神核螺旋槍ロンゴミニアド

文字数 21,074文字

ここは黒の大地、キャメロットの都市国家の一つ、ログレス。
遥か昔から住んでいるピクト人や妖精などによって長い間、平和と平穏が保たれた都市国家。
その辺境地。

突如、黒の大地のブリテン島に現れた三体の魔獣騎死によって近隣の他国は壊滅状態となり、今まさにそのログレスに一体の魔獣騎死が迫ろうとしていた。

その魔獣騎死は、第九魔獣騎死サファイア。
姿は、オセロニア世界とは異なる現実世界の地球のかつて白亜紀の末期に地上の覇者として君臨した、ティラノサウルスと同じ姿だった。

だが、全体的にティラノサウルスよりも大型で全長が40メートルを誇り、鱗はブルーサファイアのように蒼く、巨大な牙が生え揃った口からは他の魔獣も一瞬で骨と化す、超高温でほとんどプラズマ状の炎を放射できる攻撃能力が備わっていた。


キィーン

そして、鋼の剣と鋼並の強靭な尻尾の鱗がぶつかり合う渇いた音が聞こえた。
その剣を振るうは、三人の純白の鎧を纏った騎士。
「王は必ず、我らがお守り致します。」

他十数名の騎士と共にその敵の猛攻を防いでいた。
だが、騎士は防戦一方、その巨大な龍は薄ら笑いを上げながら楽しんでいるようだった。


それを厳かな顔で少し不快感を示した顔で騎士たちの戦いを見ていた王の隣で見ていた男がいた。
「モルガン様が古いブリテンの伝承に十二魔獣騎死の中で、最強と謳われる三獣死である、第九魔獣騎死。
ランスロット卿、パーシヴァル卿、ガウェイン卿、名だたる円卓の騎士の力を持っても拮抗を保てている状態というところですか。
王よ、いかが致しますか。
このままでは、我が軍は泥沼となります。
補給は、ログレスから間に合っていますが、また何処かにいる別の魔獣騎死に襲われでもしたら、戦力を分断するしかほかなりませんが、その場合ですと、どちらも共倒れになる可能性も高いですね。」

その騎士達の戦いぶりを見て、アーサーは何かに気づいたようだった。
「そうだな、早く決着をつけねばならないな。
アグ君、今すぐ全ての騎士達を退却させてくれ。
私が一騎打ちを申す。」

「ですが、王よ。
あまりにも無謀ですぞ、円卓の騎士三人を持っても何とか拮抗を保っている状態ですので。」

「あの魔獣は姉さんが言う聖域というのかな、恐らく相手と同じ強さで拮抗できるんじゃないのかな。
一見、強そうにも見えるけど、瞬発的な力には対応できないはずだ。
ほら、私にはちょうど、良いものがあるから。」 
アーサーにも秘策があるのかそう伝えると、

「王の命令ならば、従いますが無理をなさらず。
全騎士よ、魔獣騎死と王の一騎打ちである、道を開けろ。」
アグ君ことアグラヴェインの号令と共に統制の敷かれた騎士団は即座に魔獣に攻撃の手を止めた。

そして、騎士団が開けた道をアーサーは腰に掛けている聖剣、聖槍を揺らしながら闊歩して行った。


「なんと、王一人で挑まれるとは、お止めにならなければ。」
一騎討ちをすると察したランスロットは即座に止めようと前に出たが・・・。
ガシッ

「ランスロットの旦那、あの王様の目は絶対に負けない戦のときの目ですぞ。」
パーシヴァルは、王の顔を見て余裕の表情でそう言った。


「だ、だ、だがいくら王といえども円卓の騎士三人でやっと拮抗できる相手。
王一人で大丈夫なのか。」

すると、パーシヴァルの後ろにいた木刀を持った白い短髪の騎士がランスロットに言った。
「大丈夫しょっ、ランスロットさんよ。
心配性のセンコー(アグラヴェイン)も許したんだぜ、アーサーのおやっさんなら、あんな魔獣か野獣か分からん龍なんて、タイマンでワンパンしょっ。」

「ところでガウェイン君。
その木刀は何なんだね。」
パーシヴァルが調子の良いガウェインに対して呆れて言うと。

「聞いて驚くなよ、極東の国に伝わる木刀、信濃川だぞ。」

「その腰につけているのは?」

ガウェインの腰にもう一つの剣があった。
「あぁ、これは、聖剣ガラティーンだぞ。」

「聖剣は使わなくて良いのか?」

「いや、木刀のほうが俺には一番似合ってるから!!!
聖剣いるっすか、パーシヴァルの兄貴。」

「いや、聖剣を大事に使うことはいいと思うよ・・・。」

サファイアの周囲を囲っていた騎士は、続々と後方で待機していた。

その姿を見た、魔獣は薄笑いし騎士達を蔑んだ。
「この程度か、円卓の騎士という者たちは甘い甘過ぎるぞ。
貴様らの言葉で三獣死の一体、第九魔獣騎死。
このサファイア様の強者ノ聖域を打ち破れるやつはいないのか。」

その目の前に黄金と碧色の鎧を纏った黒髪の男が歩いてきた。
「では、キャメロット、ログレスの王、このアーサーがアナタのお相手をしよう、第九魔獣騎死サファイア。」

「ほう、王自ら一騎打ちを仕掛けるとは他の国の城に籠もって我に焼かれた王とは大違いだな。
勇敢であるが、同時に無能でもあるな!!!」
薄ら笑いしていたサファイアだったが、アーサーの気迫を感じ、真剣な眼差しとなった。

「なら始めようか。」

「おうよ!!!」

バァァァァァ

アーサーの号令と共に、サファイアは口から火炎放射を行った。
その火炎は、周囲を焼き尽くしながら生きている生物のように王に襲いかかった。

「炎か、なら。」
アーサーは、片方の手を手刀にして振り下げた。

ビュン

シュー

勢いよく振り下げられた手刀に炎は燃やすことも許されず、ただ風の波にさらわれて消失するだけだった。

「さすがは、かの湖の乙女が鍛え上げた聖剣エクスカリバーを引き抜いた者といったところか。
このサファイア様の本気ではないが我が炎を手刀で消失させるとは。
だがこの俺様の強者ノ聖域は相手が誰であろうとも互角の力と俺様の個としての力を合わせたものを出せる。
そう、俺様に勝てる奴なぞいないのだ。
十二魔獣騎死最強の俺様に勝てるか、アーサー!!!」

「王よ、助太刀を致します。」
ランスロットが王の後ろから剣を持って王の前に立った。

「来るな!!!
私が自ら一騎討ちを望んだのだ。
それが相手が強いという理由で反故にはできない。
それこそ、敗北だ。」

「ぐっ・・・。」
王の叱責を受け、ランスロットは沈黙したまま、後ろに戻った。

「良い覚悟で演説だが、愚かだアーサー。」

「何、失礼したな、サファイア。
始めようか。」


「アグラヴェイン卿、スキを見てあの龍を。」

「口を慎み、剣を収めろランスロット卿、今は王を信じることだけを考えろ!!!」

「くっ、本当に王は勝てるのか。
私の不倫が王を困らせたのだ、それを王は許した。
だが、王は充分に頑張ったのだ、キャメロット、ログレスの統一、西の大陸の侵略国家との戦闘など、もう王には苦悩はかけたくはない。
だが、あの瞳、確かに様々な事柄が成功するとき覚悟を示した瞳。
どういうことなのか・・・。」

