第１話

ふん！こんなもの、どこがおいしいんだか。
流れ出る涙をぬぐいもせず、翠は一人缶ビールを飲む。
あの、自販機、私を20歳以上だと判断するなんて、アホね。
そして、失恋したら、やけ酒なんて発想、私もアホね。

あまりにもよくある話で、笑っちゃうよ。
でも、ほんとーに、好きだったんだから！！

高校2年、秋。
何度目かわからない失恋で、
（実は、知っている。9回目だ。）
翠は、打ちのめされ、初めてのビールに手を出している。

大変だ。
世界が回りだした。
振り落とされる。
いやだー！！


ひとり目は、目玉がくりくり可愛いいあいとくん。
漢字は、しらない！！まだ、幼稚園行ってなかったから。
「すき！！」っていったら、「ぼくはきらい！！」って､あっというまにふられた。

ふたり目は、ちょっと不良ぽくって、いつもしかられていたいちろうくん。
ようちえんのボスで、かっこよかったんだけど、
「およめさんにして」っていったら、「１３にんめでいい？」っていうから、
「それは、いや！！」って、おことわりした。

さんにん目は…。もうやめよう。

うん、これはもう寝るしかない。
ちきゅうよ、さよならー！！
また逢う日まで。
（きっと、明日の朝に、また逢うのさ。）

お・や・す・み！