第4話(4)

エピソード文字数 1,321文字

 どう考えても、異世界からワープしてきた人。そんな彼は穏やかな笑みを浮かべ、こう言の葉を紡いだ。

「ボクはパンの会社を経営している者で、只今あらゆる場所で新商品の批評をして頂いているんです。この『揚げクリームパン』のお味見を、してくださいませんか?」
「断る」

 即、答。俺はコンマ一秒以下で拒否してやった。

「え、ええ? た、食べて感想を頂くだけなのですが……?」
「こら、法螺を吹くな。お前って、厚芽流シューシューだろ? 一服盛ってラーとミーをパクろうとしてる、コレクターなんだよな?」
「ち、違いますよっ。ボクは、そのような人間ではありません!」
「いーやそうだね。だってその作務衣に、『厚芽流パン』って刺繍があるもん」

 やり方が爽水とおんなじで、ピンときた。と皆様は思われたでしょうが、違うんです。
 このバカ、自分で身分を明かしてるんスよ。

「だ、男子さん、ボクは厚芽流パンの社員です。社長ではありませんよ」

 彼は否定をし、スッ。両手で、揚げクリームパンとやらを差し出してくる。

『お、それ旨そうだな。今度、知り合いのパン屋に作ってもらおう』

 そうですか。勝手にしてください。

「これには、『ベロリン茸』の粉末など混ぜていません。がぶっとやっちゃってください」
「………………。なー、社員さんよ」
「はい? なんでしょう?」
「俺は一回も、ベロリン茸の混入を疑っていないよ? どうしてそんなことを言いだしたの?」

 タラリ
 おっさんの額を、一粒の汗が流れた。

「ねー。どーしてなの?」
「…………ぼ、僕は、その、超能力者なんですっ。心を読める能力があるのですよ!」
「ほー。なら俺が今、どの数字を思ってるか当ててよ」

 ダラリ
 おっさんの額を、大量の汗が流れた。

「ほれ。当ててみ」
「…………………………………………5。だね?」
「ちげーよ。俺が思ってたのは、高知県にある国分川(こくぶがわ)だ」
「数字じゃない!? 僕を騙したな!!
「先に騙したのはお前だろ! 逆ギレするんじゃない!!

 コイツといいシズナといい、どうしてこういう状況で怒れるんだ。もっと常識を持て。

「あーうざい、マジでうざい。とっとと片付けますか」
「……君は、色紙君だったよね。その役目は、僕に任せてくれないかい?」

 軽くお仕置きして追い返そうとしていたら、花丘先輩が一歩前に出た。

「仲間を傷付けようとする者は、断じて許せない。二度と悪事を働けぬよう、セブンナイツ流のやり方で厳しく処したいんだ」
「ぁー…………それがどんな方法なのか存じてませんが、表情を見る限り怖い系ですよね? 自分はそういうのは苦手なんで、ここは優星流でやらせてくださいませ」

 俺は腰を折り曲げて断わりを入れ、高く右手を挙げる。そうすると物陰にいたレミア、シズナ、サクが現れた。

「皆の衆、件の刑を実行します。ちょいと先にある体育倉庫が開いてるから、思い切りやってくださいな」
「にゅむ」「了解よ」「仰せのままに」

 彼女達は厚芽流を拘束し、生徒に目撃されないように素早く連行。やがて、倉庫の扉がバタンと閉まったのだった。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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