第2話 至福の時

文字数 1,279文字

「ああ、見えたよ。あそこだよ。俺の別荘。豪邸だろう。」

古別荘を2件買い取りそれを潰して建て直した。
建設会社らしくデザインから図面設計、建築まで自社で行った。
勿論シフト該当の職員も携わっている。

「凄い自動!」

隣の美女が自動門扉に感動しているのを薄笑いで見つめる。

「此処から車で2分で到着。」

車は樫の木に覆われた舗装路を20キロの低速で走る。
勿論、彼女に自分が庭師に植えさせた樫の木並木を見せつけるためだ。
建物正面に車を着ける。
正面には玄関と呼ぶには余りにも崇高にみえる洋風ホテルのエントランスと見間違えるほどの入り口がある。
この建物の顔に彼女は相応しいと自画自賛した。
玄関ドアはオートロックになっていて暗証番号をタッチするか専用カードキーでないと開かない。
遥佑はカードキーを使ってロックを外した。

「さあ、入ろう」

彼女の背中に手をまわし、並んで室内へと入る。
正面に二人の立ち姿が鮮明に映る鏡があり、遥佑はナルシチズムなポーズを彼女に見せつけるようにとった。
美女はクスリと笑い遥佑の左肩に凭れ掛かる。
彼は美女の身体を両腕で抱き抱え大理石が敷き詰められたリビングのソファーにゆっくり寝かせる。
上から覆い被さろうとする彼に美女は腕で防いで

「お酒飲みたい。」

と焦らしてきた。

「酒なら何でもある。好みは?」

「F.W.ラングート・エルベン」

美女はスパークリングワインを指定した。

「じゃぁ、金箔入りで。」

遥佑はゴールド リーフNV をワインセラーから取り出しワイングラスに注ぐ。
弾ける音と共に美女も彼を見つめながら淫らな本性を表した。

その夜は遥佑にとっての至福の時となった。
いつまでも続くと思った。
幸せという言葉は自分を例えている気がしていた。
金、女、人生が思い通りに進む。
自分が意図するもの全てを手にした。
命も永遠にあると思っていた。
不老不死だと思い込んだ。

それが、あの日人間ドックで針の穴が開いた。








「悪性腫瘍のようです。摘出が必要です。」

医者は嫌いだ。
言葉に人間の情というものを感じない。
無機質に症状を報告し挙句の果てには手術するという。
まるで手術をすれば責任が回避されるかのように。

「然し、私には大切な仕事があります。沢山の従業員を路頭に迷わすわけには行きません。」

遥佑の邪心が彼に囁く。

「嘘を言うな。お前仕事全然してないだろう。金に物を言わせて、できる人間を雇いそれに甘えてるだけだろう。入院して看護師と毎晩やっちまえ。」

魔の囁きはあっという間に彼を飲み込んだ。

「和丘さん、身体あっての人生ですよ。少し休んでまた始めればいい。」

医者はいい、休暇を取ろうと首になろうと世の中に病気がある限り向こうから客が来る。

「クソみたいな医者だ。」

そう心のなかで呟いたが「まぁ、看護師とシケ込むのもいい。」と入院を承諾した。




入院の準備に一日を要した。
下着、パジャマ、ガウン、コンドーム。
面白半分に女性用の大人の玩具も購入した。
荷物運びを社員にさせ2倍の日当を払った。

入院初日から遥佑は運に恵まれた。
担当の看護師が自分の好みだったのと同時に少々の淫乱さがある。
その夜にセックスができた。
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