた。
自分が鬱症状で辛いとき、消えてしまいそうだったように、友人達も私の知らない間に消えてしまうのではないかと心配になった。自分の知っている病院を紹介したり、話を聞いてあげるよう心掛けた。
また、不思議な告白は更に続た。短期のバイトで、市役所で働いていた時のことだ。管理職の男性が、私と同じ位の娘を持っていて、精神的な病で苦しんでいることを打ち明けてくれた。その人だけではなく、他の、短期のバイト先でも、「実は子供が吐いたり過食したりを繰り返して入れさ・・・」とか、「娘が引きこもりでさ・・・」と打ちあけれたりした。何故私に打ち明けてくれたのかは知る由もない。ただ、誰かに話したかったのかもしれない。
そのたびに、
「苦しんでいるのは、私だけじゃ無かったのか」と気が付かされた。
そんな日々を過ごすうちに、人のために何かをしたいと思うようになった。気が付くと、インターネットで福祉について調べた。そして、福祉系の通信制大学への願書を書いた。二四歳で大学生となった。
それからは、心が辛い友人の話を聞くよう心掛けた。連絡が取れなくなってしまった友人には、手紙を書いたりもした。そういう時、自分の経験が役立った。どういう風にはな仕掛けてほしいのかが、何となくわかった。
そんな毎日を過ごしている今日この頃である。
たった一度のセックスで生まれた自分には、とても意味があった。みんなのために毎日過ごせばいい。きっとそのために、生まれたのだから。
追記
あっさりとしたエンディングですが、ノンフィクションですので、これが全てです。最後まで読んで頂いて、本当にありがとうございます。拙い文書ですが、「色んなひとがいるんだな」「色んなひとが生きているんだな」と思ってもらえれば、幸いです。