京都大学推理小説研究会『法廷遊戯』座談会
文字数 1,986文字
それでは『法廷遊戯』の座談会始めていきましょう。個人的には非常に面白く読んだものの、真相の部分とキャラクターの部分で賛否の分かれそうな作品だなと思ったのでその辺りを語り合えたらいいなと思います。とりあえず順番に感想を聞いていく形で回していきましょう。じゃあ、T君から。率直に言ってどうだった?
日常の謎……というとちょっと語弊がありますが、身近な事件から大きな事件へと発展していくのもまた青春感が出ていて好きですね。青春ミステリーってキャラクターが大事だと思うんですが、特にサクがめちゃくちゃいい。
あのラストは客観的に見るとちょっとどうかなと……何か大事なことを忘れていないか?って感じ。でも一つ一つの事件に意外性がちゃんとあって読んでる途中は結構楽しかった。とは言いつつもどっちかというと根幹の事件よりは枝葉のエピソードの方が印象に残っているし、キャラクターも魅力に感じたのはある。そういう意味では法廷ミステリーというよりも青春ミステリーの方が前面に出てるなぁって印象だった。
いやぁ、僕はこれかなり好きですね。僕は読了時に感触がよかった方なので、あばたもえくぼなのかもしれませんが、でも読んでてずっと楽しかったのは間違いないですね。一つ一つのエピソードがやっぱ骨太なんですよね。全部のエピソードが大事にされていて。それで言うと権田のエピソードとかもめちゃくちゃ好きで。
ですね。それが色々と結びついて結末へ向かっていくので、最後のページを読んでる時は手が震えてました。それに最終的なところまで法律の知識が絡んでくるのに丁寧な話運びのおかげで後出し感が全然ないのもすごいです。法廷ミステリーとしても成功していたなって。
――と、こうして話は尽きぬままミステリ研の夜は更けていく。