第46話  遠方組の集まり 4

エピソード文字数 4,446文字


 ※



 そこからゲームに没頭する遠方組は、ガンシューティングに夢中になった。

 ここは俺と染谷くんとまさかの白竹さんがメインで、聖奈と魔樹は後ろでの観戦となった。



染谷くん白竹さん。ボスお願いっ!


俺が弾を叩き落す。

おっけ~~! 任せた!
あひ。ずば。ずばばばばっ!

 いや~~。こういうゲームを人とやるのって楽しい。


 いつも凛としかやった事がないだけに、新鮮すぎる。

魔樹もやれよ。
僕、そーいうの苦手なんだよ
ねぇねぇ魔樹。今度はみんなで一緒にアレやろ~~よ。

 白竹さんが指差すのは、ガンシューティングだが、ゾンビっぽい感じのヤツだな。


 そーいうの好きっすね。白竹さん。

いいじゃない。魔樹もやりなさいよ。


あ。これ四人まで出来るの? 私もやろっ!

(えぇ~~? 私。ゾンビとか大嫌いなのにぃ!)

いいねっ! じゃあみんなでやろう!


黒澤くんと僕は、順番こでやろうよ

だね。みんなでゾンビを蹴散らしましょうか。

 聖奈。白竹さん。魔樹。染谷くんがゲームを始めると、俺は観戦側に回る。


 みんながやってる場面を眺めてるだけでも、満足しちまう。

ああっもう! こういうのヘタクソなんだって!

 まるで女のようないい訳を放つ魔樹だった。


 とは言うものの、結構上手いぞ。普通にゾンビの頭ブチ抜いてるが……


 魔樹。お前って……ゾンビとかそういうホラーが苦手なのか?


 血がドバっと出たシーンだけ。目が白目になってるし。


 

(何が楽しいのよ! もう~~!)
 青ざめる魔樹とは正反対なのは、白竹さんである。

ズババババっ!

あはっ! 頭ぶっしゃーしまくってましっ!

 あの白竹さんが活き活きしてるだと? しかもゾンビの頭部を狙うのが上手いし、回避もうめー! 


 普段クネクネしてるから、上半身だけの動きが俊敏だぞ!

白竹さん。上手いですねぇ
なんでそんなに上手いのよ。

わたひはショットガンを持つとすんごい強くなれる。かも。あはっ!


聖奈ちゃんをお守りしまする!

 だけど俺は知っている。


 ぶっちゃけ。みんなを守ってサポートしてるのは染谷くんだ。

  

 そしてそれを口に出さない。

 

 彼のこういう部分がやたら好感もてるんだよなぁ~


黒澤っ! ちょっと代わってよ!
……分かったよ。

 泣きが入った魔樹に救いの手を差し伸べる。


 俺に頭を下げるほど、こういうゲームはダメなんだろうな。

 それでもお前。結構上手かったと思うぞ。




 ※


 さて。このゲーセンにあるガンシューティングゲームを全クリした遠方組は、ここでゲーセンを後にすると、その隣にある喫茶店へと入ってゆくのだった。





結構混んでるわね。二人と三人で分かれちゃうけどどうする?

 遠方組は分裂して座る事になる。

 聖奈や白竹さんと、男組の三人が少し離れた位置となった。

まぁいいんじゃないかな
だね。男同士。女同士で良いと思う
俺と染谷くんはさほど気にしていなかったが、魔樹もそれを聞いて「そうだね」と小さな声を出した。
魔樹。聖奈に任せときゃ大丈夫だよ

 きっと白竹さんは……

 聖奈と喋りたい気がするんだよな。

そうだね。女の子同士だし、仲良くしたいというのなら、まず彼女からと言うのが無難だと思う


 良い事言うね。流石染谷くん。俺と同じ読みだったか。

 すると魔樹も暫く間をおいてから頷いた。



 俺だって白竹さんの立場なら、そうするだろう。

 魔樹はともかく、俺や染谷くんから仲良くするのはきっとハードルが高いような気がするんだよ。




 などと、白竹さんの心境になって考えていると、向こうのテーブルから聖奈の笑い声と共に、白竹さんの笑顔が見える。

 

 ほら。めっちゃ楽しそうな顔してるし、あれはあれでいいだろう。

 そう思っていると――

で、黒澤くんさ、何で美神さんと付き合わないの?
はい?

