猫とのコミュニケーション研究

文字数 2,157文字



 長く猫と暮らしていると無言で猫と会話ができるようになってきた。テレパシーとかではなく普通に会話である。私は動物同士のコミュニケーションを体得しつつあるかもしれない。思えば子供の頃から動物と会話ができればいいのにと願い続けていたけれど…ペットの言葉が分かる翻訳機のようなものを使わずに会得できるとは予想外。

 普段のコミュニケーションでは私は飼い猫に話しかけるとき、家族に話すのと同じように話しかける。彼女(雌猫なので)は大体の会話は理解していますよという態度でニャアとか返事をしてくれる。禁止されて嫌々のニャア、おやつが欲しい催促のニャア、かまってくれよのニャア…などその都度、感情のこもった鳴き声を返してくれる。どうやら単語はいくつか理解していて、自分の名前も把握している。内容がすべて解っているわけでは無いみたいで声の調子や音の高低、速度などで嫌なことを言っているだとか、悪口を言っているとか、褒めてくれている、愛情をかけてくれているなどを感じ取っているようにみえる。
猫同士での会話はけして鳴いたりはしない。ケンカをするとき、怒っているとき、諌めるときなどに鳴くようだ。しかし、飼い主は耳も鼻もよくないしずっと背が高いので鳴かないと気付いてもらえないため、よく鳴くようになる子が多いようだ。
 猫が部屋に見当たらない時、名前を呼んで探すけれどうんともすんとも返事をしない。高い棚の上から片目だけ開けてこちらを見ていたりする。何故返事をしないのだろうと考えてみた。面倒なのだろうか?そっとして置いて欲しいのだろうか?手を差し出すと、満更でもなさそうにゴロゴロと喉を鳴らす。猫同士でも相手を探して鳴いているときはあるけれど、返事をしているのは見たことが無い。仲が良くて気乗りすれば返事をするのだろうか。小さい子猫の場合は親に呼ばれて鳴いて場所を知らせるけれど、ただじっと佇み、探していた相手も気配を感じてはっと見つけるのだ。
 人も視線や気配を感じて目が合ったりすることがある。動物はその感覚が人間より鋭いのかも知れない。もしくは匂いや微かな音を感じ取れるから、返事をする必要が無いのかも知れない。だとすると、納得できる。もしかして彼女たちは「なぜそんなに呼ぶの?匂いでわかるでしょう?」と思って返事をしないのなら飼い主の悲しみも浅く済む。

 さて、声の他に会話をする方法があることは最近知られている。アイコンタクトである。ゆっくり瞬きをすることが「敵意はありませんよ」「大好きですよ」という意味だそう。ゆっくり目を瞑っていられるほど安心していますよってことのようだ。理にかなっている。なんとなく「OK、何も持ってないぜ」と両手をあげて丸腰アピールで寄ってくるアメリカ人を連想させる。野生では一瞬の余所見や瞬きが命取りなのだ。
 ということは、他にも目で伝えている情報があるはず。しぐさをよくよく観察してシチュエーションと関連させて動作の意味を探ってみた。

 まずは、じっと目を見つめて逸らさない時。これは遊びに誘う時や、強い問いかけのときに使っている。目を見開いているときは「え、それどうしたの?」であり、静かに圧をかけるようなのは「ねぇ、待ってるんだけど遊ばないの?」とか「ごはん、欲しいんだけど」と、トンネルの前でだったりエサの器の前で訴える。他にも意味があって、それはケンカをしかけるとき。そのときはもっとマジな目をしてます。野生では視線を合わせて逸らさないというのはケンカを売っているという状態。「やんのかコラ」「ああん?」ですね。
 次に困り目でしょぼしょぼさせているとき。これはどうも「お願いしますよ~」とか「どうにかしてくださいよ~」という意味らしい。
 どうも人間とさほど変わらないみたいだ。半眼で見てくるときは呆れているようすだし。他にもあるのだけど、それはまだ解明できていない…目の開け具合を微妙に調整して何か伝えているようなのだけど。まだまだ勉強不足です。
 あとは耳やひげ、しぐさが加わって猫のコミュニケーション方法となります。会話の最中にすいっと顔を横に向けるのは「なんだ、つまんない」とか「やだなー」とか「認めたくない」という意味っぽいです。耳は音のする方や対象物を指すとき、感情表現に使います。両手の代わりみたいなものです。

 それで先日できた会話らしい会話が、
ベランダをちらっと見てから私の方を凝視。(ベランダに出たいんだけど)
すると隣の部屋から母がベランダへ出る音が。
私はちらっとそちらを見て猫に向き直り少し目を細める。(お母さんが洗濯干すからちょっと待って)
片耳だけベランダの音のする方を指して目を少し見開く。(ほんと、お母さん来てるね)
そしてすぐにすっとベランダとは反対方向へ顔を背ける。(ちぇっ、つまんないの)

 これがなんだかナチュラルにスムーズに会話できた初めての会話。今まではヒアリング中心であまりこちらからは会話っぽく伝えられなかったんだけれど、この時はとても上手くいきました。今、通じ合ってた!という感じが過去一でした。
 どうでしょう?少し想像してたのと違いましたか?
テレパシーでも妄想でもない、普通の猫同士のコミュニケーション。もっと研究してたくさん会話できるようになりたいです。
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