「どうしたんだ、ランスロット。
アーサーの兄貴なら勝てるしょっ。
チキンにでもなったんか。」

「いや、王は重要な何かを隠している気がしている。」

「本当かぁ、アーサーのおやっさんが隠し事なんかしたことねえんだけどな。
それよりも、おやっさんが本気の力を引き出すぜ。」

ランスロットとガウェインがそんな話をしていると、サファイアが第十魔獣騎死オパールを蒸発させた炎の技を繰り出そうとした。

「俺様の最強の炎を持って無となれ、アーサー。
煉獄の炎をここに体現し、黙示録でさえも表記できないほどに文明と人類を滅ぼす炎。
ディアボロス・インフェエルノ(悪魔煉獄)!!!」
サファイアは、鼻で空気を吸い込み、牙の生え揃った大口から炎が混ざったプラズマ状の光線を放った。

だが、対峙しているアーサーは腰に掛けている剣を抜いた。
しかし、それは、刀身がなく鍔しかない奇妙な剣だった。
その剣を天に掲げ、高らかに声を上げた。

「マーリン、聞こえるか!!!
アヴァロンを開き、アヴァロンに置いてきた私と聖剣の力を私に戻してくれ。」
アーサーは、空に向かってマーリンという名前を吼えた。

「本当にそれで構わないのかね、アーサー王。」
すると、何処からかその王の声に答えた。
優しく諭すような悠久の時を生きたもののような声だった。
彼は、人と夢魔(インキュバス)のハーフで古い時代からこの地をアヴァロンより見守っていた者。
アーサー王は若き頃、モルガンに頼み、アヴァロンを探し当て、このマーリンに修行をつけられた為、このマーリンという人物は、師匠的な存在だった。


「私には、絶対に信頼できる者がいる。」
アーサーは天に剣を掲げて、覚悟を決めた眼差し答えた。

「それは、失礼なことを言ってしまったね。
君がそれほど信頼に値する人物がいて覚悟を決めているなら、僕も冥府の禁忌を破ってでも果たさなければならないね。
現世と冥府に繋ぐ狭間にある、地上の第二の楽園アヴァロンの門を開こう。」
マーリンには見えていたようで、アーサーの覚悟を聞いた彼は詠唱を行った。
それは、アヴァロンと現世をつなぐ術式。
アヴァロンとは死した魂が浄化される、楽園とも言える場所。
そこの門が今開くために地面から術式の刻印が浮かび上がった。


「何をやっても無駄よ!!!
このサファイア様の炎の前に燃え尽きよ!!!」

キューン

すると、術式の刻印から暖かな光に包まれアーサー王の黄金と碧色の鎧は輝きを増し、所持していたエクスカリバーやロンゴミニアドもアヴァロンにその力を置いていた為、魔力を蓄え、純白の光で溢れていた。

鍔しかないエクスカリバーは、水と魔力が織り込まれ透け通る瑠璃色の刀身が完成した。
その名は真天聖剣エクスカリバー。


「感謝する、マーリン。
見ろ、サファイア!!!
これが湖の聖剣、エクスカリバー。
これで、貴公の野望を絶えさせよう。
一振りにして、一撃で決めてみせる。
星の魔力によって潤わされた剣、星が水の時代により存在した聖剣。
抜刀、真天聖剣(エクスカリバー)!!!」 
アーサーが詠唱と共にエクスカリバーを振るうと剣から水の刃が現れて、そこから大瀑布よりも大量の水が噴出した。

ババババババッ!!!

音速を超えた水流がサファイアのプラズマ火炎も一瞬で消失させ、大地に大河を築きながらサファイアをも襲った。



なぜ、このような力をアヴァロンに置いていたと言うと・・・。
アーサーがアヴァロンからキャメロットに戻る前。
「マーリン師匠、ありがとうございます、今回このアヴァロンで学んだことを生かしてまいります。」

「今頃ですまないが、アーサー。
今回、この地で習得した剣技をこの地に置いていってくれないか。」

「なぜですか、師匠。」

「この地に来たのは人間の騎士としては、君が初めてだ。
この地、アヴァロンは死した魂の浄化と共にそのあらゆる人々の生き方を見ていた地でもある。 
君は強いがそればかりでは、民は付いてこない。
私の経験上、その種の人間は自身の時代は謳歌できるが、第二世代、第三世代では確実に国が崩壊する。
滅びは宿命でもあるため、仕方ない。
だが、君のまだ眠っている力を見ると、その宿命すらも変えてしまうのではないのかと感じる。
だから、キャメロットに戻ったら、自分の跡取りを育てよ。
そして、君が信頼できるほどの跡取りができたら、この力を必ず君の元に戻そう。」

「俺にもできるかな?」

「できるとも、人を信じれば。」













そして、現在に戻り。
水の放出が収まるとサファイアも全身傷だらけになりながらも河から陸に上がって来た。
だが、サファイアもかなりのダメージを負っており息が絶えかけていた。


「駄目か・・・。」
アーサーは自身の保有していた魔力を全て放出し、立っているのも精一杯だった。
そして、限界が来て倒れこもうとした。

ガシッ
「王よ!!!
大丈夫ですか。」

倒れ込むアーサー王にすかさずランスロットが倒れないように体を支えた。

「ランスロット卿、必ず、必ず、モルドレッドを助けてくれ。
そして、私を・・・。」
普段、彼が絶対に見せない懇願した姿でランスロットに頼み込んだ。

そして、限界が来たのかアーサー王は静かに瞳を閉じた。

「アーサー王!!!」

「落ち着け、ランスロット。
王は、力尽きただけだ。」

アグラヴェインが慌てるランスロットを諌め、他の騎士達も王のもとへ集まった。



ドシャ

傷だらけの発達した巨大な脚が強く踏まれ大地を震わせる。
その魔獣は、巨大な牙を剥き出しにして、口が裂けるほどの開けて怒りの咆哮を上げた。

「おのれぇぇぇ!!!
我が聖域を破るとは、あと聖域の対応が数秒遅かったら消失していたわ!!!
生意気なことをしてくれたな人間ごときがぁぁぁ。
ならばこのサファイア様の真の力を見せてやろう!!!
ガァァァァ!!!」

蒼き鱗を持った龍の姿は、反転し白く染まり、小さな前脚も巨大なガッシリとした肉付きに変化し、大地を容易く削れる爪が生えていた。
瞳も血走った色になり、腕からも鋼鉄さえも簡単に切り裂く剣状の鱗がいくつも生え、その姿を現した。

「これが、最強の魔獣騎死、星を死せる魔獣、スターサファイアだ。
さぁ、アーサー。
勝てるか、勝てるかな。」

サファイアの咆哮でアーサーは目を開けた。

「王よ!!!」

すると、何ともなかったかのように王は立ち上がった。
「すまない、手を煩わせてしまってランスロット卿。」

「王よ、大丈夫なのですか、そこまで無理なさらずに私めにお任せください。」

「気持ちだけは受け取って貰おうか。
決着をつけないとね。」
先ほどの戦闘で刀身のなくなった聖剣エクスカリバーは、腰に掛けられて。
その代わりに彼は背中に装備していた通常の槍よりも幅広く、穂先はただ突き刺すように滑らかに先端は細く尖い槍を取り出した。