 笑顔を見せる染谷くんに、縦線を生やす俺だった。


 俺の横に座る魔樹も疑問そうな顔を見せてくる。

 だが今しがた店員が持って来たショートケーキに、僅かながらに気を取られたのは見逃さなかった。

いやあの、マジで聖奈とはそんな関係じゃなくて

その割にはどちらも、認めてるって感じだし、普通に付き合ってます。って言っても違和感無いけどね

 あぁ……染谷くんにはそう映るのだろうか。


 確かに、あいつなら信用できるとか、任せとけばいい。とか言ってるし……傍から見るとそう見えるのだろうな。

僕もさ、前までそう思ってたけど……
あっという間にケーキを食べてしまった魔樹は、丁寧に口元を拭うと、こんな事を言いやがる。
黒澤には美神さんは勿体無い気がしてきた。彼女が可哀想だね
は?
だってさ、あんなに美人だし、運動神経もいいし、頭も良いんだろう? しかもお金持ちって聞いたし、優しいしさ、非の打ち所が無い彼女が……なんで黒澤に? って思うんだけど

 ははっ。急にまくし立てる魔樹に反論できん。 

 こいつ。思いっきり直球できやがった。


 しかも、染谷くんもこちらを含み笑いで見てるし。

 などと状況を語っている間に魔樹はもう一つショートケーキを頼んでいた。

そうだな。聖奈はマジで凄いと思うし、俺には勿体ねーよ。

こうやって一緒に遊べるだけで、ラッキーなのかもしれん

(え? その気はないわけ?)
(そう返してくるとは、思わなかったな)

 魔樹は染谷くんと目を合わせるなり、ハテナマークを召喚していた。



 どちらも俺の魔球を受け取れなかったらしい。

 というか、大暴投並みのクソボールだったか?


 しょうがないので、聖奈の話をするか。

仲は良いと思う。だけどさ、そういう関係じゃないんだよ。

前にも言ったけど、五年ぶりに再会してから、あいつの変貌振りに今でも戸惑ってるんだから

 ここで一応、昔の聖奈と俺の関係をやんわり教えると、二人とも納得してくれたようだ。


 その時の名残もあり、俺がこんな口調で喋っちまうから、やたら仲良く見えるんじゃないか? 


 そう説明すると、二人ともうんうんと納得していた。

あいつはとてもいい奴だ。断言するよ

 あれ? 二人とも固まらないでくれよ。

 本気で言ったつもりなんだけど。

ねぇ黒澤くん。そこまで言っておいて……彼女に何とも思ってないの?

え? 何を?
あ、いや。いい。ごめん

 俺の顔色を伺ってから染谷くんは「分かった」と言うと、ちらっと魔樹の方を見る。


 え? 俺変な事言ったか?

何か。黒澤くんって面白いよね
ええ~~? 何で? 染谷くん!

 待ってくれ。今の「面白い」っていうのは、いただけないんだけど


 しかも魔樹まで含み笑いを見せる始末。その様子が我慢ならなかったので、こっちから反撃する。

じゃあ魔樹はどうなの? 聖奈にそこまでベタ褒めするんだったら、お前こそ狙ってみればどうなんだよ

 更に変顔になる二人。この時二人が何を考えているのか分かるはずも無かった。


ふえっ?


 それよりも魔樹の裏返った声に気を取られてしまう。

ふ、ふははっ。何だお前その顔は

 こいつ……すげー顔芸持ってやがる。


 勿論、俺の魔球が変な場所に刺さったのか、予想もしないような顔に変化した魔樹に、染谷くんまで笑ってしまった。

ぼ、僕はそんな……そういうつもりは無いからっ!
(何言い出すのよもうっ! 私は女なんですっ!)

 たまにこいつって、女のような否定の仕方するよな?


