第1話 真夏の夜の冒険

文字数 1,073文字

アラフィフのオッサン俺が高2だった夏の夜の話。

当時はエアコンが本体・電気代共に高価だった事から、今のように普及しておらず、まだまだ涼の取り方といえば、外気&扇風機が主流の時代。

その夜は熱帯夜で、あんまり暑かったから親友を誘って、小学校のプールに泳ぎに行った。

今では考えられない事だろうが、30年前は「セキュリティ?何それ美味しいの?」な世の中。

プールは学校裏手の住宅街へ続く道に面していて、大人の腰ぐらいの高さの塀と登りやすいフェンスしか無くて外から丸見え。

(今はちゃんと外から見えないように、2メートルはある目隠しで囲んであるよ)

オレと親友はその登りやすいフェンスを乗り越え、プールに侵入(今なら間違いなくALSOKが来る)

夜中だったから、騒ぐと裏手の住宅街から通報されちゃうし、目的は涼む事だから静か~に泳いでた。

当時、プールの水は水道代節約のため地下水を使用してあり、入れ替えの為に夜間は水が出しっぱなしだったから、冷たくてスッゲ気持ち良かった。

親友とプールのふちに並んで座って、足をプールに浸けて道側に背を向ける格好でボソボソと小声で話をしてると、背後から木綿のハンカチーフを引き裂くような野太い悲鳴と、何かを落としたガチャンて音と、バタバタと走り去る足音が…

「ヤベっ、見つかったぞ!」

オレと親友は急いで逃げた。

翌朝、夏休みのラジオ体操のハンコ係から帰ってきたじいちゃんが、

『ゆうべ小学校のプールでアベック(←当時はカップルをこう呼んだ)の幽霊を見たって、米屋のご主人が騒いでたぞ。
飲んだ帰りだったそうだし、酔ってて何か見間違えたんだろう』

と笑いながら言ってた。

当時のオレは髪が長く、親友はオレより10センチばかり背が高い。
薄暗い街灯の明かりで見るオレ達の後ろ姿は、カップルに見えたんだろうな。

米屋のおじさん、怖い思いをさせてごめんなさい。


ラジオ体操に来ていたガキ共や年寄り、ママさん達から噂はあっという間に広がり、肝試しに行くヤツらが出たんで、警備員が巡回するようになっちゃって、それからは小学校のプール忍び込めなくなっちまったんだよな…。



時は流れて30年後、この間近所のガキ共に聞いたら尾ヒレ羽ヒレが付いて、こんな話になってた。

『午前2時に学校のプールに行ってカップルの幽霊を見れたら、好きな人と両想いになれる』

……子供たち、すまない。

その幽霊カップル、片方はこの年まで独身、もう片方はバツ3で現在独身

どう考えても、そんなご利益は無い。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み