その槍の名は、ロンゴミニアド。


ザッ
ドスッ

アーサーは何も語らず、一瞬で間合いを詰めてそのロンゴミニアドをサファイアの腹部を貫いた。
しかし、サファイアの巨大な体躯の前には少し小さな針を刺した程度だった。

「この程度の技とは、星を殺すスターサファイア様に勝てると思っているのか。
天国、辺獄、煉獄、地獄さえも行けなくさせてやる!!!
神に定められた4つの世界の旅路を滅ぼす、凶星の輝きアルマゲドン・アポカリプス(災終黙示録)!!!」

サファイアの上部に彼自身を覆い尽くさんとする巨大な球体が現れた。
それは、中にプラズマ状の光線が魔術障壁により閉じ込められた、超極光爆破攻撃。
そう形容したほうがいい、これらが解放した途端、この周囲一体、原子をも崩壊させる熱で満たされるだろう。

だが、その攻撃にもアーサーは眉一つ動かさなかった。
彼は知っていた、もはやそれは過去のことなのだと。
「いや、もう君の負けさ。
最強の魔獣騎死君。」

ゴボッ

サファイアは、ロンゴミニアドが刺さった腹部から液状化して溶け落ち、巨大な体躯が崩壊して倒れ込んだ。

ズサッ

「なぜ、このスターサファイア様が負けたのか・・・。
最強の魔獣騎死のはずなのに・・・。」

「お前は、その性格故に最強だと自負して慢心した。
それが敗因だ。」

「ハハハッ、分かったぞ。
このサファイア様の敗因はそれじゃない。
そこまで卑怯な手を使って、俺に勝つなぞ、魔獣の風上にも置けない奴だな。
だが、その狡猾さを持ってでも零を意味する者には貴様は勝てない。」

グジュリ
サファイアは高笑いしながら、2つの錬核石を残して完全に液状化した。

「フッ、言ってくれるね。
だが、必ず勝ってみせるとも、その為にこの体があるんだから。」
アーサーは、薄ら笑いを浮かべながらその石を口に持っていきゴクンと飲み込んだ。

「中々の自信だな、だがその自信がどこまで続くのかは、神のみぞ知るところか・・・。」
最後のサファイアの残した声は彼に聞こえたのかは誰もわからない。

「やっとこれで三獣死のうち、ニ体は揃った。
長らく、待っていた意味はあったな。」

「アーサー王・・・。」
アグラヴェインがその姿を見て、何かを察したのか護身用の剣を取り出した。

「どうしたんすか、アグラヴェインの旦那。
そんな厳しい顔になって。」
パーシヴァルがその異変に感じ、アグラヴェインを止めようとした。

「皆、剣を構えろ。
あれは王ではない・・・。」
彼はそう言い残すと、ただ悔しさで顔を歪ませた、自身の無力さを呪うかのように・・・。





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人類の味方であった第七魔獣騎死ルビーと白の大地で別れた三人は運命の道を通り、現在黒の大地にいた。

この大地は、草木が生い茂る白の大地に比べると、あまり草木が育たない薄暗く荒廃した大地。
原因は、この大地には太陽も月もかからないためである。
その為、本来、人も住めない寒冷地になるのだが、地下近くに星の魔力を潤沢に含んだマグマが脈動している為、地熱によって快適と思うほどの気温だった。

「ここが黒の大地ですか。
なんか、薄暗いですね。」

「あら、黒の大地は、初めてなのアルテレン君は。
黒の大地は、太陽も月も出てこないからいつも薄暗いのよね。
でも、光はあることはあるわよ。
あれを見なさい。」

モルガンに指差したほうを見ると、その空には蒼き炎で燃えていた球体の物体が浮かび上がっていた。 
簡単に言うと、蒼き太陽と言ったほうが良いだろうか。

「何ですか、あの太陽は。」

「あれは、冥府の炎に元天軍に所属していた七罪の王が世界に循環する魔力の一部を燃料にして燃やし続けている、黒の大地の太陽ね。
その名は、冥府の太陽、冥陽ね。
これによって、黒の大地も白の大地程ではないけど、作物が豊かにはなったわね。
もしかしたら、アルテレン君も白の大地の月ほどではないけど魔力の一部を利用できるのではないかしら。」

彼女に言われて、杖を見ていると仄かに光っていた。
「確かに、自分の杖も少し反応していますね。」

「でも、月読魔術を扱うときは気を付けなさいね、あれは元はといえば燃え盛る冥府の炎、星から貰う魔力と違って常に不安定なものだからね。
月読魔術を行使したいのなら、冥陽が一瞬黒くなったのに準備をしなさい。
そしたら、次に光り輝くとき、月も越えるほどの魔力が放出されるから、その時行使すれば、月読魔術も充分に行使可能な魔力量が確保できるわ。」

「でも、俺、多少なら自分の魔力でも魔術を行使できますよ。」

モルガンは、アルテレンの両肩を掴み、優しく話した。
「それは最後に残しておきなさい。
フール君は緊急だったから仕方なかったけど、アナタもあのような無理をしてしまうと、意識がなくなってしまうから。」

彼女の隠しきれない善意を受けてアルテレンは軽率な発言を反省した。

「分かりました、緊急のとき以外は使いませんので。」

「分かってくれて良かった。
アルテレン君は、本当に素直だね。
もし、私がいなくてもモルドレッドのこと頼むね。」

「はいっ!!!」


遠くで、付近の街を探していたモルドレッドがこちらまで歩いてきた。
「お母様、アルテレン殿、あそこの方向に明るいところがありますね。」

「あそこに街でもあるんでしょう。
聞き込みの為にも向かいましょう。」


三人は、早速その街に入った。

街は石畳で地面を詰められていて、良く整備されていた。
先ほど見えた光は、薄暗い街を照らす、正面に建てられていた灯台のようだった。

レンガで出来た家に誰かいないか、呼びかけて少しお邪魔したが誰もいなかった。
まだ、焚き火がついたままでそこから香ばしいスパイスで煮えられた肉と野菜のスープの匂いがしてきた為、そう遠くには行っていないだろう。

家から出ようとすると、アルテレンの目に一瞬、その鍋の中に宝石のついた指輪らしきものが見えた。

だが見間違いと思い、先に行く二人の後を追いかけた。 




三人が歩いていても人には誰にも会えずにこの街だけまるで人が一瞬のうちに消えたような錯覚に陥りそうだった。

「何かこの都市嫌な雰囲気が感じられるわ。
何か、聞こえますね。」

しかし、先ほどまで誰もいなかったはずの広場に人々の声が聞こえてきた。

その広場を家の影から三人は覗くと、かなりの数の人々が集合して、中心にはこの街で統治している妖精のような人物がいた。

「我らの神を信仰する者たちよ、今日の偉大なる一日は、神の言葉により、神を冒涜する者たちの送りの日だ。
すでにこの街に来ているかもしれない、冒涜者たちを捕らえた、ならば、早速神のもとへと送り罰を下せよう。」

その人物がそう言うと、その妖精の前に手足を縛られた男が目の前に差し出された。

「許してください、教祖様。
私を許し、善人のままに神の世界へとお連れください。」
男は必死に教祖様と呼んでいる妖精に命乞いをしていた。

「何をするんだ・・・。」
モルドレッドがそう言うと、三人は固唾を飲みながらそれを見ていた。

すると、突然その男の足が結晶化した。
「ギャー!!!!
足が・・・、足が・・・。」
ピキィピキィピキィ



「あの人、足が結晶化しているわ。
第二魔獣騎死と疑似した能力・・・。
魔力の物質化をあのような形で行えるのは魔獣騎死のみ。 
存在してはいるが姿が不明と言われている恐らく、あれは第八魔獣騎死ペリドットね。
心ノ聖域を持っている・・・って。」

