詩小説『失恋電池』3分の淡い恋。懐かしむ人へ。

エピソード文字数 869文字

失恋電池

部屋の片隅に、転がる電池。
テーブルの上、転がる電池。

触れたらひんやりと冷たくて、
手の平転がせばつるつるとした感触で。

上から見れば丸くて、
横からみたら筒形で、

あの日と変わらないはずの電池。
なんら変わらないはずの電池。

あなたのと、私のと、
ふたつ並べて、電源押した。
赤いランプは灯り、動きだした恋。

プラスとマイナスは、逆さに並べ、
動きだす恋だから。

マイナスを補いながら、
プラスを分けてくれながら。

色んな景色を映し出したリモコン。

暗闇を照らすように懐中電灯。

なりはじめる音楽はステレオ。

恋は輝いた、取り替えた電球。

あの日と変わらないはずの電池。
なんら変わらないはずの電池。

あなたのと、私のと、
並べた電池。

動き続ける恋は熱くなっていた。
あなたのも、私のも、
熱くなっていた。

時に軋むように激しく。
時にショートしそうに虚しく。
それでも灯りは絶やさないでいた。

プラスを並べても灯りは灯らない。
マイナスを並べても灯りは灯らない。
そんな恋だから。

灯りは絶やさないでいて。

あの日と変わらないはずの電池。
なんら変わらないはずの電池。

あなたのも、私のも、
なんだか弱々しくて。

チャンネルも変えづらくなったリモコン。

途切れ途切れに流れるラジオ。

ちかちかと今にも消えそうに懐中電灯。

温めきれない電気ストーブ。

今にも消えそうな恋。ほこりかぶる電球。

あの日と変わらないはずの電池。
なんら変わらないはずの電池。

私のと、あなたのと、
並べて、電源押してみるが、

動き出さなくなった恋。
静かに灯すのをやめた恋。

この恋は消耗品だと気づいたの。

バネから取り外して、
あなたのと、私のは、
離れ離れに転がっていった。

充電の術も知らない幼き恋。

部屋の片隅に、転がる電池。
テーブルの上、転がる電池。

あの日と変わらないはずの電池。
なんら変わらないはずの電池。

電池切れの恋。
もう動くことはない、恋は押し入れに。
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登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

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