プロット

文字数 1,129文字

【起】
小学三年生になったばかりの熊手忠人(くまでただひと)(通称たーくん)は、クラス替えの結果、仲の良かった友達と分かれてしまい、未だにクラスに馴染めないでいた。
そんなおり、一人寂しく下校していると、草むらの隅で、猫に襲われている細長い子熊のような、不思議な生き物を発見する。
「なんだおまえ? あっ、血が出てるじゃない!」たーくんは、猫を追っ払い、不思議な生き物を連れて帰った。
お母さんと一緒に怪我の手当をしていると、仕事部屋から出てきたお父さんが、これは(テン)だと教えてくれた。

【承】
熊手家で保護された(テン)は、たーくんによって、テン子と名付けられた。
たーくんとお母さんは、テン子を可愛がっていたが、なぜだかお父さんはあまり良い顔をしなかった。
どうやら、お父さんの田舎の方では、『(テン)は不吉の象徴』であり、見かけると良くない事がおこるという言い伝えがあった。
お父さんの不安が的中したのか、この頃から、たーくんの周りで悪い事が起こるようになった。
鉛筆の芯が一日で13回も折れたり、ランドセルに付けていたお気に入りのキーホルダーが無くなってしまったり……。
「あーあ、なんで毎日こんな事ばっかりなの?」たーくんは、なんとなく毎日の不満をテン子に話していた。

【転((テン)!?)】
ある日、たーくんが学校から帰ると、お母さんは買い物で留守だったためか、家にはたーくんとテン子だけになってしまった。
すると、ケージの中のテン子が突然しゃべり出した!
「私は悪魔だ! お前の『不満』を食べて、ようやく力が戻ったぞ!」
テン子はそう言うと、たーくんの家を飛び出して行った。
慌ててテン子を追いかける、たーくん。しかし、どこにいったのかさっぱり分からない。
あてもなく歩いていると、近くの公民館から、テン子を追いかけて人々が飛び出して来るのが目に入った。
直後、公民館から火の手があがる!

【結】
火事に気付き、慌てふためく人々。すでにテン子の事など誰も気にしていない。
得意げに公民館を見つめるテン子。たーくんは、すかさずテン子を捕まえに行った。
「ふんっ! カルチャークラブの茶室で暴れ回ってやったぞ。どうだこの悪魔の所業は!」と、その時の様子を得意げにテン子は語り出すが……。
翌日の新聞には、「茶釜専用の電熱器がショートしたことが出火の原因」とあり、テン子の仕業ではなかった。
また、「少し大きな(イタチ)のような動物が火事の直前に現れ、私たちが逃げるのを助けてくれた」と美談も語られていた。
「なーんだ、やっぱりテン子は、あくまでもなんでもないじゃん! 助けに行ってくれたんだね」たーくんは、モフモフのテン子のお腹に顔を埋めた。
人々の『感謝』に食あたりしたテン子には、これを拒むことができず、ただ「ギュギュギュ」と鳴くだけであった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み