「人の命を軽んじて許さん。」
モルドレッドは、剣を片手に持ちながらその結晶化した男を助けるため、魔獣騎死に戦いを挑んだ。

「止まりなさい、モルドレッド!!」
慌ててモルガンも静止したが、彼には聞こえなかった。

「神を信仰する者たちよ、神の敵が現れました。
彼を捕らえ、彼を神の元へ、裁きを与えるのです。」
その妖精も走ってくるモルドレッドに気づきそう言うと、周りにいた大人や子供、男性女性関係なく彼に襲いかかった。
手には、包丁、ナイフなど様々な兇器を持ち、狂気にして混沌とした殺意と共に振り下げようとされた。

「邪魔をしないでくれ、アナタ達を傷つけたくはない。」

ダッ

モルドレッドは飛び上がり、迫りくる信者達の波を避けた。
だが、多少は刃物が当たり、足にいくつかの切り傷が出来た。
だが、それをものともせずに魔獣騎死の近くに来て姿がはっきりした命令をしている茨に包まれ蜉蝣(カゲロウ)のような澄み切った羽を持った妖精のようなものに剣を向けた。

「神の使者である我らを殺し尽くす冒涜者、モルドレッド。
同じことを繰り返す者が、我らの儀式に邪魔をするな。」

「邪魔をするなだと、僕の故郷で人々に害を撒き散らす貴様らにそのようなことを言われる権利はない。
これは王によって引き抜かれた英雄を選定する剣。
アーサー王の始まりの聖剣。
その神威、神聖の前に沈むが良い!!!
始聖剣カリバーン!!!」
モルドレッドも敵が多人数の為、一気に勝負をつけようと、最大限の力を発揮した剣技を発動した。

「教祖様をお守りしろ!!!」
ザシュ

白光と共に放たれた斬撃は魔獣騎死の前に先ほどモルドレッドを殺そうとした街の人々が盾になって命を代償に魔獣騎死には傷一つつけなかった。

「なぜ、庇うのだ。
奴は僕ら人を喰らう魔獣騎死なんだぞ・・・。」
その姿にモルドレッドは困惑していた、魔獣騎死を守る者たちの瞳は全くの迷いのなさに。
それと同時に恐怖も湧いた、自身の剣で人を斬らなければというものを、アーサー王によって魔獣を倒すために貰った剣で。

「嘆かわしい、あまりにも嘆かわしいですね。
この救われないものには直接、神の元へ洗礼を受けなければ。
それでは、それではまずは神のいる世界へ覗かせましょう。
さすれば、神のいる世界に繋がりを持てます故に。」
魔獣騎死ペリドットは剣を構えているモルドレッドに催眠術のようなものを掛けた。
モルドレッドは、だんだんと恐怖も相まってか催眠術に掛けられて自分を失いそうになり、剣を落としかけようとしたとき。

ザッ
彼の目の前に後から追いかけてきた、モルガンやアルテレンが割り込んだ。
それに、モルドレッドを正気を取り戻し再び剣を構えた。

だが、モルドレッドの考えとは裏腹にモルガンはこう言った。
「モルドレッド!!!
アルテレン君と早く、逃げなさい。
あなたなら場所は指定できないけど遠いところに移動できる、空間転移魔術が使えるから!!!」

「これはこれは、黒の魔女モルガン。
アーサー王の影でしか生きられない魔女が次の王の盾となるには嘆かわしい嘆かわしいですね。
影に生きるものが図々しくも光に追従するとは愚かです、愚かです。」

魔獣騎死の侮辱にも彼女は誇るように言った。
「当たり前よ、私の誇り高い弟は太陽で私は月よ。
太陽には太陽の役割があり、月には月の役割があるのよ。
まぁ、それを人を喰らった知識で話す、貴方には理解できないことね。」

「そうですか、救いようがありませんね、人間とは。
心ノ聖域発動!!!
マインド・サンクチュアリ。
全ては、神の示すままに。」

すると、突然モルガンの頭に巨大な釘が刺さったかのように激痛が走った。
彼女は、モルドレッドに立ち止まらせないように苦痛の声を殺していた。
だが、かなりの激痛の為、頭を抱え込まずにはいられなかった。

「お母様!!!」
モルドレッドがモルガンに駆け寄ると、激しい剣幕で彼を怒鳴った。

「早く、モルドレッド逃げなさい!!!」

「ですが、お母様が。」

「早く行きなさい!!!
私が私じゃなくなる前に!!!
それとアナタは、アーサーに選ばれた魔獣騎死を倒す騎士なのだから!!!」

「すみません、お母様!!!
アルテレン殿、行きます!!!」

「お、お、おう。」
シュン
動揺しているアルテレンを連れて、モルドレッドはその場から空間転移魔術を行使した。


「あぁ、行ってくれたわ。
生きてね、アナタは私の自慢の息子なのだから。」
モルガンは、最後の気力を振り絞って、そう言い残し倒れ込んだ。

バタッ

「あぁ、行ってしまった、行ってしまった。
あのような決断、迷いもなく人の為に自分を失わせる、私にないもの、ないもの・・・。」
妖精は渇望を求めた。





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ふと目を覚ましたモルドレッドはそこまでの記憶しかなかった。

「ハッ、ここは!!!」

「フー、起きたか、モルドレッド。」 
すると、以前あったことのあるような男性の声とともにタバコの臭いが鼻についた。

ベッドに寝込んでいるモルドレッドの隣にいた男は紫の短髪で金と黒色に施された蛇模様のジャケットを羽織って、葉巻を吸っており、その反対の腕には金の蛇の腕輪をしていた。

彼は、トリスタンという名前でモルドレッドと同じ円卓の騎士の一人なのだが、様々な国を周り、諜報活動をしている円卓の騎士の称号を持った男である。

だが、トリスタンが円卓の騎士であることを知っているのは、円卓の騎士とアーサー王などのキャメロットの上層部しか知らず、一般では彼は、世界中のカジノを荒らすギャンブラーとして知られている。

「トリスタンさん、何故ここに。」

「それは俺のセリフだ。
この俺に何のようなんだ。」

「ここは何処ですか。」

「何も知らないのか、お前はアルテレンと言う子と一緒に、二人でいきなり俺の家の中に現れたんだよ。
俺も驚いたが、おおかたアルテレンから事情は聞いたさ。」

だが、モルドレッドが周囲を見渡して、アルテレンの姿が無かったため、不安になって尋ねた。
「お母様とアルテレン殿は!!!」

「アルテレンは、買い物に出かせたさ。
モルガン様はいなかった、お前たちが戦っている魔獣騎死に捕まったのかもしれないな。」

「あれは夢じゃなかったのか。
早く、助けないと!!!」
だが、モルドレッドがベッドから立ち上がろうとすると、足がズキリと痛んだ。
先ほど、街の人々に斬られた傷が痛みを生じさせていた。
彼はそれを我慢して立ち上がろうとしたが、トリスタンは見逃さず、肩をポンと押さえつけられて、立ち上がらせないようにベッドで休養させようとした。

