電車に乗り遅れてしまったのです。

文字数 1,863文字

電車に乗り遅れたのです! ちはるたちと温水プールに行こうとしたのに寝過ごして電車に乗れなかったのです。電車待ちなのです。これは昨夜ボクに酒を飲ませた理科が悪いのです! 聴いてますか、理科!
スマホでがなるのやめて、みっしー。わたしはちはると先にプールに入ってるから。じゃ、着いたら連絡してね。(電話を切る)
理科は酷い奴なのです。ボクとちはるのいちゃラブ温水プールデートが台無しになるやもしれないのです。
コノコ姉さん! ベンチ空いてますよ! こっちです、こっち!
ほんとなのだ! でかしたのだ、メダカちゃん! すーわるのだー。
あー、あー、あー、なんかふてくされたねーちゃんが一人で座ってる横にみんなで座るの、よくねーんじゃねーか、メダカ。それにコノコも。
大丈夫ですって、涙子さん! おにぎり食べます?
さんきゅ。メダカ。
コノコ姉さんも。どうです、おにぎり。
いただくのだ。ありがとうなのだ、メダカちゃん。
くっ! なんかすっごくイラつくのはなぜなのです? 変な奴らが隣に座ってきたのです。
そこのおねーさん。
ボクはみっしーなのです。死神なのですよ? 死神だけに舐めると大鎌で斬るのですよ?
あはは。面白いですね、おねーさん。おにぎり食べます? わたしがつくってきた特製のおにぎりですよ。はい、どうぞ。
「あはは。面白いですね」じゃねーですよ? ぶった斬るぞ、小娘! でも、まあ、おにぎりはもらっておくのです。(貰ってむしゃむしゃ食べる)
どうです? おいしいでしょ?
悪くはないのです。小娘、名前はなんというのですか。ここらへんに住んでるのですか。
わたしは佐原メダカ。そっちが朽葉コノコ姉さんと、空美野涙子さんです。
空美野? ああ、空美野財閥の親族ですか。
余計なこと言うな、メダカ。
よろしくなのだ、みっしーさん。あたしらはこれから温水プールに行くのだ。ここらへんに住んでると、やっぱり温水プールは外せないのだ。
ボクは恋人であるところの田山ちはると温水プールデートなのです。が、電車に乗り遅れて、こうやって駅の構内のベンチで次の電車待ちなのです。
ふーん。そうなのだぁ。恋人さんは、一人で先にプールに行っちゃったのだ?
そうなのです。正確には二人に置いていかれてしまった、なのです。憎き姉が、そのちはるにはいるのです。田山理科といって、ペインティングナイフを振り回して戦う阿呆なのですよ。理科がちはると先にプールに入っていって、そしてボクは一人、取り残されたのでした。
まあ、〈コブ付き〉の恋人と付き合うと、どうしてもそういう展開は避けられねーよな。
おお、わかってもらえるですか!
おうよ。
ぶっきらぼうな女性のように見えますが、なかなかに機微がわかる人間ですね。ボクと握手です!(と言って涙子と握手を交わす)
コブの話で鼓舞されちゃった、みたいな話ですね!
コブであるところの理科を亡き者にせねばならないのです!
いや、コブを含めて受け入れてやるのが、この手の恋愛の肝心なところだろうさ。
えー? でもそれじゃ「親の介護を前提に結婚してくれ」みたいな物言いですよぉ、涙子さん。
んじゃ、コブを切除しろってか?
恋愛は愛し合う二人のものなのだ。コブ問題をいったん考えるのをやめて付き合っていって、流れでコブの処理をどうにかするのが良いと思うのだ。
ふぅむ。小娘たち、なかなかに良い視点で物事を見れる手合いなのです。気に入ったのです。
話していると反対方面からの電車が着き、理科とちはるが降りてみっしーのところまでやってくる。
みっしー! 戻ってきたよー! やっぱりみんな一緒じゃないとダメだよー!
あ。ちはる! ボクのために戻って来てくれたのですね! 嬉しいのです!
うーん。理科お姉ちゃんが戻ってみっしーともう一度、一緒に行こうって言うから。
そういうことよ、みっしー。あんた、遅れないように、今度から気をつけなさいよ。
コブ…………。
コブ? なにそれ。たんこぶでもできたのかしら?
な、なんでもないです!
なに? あんた、泣いてんの?
うっさいわ、この阿呆! 理科のボゲェ! 泣いてなんか、ないのですよーだ!(涙を拭う)
良かったですね、みっしーさん。
コブとか言いながら、好きなんじゃねーか。やってらんねーな。
まあまあ、そう言わないのだ。あたしたちも温水プールに行くのだ!
はい! そうしましょう、コノコ姉さん。涙子さんも。
はぁ。しゃーねぇなぁ。みっしーって奴の話は「のろけ」に近かったってか。ま、いいか。温水プールで今日は思い切り泳ごうぜ。
うぇーい!!
うぇーい、なのだ!!
めでたしめでたし。
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