第15話

文字数 282文字

プレートから左足が外れ、大きく振りかぶった。腰のひねりとともに左足を高く上げ、鷹の爪のようにその左足を土にめりこませながら力をため、喉の奥から唸り声を上げ、全力で腕を振り下ろした――。

ピンチの中、僕が全身全霊で投げた一球は、それは父から教えてもらったスライダー。

いや、スライダーG7!

僕の手から離れ、空間を切り裂くようにキャッチャーミットへ向かっていったボールは、バッターの手前でぶんと音を立てて左に曲がり、近藤のバットが空を切った。

ミットに目をやると、真珠貝の中の真珠のように光るボールが見えた。そして、父の顔がいつまでも消えずに、声も耳から離れなかった。



終わり
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み