モルドレッドもさすがに今のままだと立ち上がることもままならない為、諦めてベッドに座った。

シュボ
トリスタンは、先ほど吸っていた葉巻を捨てて、新たに葉巻をマッチで火をつけ、ソファに腰掛けながら吸った。

「フー、まぁ今はゆっくりと休め。
お前の体を見ると、だいぶ無理をしているようだからな。
それと、お前と同じく魔獣騎死を探している者も今、アルテレンに連れてきてもらうから、少し待っておけ。
まぁ、一応言っておくが彼は西の大陸からの傭兵さ。」

話しを聞いたモルドレッドは、自分達以外にも魔獣を追っている人物がいることに驚きを隠せず、どんな人物なのか楽しみにした。


Now loading・・・。




アルテレンはトリスタンに事情を話し、第八魔獣騎死ペリドットを追っている剣士がいるとされる酒場についた。

「確か、ここの酒場で良かったな。」

バタン

アルテレンは、酒場の扉を開けて大声で叫んだ。

「失礼します、ローランさんはここにいらっしゃいませんか!!!」

「ワッ、一体何なんだい。
ローランなら、二階のテーブルで眠っているよ。」
すると、近くのテーブルで座っていた、薄灰色の髪に腰に剣を携えた、赤と黒に基調とした鎧を纏っていた竜人の女性が答えた。

「ありがとうございます。」
アルテレンは、その女性にお辞儀をしたあと、すぐローランの元へ向かった。

その女性は、アルテレンを見送った後、昼食後のお茶を済ませ、酒場の店主まで会計を済ませようとした。
丸刈りで髭面の店主と世間話をした。

「今来たのは、騒がしい子だね。
昔のホーフンドを思い出すわ。」

「この辺じゃ、見ない子だね。
キャメロットからの移住者かな?
それよりもヘルヴォルも傭兵はしないのかい。」

そう言われると、ヘルヴォルは頭をさすりながら、照れくさそうに言った。
「んー、今は依頼も来ないからね、それと私もやる気がないからね。
今日も美味しい紅茶をありがとう、マスター。
じゃあ、お金を置いとくわね。」

そして、お金を置いたヘルヴォルは酒場から出ていった。
「またのご利用を。
そうか、もう、ヘルヴォルの相棒が亡くなって数年か、早いなぁ。」

店主も懐かしさと寂しさが混じった表情で誰もいない寂しげな一階の酒場を見ていた。


ダダダッ
アルテレンは、早速階段を上がり、二階にいるローランを見つけた。

ローランは、酒場で昼食後の昼寝なのかテーブルに突っ伏して眠っていた。
そこには様々な本が置かれていた。
「ぐぅー、ぐぅー、ぐぅー。」

「あの、ローランさん。」

「ぐぅー、ぐぅー、ぐぅー。」

「ローランさん。」

「ぐぅー、ぐぅー。」

「ローランさん!!!」
何度かアルテレンが呼びかけてやっと、ローランは目を覚ました。

「んっ、誰だ、お前は。」

「俺の名前はアルテレンです。
アナタにトリスタンさんから魔獣騎死についての相談をしたくて。」

「あぁ、分かった。
じゃあ、さっそくトリスタンの家に行くか。」
ローランは立ち上がり、読んでいた本を持ってトリスタンの家にアルテレンと共に向かった。

トントンッ

トリスタンが先ほど着けた、葉巻の火を潰して。
肺の中にあった全ての煙を吐いた。

そこには、先ほど到着したアルテレンとローランもいた。

「フゥー、とまぁ、一通り自己紹介は終わったか。
モルドレッド、アルテレンはアーサー王、モルガン様の指令と契約で魔獣騎死を倒すことになり、ローランはランスロット卿、俺はアーサー王の指令だな。」

「お前たちは、本当に無策で第八魔獣騎死に挑んだのか。」

「はい・・・、僕が悪いのです。」

「他の魔獣騎死なら、それも一つの作戦かもしれないが、第八は、非常に厄介な奴でな。
まぁ、そこはローランから説明してくれ。」

「トリスタンさんが言ったように俺も何度か挑んだが、第八魔獣騎死には心ノ聖域というものを持っている。
心ノ聖域は、聖域の範囲内に入ればその人の現在位置、思考全てを読み取ることのできる聖域だ。
魔獣騎死を知り尽くしたモルガンさんもそこまでは知らなかっただろう、古文書にも載ってはいなかったから。
俺達も街に入ってやっと気づいたところだったからな。
だから、モルドレッドさん、アナタ達が街に入ったときには、奴はもう気付いていた。」

「そうなのか、あの結晶化させたあれも演技だったのか。」

「なぜ、トリスタンさんとローランさんは生き残れたんですか。」

「いい質問だ、アルテレン、それはこの呪われた指輪さ。
この指輪は、俺の命を削る代わりに俺に幸運をもたらす代物さ。
これを強制放出させて、ローランにも幸運をもたらして何とか逃げれたのさ。」

「だが、何度も使えないトリスタンさんの命が持たないからな。」

「そしたら、どうすれば良いのですか。」

「聖域の範囲外からの一発攻撃、それができれば理想的なのだがな。
あいにく、そのような武器はないんだよな。」

「範囲外はどれくらいの距離ですか。」

「大体、十数キロほどかな。」

「じゃあ、俺がやります。
俺だったら、魔力を固めての杖からの魔弾攻撃ができますので。」  

「できるのならありがたいが強力な魔術と魔力がないと打つのも難しいだろう。」

「トリスタンさん、アルテレン殿は月読魔術士です。
彼なら必ずできると思います。」

「月読魔術士か、この世界に始祖のオリュンポス十二神のマーキュリーしかいない幻の術士。
その弟子なのか?
少し、杖を貸してくれ。
打てやすいようにスコープ部分を取り付けるように街で頼んでくる。」

「ありがとうございます。」

ガチャ
トリスタンが家を出ると、モルドレッドはローランに質問した。

「ローラン殿は、どうして魔獣騎死を追っているのですか。」

「俺は昔王子だったんだよ、王として国を任せられるとき、とある怪物が俺の国を襲ったんだ。
それによって国は、壊滅状態になり国民も故郷を追われ、バラバラになった。
俺は王をやめて、今は傭兵として旅をしながら資金を稼いでいる。
いつか、国を復活させるのが俺の夢なんだ。
だから、その為にも今回の魔獣騎死との戦いを経験としてあの怪物に勝利をおさめてみる。」

「幾ら経験の為とは言え、魔獣騎死討伐の為に尽力させていただき感謝致します。
もし、その怪物との戦い時は、是非とも僕も参戦させてください。」

「ありがとう、モルドレッド王子。
ですが、気持ちだけもらっておきます。
さすがに円卓の騎士が西の大陸に上陸すると、他国がアナタ達を狙うと思いますので。
それと、俺もそんな王としての資質や実力も成長していなく、この王剣も上手く扱えませんからね。」

「そうですか、でも何か困ったことがあれば、僕に相談してください。
それと、僕の名前はモルドレッドでいいですよ、ローラン殿。」

「ありがとう、モルドレッド。
ところでなぜ、俺にここまでのことを。」

「それは、ローラン殿。
アナタが王としての器があったからだと思うから。」

「バ、バ、バカ・・・。
そんな分からないことを言わなくてもいいじゃないか。
俺は、ちょっと酒場に忘れ物したから取りに行ってくる。」
ローランは、顔を赤くさせながら照れながら家を出ていった。

