(一)

文字数 457文字

朝、登校すると、クラスの僕の机の上には一輪の花がささった花瓶が置かれていた。
 僕はそれが何を意味しているのか、わからずに、席の前に突っ立っていた。
「なんだ富山、生きてんじゃん」
 クラスメートの高崎翔太がそう言った。そして葬送行進曲のワンフレーズを大声で口ずさんだ。
 クラス中のみんなが大声で笑った。
 「そういうことするの、止めなよ」「かわいそうよ」などと言う女子生徒もいたが、ほとんど全てのクラスメートが、僕の席を包囲して、僕がどう行動するのか、注視していた。
 教室の前の扉が開き、先生が入ってきた。
 クラスメートが一斉に着席した。
 僕は動けなかった。
 それを見た先生は「富山も席に着け」といった。
 先生は教壇のところから歩いて僕の席までやってきた。「またお前らこんなことして」といいながら、僕の机の上の花瓶を持ち上げて、教壇の脇にある教卓に置いた。
「つまんねーの」
 高崎が言った。
「どうせこのクラスにいなくたって別に問題ねーじゃん」
 高崎が付け加えた。
 クラスが笑いに包まれた。
 担任の先生も笑っていた。

(続く)
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