 白竹さんを守り、ガーディアンとなるあいつと同一人物とは思えない時が多々ありすぎて困る。。

そうだぜ魔樹。黒澤くんがこう言ってるんだ。


別にお前が美神さんを狙う可能性だってゼロじゃないからな

そうなれば。俺としてはすっげーありがたいんだけど
ええっ?
おいおい。そんな焦んなって! 青ざめすぎだっつーの。

そ、それはない! あるはず無いよ。


っていうか……染谷だっていつ告白するんだよっ!

え? 何の話?
こらっ魔樹! その話はやめてくれ!

 今度は染谷くんが焦る番になると、魔樹が悪魔のような顔に変貌してしまう。


 完全に部外者だと思った俺はすかさず「何の話?」と突っ込んだ。

ち、違うんだ。そーいう話じゃなくてさ、こいつが勝手に言ってるだけでね

 あ、一目惚れって話かな? 前に言ってたよな。 

 そういえばどうなったのだろうか?

くくっ……
てめぇ魔樹。こんの野郎……

 余裕綽々の魔樹に、顔は笑っていない染谷くん


 しかし俺の顔を見るなり、引きつり笑いを見せるのだった。

 そして染谷くんの出した答えは……

正直いうと実はさ……その人に対して僕は何もしてないんだ。


ただ見てるだけで精一杯だよ。しかも……ちょっとヘコみ中だし

すぐに「何で?」と魔樹が返す。


すると、さっきよりも落ち込んだ染谷くんは、しどろもどろに続けた。

なんつーか。その人。格が違うっていうか……俺如きが釣り合うレベルじゃねー気がしてきてさ……


じゃなくって! この話もう終わり!

 強引に締める染谷くんだった。これには魔樹もふふっと笑うが「分かったよ」と納得するのだった。


 納得できないのは俺だけだったが、その染谷くんは妙に影がある感じがしたので、それ以上は突っ込まなかった。



 格が違う。か……


 染谷くんも相当男前だと思うし、性格も良いのにな。

 そんな彼が一目置く彼女とは一体どんな人なのだろうか。


でさ、前から気になってたんだけど。

魔樹。お前ってさ、キャラ変わりすぎだろ。


クネクネしてて女みたいな時もあれば、今日みてーに意地悪いキャラになったりするし。

 おお、染谷くんが俺の気になる質問を!


 対して魔樹は……

 妙に落ち着いててケーキを一口食べてから、口を丁寧に拭いてから……

僕ってさ……二重人格なんだよね

 そういいつつドヤってる魔樹に、俺と染谷くんは言葉を失った。


 確かに。今までの経緯を知る人間にとっちゃ、二重人格って答えが一番無難なのかもしれないけどさ、何でそんな誇らしげなの?

ふははっ! ハッキリ言う奴だなおい。これ以上突っ込めねーだろ。

まぁ。気分によるんだけど。

そーいう時の僕も、今の僕も、どっちも一緒なのさ。


あ、あともう一つケーキ頼んでいい?

ああいいぜ。いくらでも食べろよ。
ありがと。遠慮なく食べさせてもらうよ

 お前。これで四つ目だろ? いくら食べるんだよ。

 

 まぁでも、クールな表情で美味しそうに食べるからそれでいいと思う。

だけどお前も面白いキャラしてるよな。


乙女ゲーのキャラソン歌ったり、ケーキ食いまくったり。

極めつけは二重人格だって自分で言ってる点だな。

くくっ。どうせ本当の事なんて分かりはしない。

魔樹という人間は、他人にどう思われようと構わないのだから。

うんうん。でも何だか……ケーキ食ってるの見てると、可愛く見えてくる不思議
もうっ! あんまり見ないでよ!
ふはっ! 急に女みてーな声を出すなよ! 

 こんな調子で魔樹弄りが繰り返されたが、本人もたまに笑ってるのでこれでいいと思った。


 知れば知るほど謎キャラになってゆく魔樹だったが、この話し合いで分かった事は……




 魔樹がドヤってる顔になると、なぜか可愛く思えてしまうという事だった。

  スマホで確認すると、もう五時前。


 そろそろ遠方組の集まりもこれでお開きになるのだろう。

 

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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