バタンッ
扉を閉まる音がすると、アルテレンがモルドレッドに尋ねた。

「ローランさん、王様だったのですか。」

「確か、僕も聞いたことがあります、王でありながら傭兵に身を置いた人物も聞いたことがあります。
ローラン殿は、かなり期待されていて、それが重圧になって彼を追い詰めたのでしょう。
今もその重圧に苦しんでいるみたいです。
でも、ローラン殿ならきっとその重圧を乗り越えて良い王様になれると思いますよ。
だって、彼は困難なことが来ても絶対に乗り越えられるという自信を持っているお父様と一緒の瞳をしていたから・・・。」

「モルドレッドさん。」

「何ですか、アルテレン殿。」

「俺は王様の器なんて言うのはよく分からないけど、王様は民の為に前に出る人なんですよね。」

「そうですけど、それがどうしたんですか。」

「それが分かれば良いんじゃないですか、神様にだって王様のあり方に対する絶対の答えなんて無いですからね。」

「アルテレン殿、少し良いですか。」

「どうしたんですか、モルドレッドさん。
涙なんて流して。」

「僕は卑怯者です、お母様を置いて自分だけ逃げたんですから。
あのとき、何かできることがあったんですよ、あの魔獣のスキさえつければ・・・。」

「モルドレッドさん、今はモルガンさんの無事を祈りましょう。
モルガンさんもアナタのやったことに対して、責めないと思いますよ。
あのまま残ってしまえば、モルガンさんを助けるどころか僕たちも囚われの身になっていたと思います。」

「ごめんなさい、お母様。」

「気が済むまで、俺の胸で泣いても良いよ。
誰にだって弱い部分はあるから、今は俺が隠してあげるから。」
抱きつき泣いているモルドレッドにアルテレンはそれ以上の声は掛けずに無言で慰めた。


「俺だけじゃないのか、悩んでいるのは・・・。」
外で二人の話を聞いていたローランも思い詰めるような表情で王としてのあり方を考えていた。

そうして、モルドレッドはトリスタンが帰ってくるまで涙を流していた。

トリスタンもモルドレッドの赤く腫れた瞳には気づいたが、モルドレッドの名誉を保つためにもそれを問うことは無かった。




そして、再びアルテレンの杖を改良したトリスタンが戻ってきて、四人が集まったときに再び作戦会議が始まった。
「それで、ローラン、魔獣騎死に対しての調べはついたのか。」

トリスタンに言われた彼は、アルテレンが酒場に行ったときにあった本をテーブルに置いた。
どうやら、ログレスの古文書のようだった。
「あぁ、奴らはオリュンポスエリアを中心に現れた宙の災害の前座と称された十二鏖獣(ジュウニオウジュウ)の可能性が高い。」

「何ですか、それは?」

「かつてオリュンポスエリアの神々と戦いを繰り広げた魔獣だよ。
まぁ、オリュンポスエリアがある西の大陸でもごく一部しか知らないおとぎ話さ。
遥か昔、黒き白鯨を封印したゼウスはその戦いによって荒された国土を復興しているとき、十二体の獣が各地に出現した。
その獣は人を襲い喰らったりした。
それを見兼ねたゼウスは即座にオリュンポス十二神を率いて、その獣を打ち倒すために。
だが、非常に苦戦して神々もかなり手を焼いたんだ。」

「最後はどうなったんですか。」

「最後は、十二鏖獣、零を意味するものを一体だけ残して、鏖獣が襲来してからちょうど十二日目、そこから事態が急展開した。
零を意味するものの体を突き破り宙の災害という意味の怪物が出現した。
ゼウスやオリュンポス十二神も黒き白鯨との戦いで疲弊したものもあってその怪物に滅ぼされかけた。
だが、オリュンポス十二神の一人、マーキュリーが月読魔術の終局術式を行使したことによって何とか撃退することができたという話しだ。
そして、宙の怪物が逃げ去った方角がここになるわけだ。」

「凄い、マーキュリー師匠。
そんなこともしたりしたんですね、俺も負けられれない。」

「だけど、その物語ではマーキュリーは永遠に癒えない深い傷を負い長い眠りにつくことになったと書かれている。」

「それは本当ですか、ローランさん。」

「物語の一つだから本当のことは俺にも分からない。」

「どうしたんですか、アルテレン殿。」

「いや、別に気にしなくても良いよ。
ちょっとした確認をしたかっただけだから。
今回戦う、魔獣騎死と似ているのもいるんですか。」
アルテレンは、なぜマーキュリーが自分とフールを置いてきて、一向に帰ってこなかった理由を知った。
だが、更に疑問が浮かんだ、なぜ一人だけでそこに行ったのか。

「確かにいるにはいるが。」
チラッ

「ローラン、別に俺を見なくても良い。
こちらの知っている情報はできるだけ共用しろ。
知らなかったでは、あの魔獣には勝てないからな。」

「すまない、トリスタンさんとは関係はないが。
第九魔獣騎死と似ている十二鏖獣は、名前があるが第九鏖獣トリスタンと呼ばれているものだ。」

「円卓の騎士の名前と一致しているんですか?」

「そうだ、たまたまなんだと思うけどな、俺も最初古文書を調べて、見たときは驚いたさ。」

「僕の名前はあったりするんですか?」

「いいや、モルドレッドやアーサー王、モルガンの名前は無かったな。」
 
「それで本題に戻るが、第九鏖獣は、侵食魔獣という使い魔を生命の体を素材にして作れる。
彼らは、人間社会に紛れ込み、人の精神、または肉体を侵食し取り込むことで同化を計る。
同化された人は、彼らに再構築され新たな侵食魔獣になる。
これによって増殖したが、彼の最後は、オリュンポス十二神の一人、戦神アレスの狂乱の炎の力によって発狂した侵食魔獣に惨殺された。
そして、自動的に侵食魔獣も消滅した。」 

二人とも熱心にそれを聞いており、トリスタンも意外な顔をしていた。

「(アルテレンやモルドレッドの様子を見るからに十二鏖獣を知らないようだな。
モルガン様は、モルドレッドが生まれたときになぜかは分からないがログレスの古文書を漁っていたと聞いたことがあったが、その時にこれらの古文書を閲覧したと思うが、なぜ二人に伝えていなかったのか?)」




そして、四人はその魔獣騎死ペリドットに支配された街を丘の上から眺めていた。
この地点は範囲内に入っていなかった為、まだ存在は気づかれていなかった。

その街には、昨日よりも更に街のあちこちに人の他にオークやエルフなどの亜人族や妖精や悪魔のようなものも彷徨いていた。

「やはり、かなりの数を食らったな魔獣騎死が。
また数が増えてやがる、悪魔に妖精、何でもありだな。
よし、モルドレッドとローランは使い魔達を引きつけろ。」

「分かりました(分かった)。」

そして、二人は剣を腰に掛けて魔獣騎死のいる街へと向かって行った。

「トリスタンさんは何をするんですか。」

アルテレンの質問にトリスタンは葉巻を吸いながら答えた。

シュー
「フー、アルテレン、こんな遠くからの狙撃は至難の技で当てれないだろう。
俺が狙撃手になる、昔からフェイルノートという竪琴の弓を使っていてな、遠くからの狙撃は得意だ。
俺の言った通りにしてくれ。」

