第3話 『転』

文字数 1,245文字

コウタロウは最初、自分の力ででどうにかロボットの身体を製造しようとした。けれど、失敗に終わった。

悩んだ彼は結局、話したこともないクラスメイトの力を借りることにした。
人に頼ることは大の苦手だったけれど、ロボットを作り出せれば、これから大学生卒業までの十数年間、学校に通わずに住むと思った彼は意を決して4人の同級生に声をかけた。

”イサム教授(彫刻、芸術)”
まずは彫刻や陶芸が趣味の少年、通称”イサム教授”。イサムは造形が得意なので、コウタロウは彼に『ボク2号』の計画を説明し、「ロボットの身体をつくってほしい」と頼んだ。イサムは二つ返事で了承したが、製造には大量の粘土や広い土地が必要だと伝えた。
そこでふたりは、クラスの中心人物で学校外にも伝手のある”チョウノ社長”に声をかけた。

”チョウノ社長(コミュニケーション、バイタリティ)”
体力もバイタリティもある元気で快活な少年、”チョウノ社長”は、『ボク2号』の提案を面白がった。
コウタロウとイサムに協力して粘土の調達や運搬に協力することにも了承した。
その代わりに、ロボットの名称を”ボク2号”から”ボクたち2号”に変更し、コウタロウだけでなく自分たちの身代わりロボットとしても使用できるよう、仕様変更をコウタロウに要求した。
コウタロウはしぶしぶながら、その申し出をのんだ。

”タテイシ巨匠(音楽、美術)”
コミュニケーションが得意なチョウノが粘土を大人たちから入手して運搬し、粘土を使ってロボットの身体作りをはじめた3人だったが、大きな問題が生じた。
それは、ロボットの声がうまく発声できないこと。
会話がスムーズに出来ないと、『ボクたち2号』としての役割をこなせないと考えた3人は、クラスで一番歌も楽器もうまい女子、”タテイシ巨匠”の協力をあおぐ。
現実主義でシニカルなタテイシは当初、男子3人の地に足のつかない『ボクたち2号』の計画を笑った。
しかし粘土で製作途中の実物を見て、『ボクたち2号』に芸術性を感じた彼女は、「自分が手伝わないとこの計画は絶対に成功しない」と考えを変える。
彼女は発声の仕組みや音階の繋がりをシステマチックにコウタロウに教え、ロボットは徐々に人間らしい発音を習得していく。

オリビア選手(運動)
ロボットが人間と遜色のない発声を取得したころ、粘土でのロボットの身体の製造も佳境を迎えた。
そこでロボットの身体を動かそうとすると、ロボットの関節が上手く動かないことに気づいた。
コウタロウは『ボクたち2号』に発声を習得させたときと同じく、人間らしい動きをプログラムで記憶させようとする。
そして彼らは、クラスメイトのなかで最も人間の動きを理解している者として、運動部でエースの活発で朗らかな女子・”オリビア”
に協力を依頼する。
「楽しそうな放課後活動だね」と彼女は了承し、彼女が運動する様子をプログラムに記憶させていった。

5人がそれぞれに長所を発揮することで、『ボクたち2号』は徐々に形づくられていき、ついに小学校の卒業前に完成のときを迎えた。
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