no. 1~no. 10

文字数 904文字

no. 1 ひな形「蛾」

 譜面立てに、美しい蛾が一匹、翅を広げてとまっていた。「私を弾いてごらん」そう言われた気がして、僕はピアノの前に座り指を構えた。一方、お母さんは殺虫剤を構えていた。



no. 2 一行で

 譜面立てにとまった美しい蛾に「私を弾いてごらん」と言われ、ピアノに指を構えた僕の横で、お母さんは殺虫剤を構えた。



no. 3 日記の宿題

 ふめんを立てるやつに、きれいなガがとまっていて、これをひいたらどうなるのかなあと思ったので、ぼくがピアノのまえにすわったら、お母さんが、さっ虫ざいをもってきました。



no. 4 未来形

 譜面立てに、美しい蛾が一匹、翅を広げてとまるだろう。「お前は私を弾くだろう」そう言われた気がするだろう僕は、ピアノの前に座り指を構えるだろう。一方、お母さんは殺虫剤を構えるだろう。



no. 5 行分け

譜面立てに
美しい蛾が一匹
翅を広げて
とまっていた

「私を弾いてごらん」

そう言われた気がして
僕はピアノの前に座り
指を構えた

一方
お母さんは
殺虫剤を構えていた



no. 6 逆行

 お母さんは殺虫剤を構えていた。僕がピアノの前に座って、指を構えた時のことだ。僕は言われた気がしたのだ。「私を弾いてごらん」と、譜面立てにとまった美しい蛾に。



no. 7 シナリオ

 ピアノのある部屋。
 窓辺に置かれた譜面立てに、一匹の美しい蛾がとまっている。
 ドアが開き、少年が現れる。
 少年が蛾に気づく。

蛾「私を弾いてごらん」

 蛾は微笑む。
 少年は蛾を見つめたまま、ピアノの前に座り、指を構える。
 そこへ少年の母親がやってくる。手には殺虫剤。



no. 8 韻を踏む人

ドープな蛾がとまる譜面立て
風でかすかに揺れる翅
"ほら、私を弾いてごらん"
その声はライカ マーク・ボラン
俺は座ったピアノの前
こんな景色見たことがねぇ
突然背後から"Must You Die"
母ちゃん構える殺虫剤



no. 9 反抗期

 譜面立て。蛾。弾けよ。ピアノ。ババア。殺虫剤。



no. 10 RPG
が:わたしを ひいて ごらん。
  いいことが あるよ。

【ぼくは ぴあの のまえに すわった!】

ははおや:きゃー! が だ!
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