「はい、じゃあ今から魔力を杖に充填しますので。」
すると、アルテレンの杖は空にかざすと仄かに冥陽の魔力を吸収し光りだした。






その頃、モルドレッドとローランは聖域の範囲内に入り、即座に魔獣ペリドットにも感知された。

「来ました、来ましたね。
モルドレッドと恐らくローランでしょう。
手を組んだのでしょう。
我が信者達よ、出迎えなさい。
そして、殺し、喰らい我らの仲間へする為。
彼らは、仲間がいて私も狙っている。
それと、私の盾にもなりなさい。」
彼女の声とともに一斉に街にいた半数の人々達は、近くの家にあった刃物を手に取り、モルドレッド達二人を探した。

それと、もう半数は魔獣ペリドットの体にしがみつき、液状化し、即座にダイヤモンドに近い成分の炭素の盾を魔獣を覆いかぶさるように作り出した。

それを遠くから見ていた、トリスタンはため息を付きながら話した。
「フー、やはり、人や妖精、悪魔達を使って盾を作ったな。」

「トリスタンさん、もしかしたら彼らは助けれるんじゃないですか。」

「見た目は普通だが、魔術的に見れば、もはや元の種族としては形骸化している。
さらなる犠牲を増やす前にここで奴を倒す。
まぁ、あの魔獣さえ倒せば使い魔共も消滅する。
恐らく、モルガン様もそうしていたであろう。」

「分かリました、後、数分で魔力の装填が終わります。」

「はいよ、フー。
だが、あの盾を壊してくれるように二人に任せるのみ。」
トリスタンはタバコを手に取って街を見ていた。


「!!!eeeeeeeNiS。
!!!eeeeTeKuSaT。」
ザシュ

鬼のような形相で襲いかかる元は人だったものは理解し難い言語を発しながらモルドレッド、ローランと市街戦を繰り広げていた。

「かなり数が多い、これだと長期戦になれば僕たちが疲弊して負ける。」

「そしたら、お前の聖剣カリバーンと俺の王剣グローリアスで一気に殲滅させよう。」

「分かった、絶技一閃、これは始まりの聖剣(これは騎士が宿りし王剣)。
魔獣騎死に同化した人に救いを(魂の行く地へと)示さん。
始まりの聖王剣、カリバン・グロリアス!!!」
二人に一斉に襲いかかろうとした、街の人々をモルドレッドの直進に敵を殲滅させる剣技とローランの円状に敵を殲滅させる剣技を合わせる事で、直進するたびに一定の感覚で円状に斬撃が放たれる剣技が放たれた。
街に潜んでいた、人々は全て液状化し、残すはペリドットのみだった。

「後は、あそこにいる魔獣騎死ペリドットの盾も剥がすぞ、モルドレッド。」

「分かりました、ローラン殿。
あれでは、アルテレン殿の攻撃すらも弾き返してしまいますので。」


「悲しい、哀傷を漂わせる人よ。
私に任せば、全てが楽に済むものを自らが苦難を形成させる、悲哀です、悲哀ですね。」

「何だ、この姿は。」

すると、魔獣騎死ペリドットの背中がパックリと開いてそこから植物のつるのような触手が幾つも伸びて、液状化した人々を全て飲み干した。


「驚愕を察知、この姿は私を愛する者たちへの魂の形成。
私の転生した子どもたちの愛の終局。
その名は、クワ・ペリドット。
さぁ、桑の花言葉のように共に死にましょう。」


「これが魔獣騎死の末路か。
他を取り込み、自分だけが生き残るあまりにも傲慢だ。」

「魔獣は、例外はいるが人を取り込むことによって成長する獣だ。
人ばかりを食らうと、このような思考に至るのかもしれないな。
あまつさえ、人もその思考を持ち合わせているのだから。」


「我らの愛は死して神に捧ぐこと。
神の代理である私も来たるべき日に神に捧げる。
これぞ、愛、愛ゆえに命は救いを求め、死を求める・・・、抑えられない感情は激情に走り、これが愛、私が未だに手のできていない愛・・・。
アアアアアアァァァァ、二人も私の愛と融合してぇぇぇぇ!!!」

ヒュン、ヒュン

「モルドレッド、あの植物の触手みたいなものには触れるなよ、一瞬で奴と融合させられる。」

「ローラン殿、分かりました。
ですが、今ならあの盾に隙間ができているから無理やり開ければ、アルテレン殿の攻撃も通ずる。」

「アルテレン、良いか。」

「あぁ、モルガンさんに教えられた冥陽の魔力を使って次こそは撃ち抜く。」

「時計回りに回せ。
そうだ、少し杖を上げて。
今だ。」

「月読魔術、三日月ノ項!!!
それは光の柱、淡き蒼。
ディアナ・ポース(月の光)!!!」

ギュイイイイン

アルテレンがそう唱えると、赤く煌めく無限を意味する∞の刻印が浮かび上がった。
周囲に広がった膨大な魔力は杖に一点に固められて球状に変化した。

そして、腕に現れた刻印は、何かが高速回転するような音をたてながら、光り輝いた。
そして、その刻印から超極大の赤い魔力がアルテレンの杖に集中している魔力に、供給された。
そう、無限魔力炉機関ウロボロスの起動である。

「何ていう、魔力だ。
おおよそ人が出せる魔力じゃない・・・。」



カァッ
すると、モルガンに教わった冥陽の魔力供給が増大する合図の眩い光を放った、それがアルテレンの魔力に注がれ更に強化された。

「来ました、ローラン殿。
アルテレン殿の技が。」

「だめか、注意は引けたからペリドットの装甲は諦めよう、あの魔力量だとギリギリ貫通するかもしれな。」

遠くからでも、見える赤き光線が見えた二人は巻き込まれないようにそこから離れようとしたが。

ガシッ

「しまった!!!」

離れようとするモルドレッドの片足に植物のつる状の触手が巻き付いた。

「モルドレッド!!!」

「早く逃げてくれ、こんなもの、グハッ、グアアアア!!!」

モルドレッドが藻掻こうとしても、触手が足の皮膚に入り込み同化しようとしていた。


「逃げないで、断らないで、私は愛。
愛ゆえにアナタを取り込む。
私の愛を受け止めて。」

ブンッ
ザシュ

「何をやってる、早く逃げるぞ。
お前も次期王位継承者ならここで諦めるな。」
しかし、ローランの剣が振るわれ、モルドレッドに絡まった触手は真っ二つに斬られた。

「すまない、ローラン殿。」

「アアアァァァ、我らの希望。
我らの光。
私の愛しい人、私のものになれなかったもの・・・。」
逃げ去る二人を求めた彼女。
人々を狂った愛によって、怪物とかさせた彼女に天の裁きなのか、はたまた自然の摂理と言う名の自然の自浄作用なのか、もはや分からない。
これだけは言える、彼女は愛を与えたが自身には偽りの愛しか貰えなかった・・・。

カァッ
バァッーン!!!
アルテレンによって出された術式は、街を光で覆いかぶさるように爆発した。

「第八魔獣騎死ペリドット、愛は束縛するものではない他人を思いやるものだ。
お前がやっていたのは、ただの束縛だ。」
モルドレッドはそう言い残し、ローランと共にその場を離れていった。






そして、アルテレン達と合流したモルドレッドはトリスタンに質問を受けた。
「倒せたのか。」

「はい、この通り、ペリドットの錬核石もありましたので。」



すると先ほどペリドットのいた場所から見覚えのある女性が走って来た。
「モルドレッドー!!!」

「あれは、モルガンさんじゃないですか。」

「お母様、生きていらっしゃたのですか。」
ダッ

「フー、モルガン様も何とか無事だったようだな。」

「良かったね、モルドレッドさん。」

喜んだモルドレッドを見て、アルテレンとトリスタンも微笑んでいた。

「お母様!!!」

「いつまでも甘えん坊ですね、モルドレッドは。
でも、お母さんそういうところ大好きなのよ。
ヨシヨシ。」
心配で抱きつくモルドレッドにモルガンは優しく頭を撫でた。

「すみません、僕が無謀なことをしたばかりに。」

「もう、過ぎたことです。
それよりも、アナタはとんでもないことを忘れているのではないですか。
第零鏖獣モードレッド・・・。」

ザシュ

渇いた剣が彼の鍛えられた鎧と体を穿き、赤く染めた。
血が大地に咲いた花に触れると、その花は瞬時に枯れた・・・。


現在、5月11日の朝。
魔獣大戦の次の段階まで残り、1日。



























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登場人物紹介

この世界の作り


この星と同じ大陸と海があり、そこを治めているのはその地域で信仰されていた神や魔王など。 

例外的に人が治めているときもある。


異なっていることは、表と裏に同じ世界が広がっている。


主に白の大地と言われるところは、神や天使などが統治しており。


逆に黒の大地は、七罪の魔王などが統治している。


名前 アルテレン


メフィストフェレスとファウストの共同で作られた、ホムンクルス(ヤーブラカ)の一人。


月読魔術士の十六歳の少年。

月読魔術士と言うものは、月の光、欠け方、模様を読むことでその状況にあわせた魔術を行使できる魔術士。


因みに月読魔術士を教えたのはマーキュリーである。

名前 フール


アルテレンと同じでヤーブラカの一人。

アルテレンとは、血はつながってはいないが共に生きている親友以上の存在。


召喚士の十六歳の中性的な顔の少年。

顔と腕に召喚の失敗の代償にアザができている。


マーキュリーに教わって召喚士になったのだが、あまり上手く召喚できない。

だが、召喚ではなく、物体などを生成する魔術のほうが得意らしい。

名前 マーキュリー


オリュンポス十二神の一人で月読魔術士の始祖である。


アルテレンとフールをメフィストフェレス達から救い出した。

その後、アルテレン達が14歳になるまで面倒を見ていたが、とある事情によりオリュンポスに戻らなければならなかった。


月読魔術士は、現在アルテレンとマーキュリーで二人である。

数千年前は、百人ほどの弟子がいたが、宙から現れた黒き災厄によって、全ての弟子を失ってしまった。

それ以来、彼が弟子をとることは無かったが、アルテレン達の事情を知り、自分とは同じ通常の人間ではないことに同情しているのかアルテレン達を弟子にとっている。

名前 バナド・マシュ。

異界教団と言われる、異界の神を信仰しそれらを降臨させることを目的とした天軍さえも牛耳った教団。

バナド・マシュはその教団の教祖である、そして最初にして最後の異界の者と繋がりを持った人間でもあった。


旧世革命カタストロフィ

当初の目的は、運命にさえ逆行した神の時代を打倒するために作られた組織で、更に七罪や天軍を倒すために今の支配勢力をひっくり返し、新たなる時代を築こうとするに目的が変わった革命部隊。


メンバー


ギリシャ担当 怪物の神 テュポーン


北欧担当 終炎の巨人 スルト


メソポタミア担当 神毒の蠍 ギルダブリル


七罪担当 幻惑の悪魔 メフィストフェレス


天軍担当 (担当席不明)


エジプト担当 鏖殺の獅子 セクメト


ヤマト担当  百妖の根源 夜行


インド担当 アスラの王 マヒシャ


天軍のガブリエル調査報告書より

永久神世同盟

三つの国の神が神々の時代を終わらせないように結成された同盟。

所属国家、代表者は、

 

オリュンポスエリアのゼウス


アスガルド国家のオーディーン


メソポタミア都市国家連合のマルドゥーク

で組織されている。


本来なら、炎の狼と巨人により終わるはずの北欧神話は、二つの神話の助けにより終末を終わらせ、更に繁栄を極めた。

また、ギリシャ神話、メソポタミア神話の緩やかな消失も北欧神話の繁栄により、人の信仰が一定以上保たれ、消失を防げた。


これを学び、神は永久的に自らの時代を存続させようと決意し、ここにこの同盟を結んだ。

ヤマト連邦国家

白と黒の大地の両方の極東にある島国。

この世界で唯一、白と黒の大地両方を領土としている国。

この国を統制しているのは、神や神の代理ではなく、人である三権英傑によって統制されている。


第六天魔王、織田信長

 

金色太閤、豊臣秀吉


東照大権現、徳川家康


ヤマトの神々はいるが、日本武尊との取り決めにより、人による支配は人にさせるようになった。


天軍の古文書によればヤマト連邦国家の東の海にはかつてヤマトの神々と同等の神性力を持った、神々がいるとされている。

イデア大戦


オセロニア戦記イデアの華より


数年前に起こった、ハドゥン帝国がサザンカ民国に対しての侵略戦争。

だが、天軍の記録によれば、近年稀に見られる神の時代の戦いとされている。

神奥覚醒(アフィプスニィ)

オリュンポスの歴史書に記されている、神の能力が何らかの原因により一時的に進化した状態のこと。

あまりにも、強大な為、この星の空間に存在できる神奥覚醒体は、2体までとされている。

3体目を顕現させると、星の空間では容量が限界突破するため、星の循環機構に乗っ取り、3体ともギリシャ神話ではカオスと呼ばれる世界、超次元空間、カオス・コスモスに強制転移される。



また、亜種にあたる一体だけで星の空間の容量を限界にさせる、神奥覚醒変異体がいる。 

また、これらも神奥覚醒体、神奥覚醒変異体が出現してしまうとカオス・コスモスに強制転移される。


(だが、この星の安全装置(アーク・ワン)が抑止力となり、彼がいる限り、神奥覚醒体の3体目と変異体の2体目の出現は、神奥覚醒の因果律を一時的に断ち切らせることで顕現しないため、強制転移することはない。

強制転移が始まると、生物が外からのウイルスなどを倒すときに体力を使うように、この星もエネルギーを使うため、星の循環機構が変動してしまう。)



神奥覚醒体とされているもの


アフロディテがヘパイストス、キュクロプス、ジゼル、ホーフンドによってウラノスの神性を魔術で再現させた神性を融合し、覚醒に至った。

アフノス・イデア



アレスがヘパイストスによって科学で再現されたガイアの神性を融合させ覚醒させた。

ガイアレス・デミウルゴス

異界の者

人の想像により、その存在が証明された神々。 

不明、何もわからない。

所詮、他人の妄想の神を信じて何になるのか。

だが、その神は自らの存在をそこに隠すことで世界を狙っている。

黒き災厄。

まだ、ゼウスがテュポーンを打倒した遥か昔。

オリュンポスを襲ったそれは、宙からの災害。

人は炎で燃やされ、神は灰に嘆く。 

また、自らも灰にされることを知らずに。

過ぎ去るものは、時間と破壊のみ。

彼は、この星に新たなる理を作る、侵略者であり、創造主でもある。

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