第3話(15)

エピソード文字数 3,748文字

 呪文は、壁起動、ではない。では、なにが違ってるんだ?

「『よ』と『!』の間に、小さい『つ』が入るがやったがよ。正解は、壁起動ぜよっ! ながよね」
「呪文シビアっ! 細けぇよ!」

 っ、くらいいいじゃん。お前は合言葉で開く宝物庫の扉か。

「『金硬防壁』は、何かと難しー奥義(おーぎ)で有名(ゆーめー)なんだよーっ。ゆーせー君、温かい目で見てあげてー」
「難しいといえば、『チェンジ・マナ』だってそうだったぞおい。有効距離1センチの技なんて使えませんぞ」

 その間合いに入れる体術があれば、そっちで成敗してる。これは、刺せば相手を一撃で殺せる爪楊枝を貰ったようなモノだ。

「にゅ、にゅむっ。そ、それは置いておいて、『金硬防壁』を出してみよーよっ。み、みみみ見てみたいなーっ」

 レミアは汗をダラダラ流し、強引に話頭を転じる。
 これ以上追及すると、イジメみたいになっちゃうからなぁ。そうしましょう。

「ふむ。周りに、人はいないな」
「もう従兄くん。私達がいるじゃないの」
「うるせぇ! この『人』は一般市民だ――しまっ」
「ぁふんっ。かい、かん……!」

 また、罠に嵌ってしまった。以後は、ツッコミにも注意しないといけないな。

「はぁ。変態さんも、置いといて。やるぞ……………………壁起動ぜよっ!」
「優星が唱えると彼を金色の光が薄く包み、静かに金色(こんじき)の光は消えた。一見すると何もないように感じるが、彼はもう『金硬防壁』に護られているのである」

 描写するな! って怒られ待ちのバカは、ガン無視。手足を振って、感触を確かめてみましょう。

「ほー、シールドがある感覚は全くないな。普段とおんなじだ」
「でも師匠、防御力先生はピカイチぜよ。体感して欲しいがやけど、自分から『戦場空間』を出せんがよねぇ」
「その1回が原因で壊れたら大変だもんね。体感は、次の襲撃の時でいいよ――」
「貴様ら、よくも我が弟を殺したな……! ゆるさねぇぞ……!!

 突如空間が展開され、角族の復讐者が舞い降りた。

「殺してやる……! 一人残らず、殺してやるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
「やかましい自業自得なんだよ!! 逆恨みなんだよ!! シズナぁ返り討ちにしてやれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!
「ぎああああああああああああああああ!?

 こうして、傍迷惑な誰かの兄貴は消滅。非常にイラッとしたけど、『戦場空間』を乗っ取れたということでよしとしよう。
 ……ホントはこの程度では『よし』にならないけど、よしとしよう。何かプラスを見つけないと、やってけそうにないんだもの……。

「はぁー、とにかくこれで体験できるようになった。フュル、よろです」
「御意ぜよ。一発撃ってみるき、感じてや!」

 フュルは例の杖を登場させ、「黄(き)の粛清(しゅくせい)っ」と発する。そうしたら空を分厚い黒雲が覆い、ピカッ。頭上では夥しい数の稲妻が駆け回り、その雷が集まって巨大なハンマーになった。

「師匠、よく見て欲しいが。あれは、初代の魔法使い先生が……えーと……。『マネキン族』って侵略者先生が創った、身長100メートルのマネキンを倒した鎚ながよ」
「侵略者が創った、100メートルのマネキンを倒した!? そんなのを喰らって平気なのか――ぎゃぁぁぁぁぁ!!

 ハンマー、俺目掛け降ってくるっ。ものすんごい勢いで降ってくるっ!

「これアウトっ、超アウト!! バリアー耐えられないって――Д」

 ついに、ハンマー直撃。俺の頭部にヒットした瞬間ドデカい稲妻が迸り、黄色に視界を奪われてしまう。

「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅっ!! 眩しいっ!?
「そればっかりは、シールド先生でも防げんきねぇ。でも痛みはもちろん、衝撃すらないろ?」
「……そう、だね。平気だ」

 視覚を絶っているので何が起きているのかは不明だが、爆発音が耳を劈いているのに何ともない。『金硬防壁』の力は、本物のようだ。

「はい、『黄の粛清』は終わったぜよ。目を開けてみてや」
「お、おぅ。やたら音が激しかったが、どんなになって――あわわわわわわわわ……!!

 近くには建物が沢山あったのに、見渡す限り何もない。どこもかしこも綺麗さっぱりなくなっており、荒野となってます。

「あの魔法先生は、半径一キロ内にある存在を全て破壊するがよ。これでも下級魔法ながやけどねぇ」
「下級でこれ!? 中級になるとどうなるのさ!」
「中級魔法になると、そうね。惑星を破壊できるわ」
「上級(じょーきゅー)だったら、次元を壊せたよねっ。魔法(まほー)ってすごいよー」

 そんなことを、服さえも汚れていないレミア達が仰っている。

「アンタら、その中を無傷て……。どうやったの?」
「あたしたちは、魔力をぶつけて相殺(そーさい)したんだよー。中級(ちゅーきゅー)までなら、この方法(ほーほー)で凌げるんだー」

 この人達って、惑星をぶっ壊せる攻撃まではバリアーなしで防げるのかよ……。こりゃあ全次元の兵器を総動員しても、英雄さんを倒せないな。

「こんな方々が傍にいたら、敵が何億いても心配要らないね。こういう時は、ホント助かるよ」
「何億? 師匠、数が増えてないかえ?」
「そうなんだよ。さっきね――」

 ~説明中~ ~説明中~
 レミアみたいに、自分なりではなく。客観的な感覚でパパパッと、狙う相手が激増した件を伝えた。

「しもうたぜよ! 配慮が裏目に出たぜよ……!」
「アナタ達なら瞬殺できるんで、別に構わないよ。ただ問題は、いつになったらバトルが終わるかなんだよなぁ」

 29日後には、本格的に学校が始まる。そうなると当然週5で学び舎にいないといけないので、護衛してもらい難くなるんだよねぇ。

「なんとか、今月中に片を付けたい。が、それは不可能だよね?」
「にゅむ……。そんなに多(おー)かったら、1ヶ月さんでは終わりませんー……」
「言葉を送れる魔法で『奪おうとしたヤツらは全滅させた。何度やっても無駄だぞ』と忠告しても、来る一族は来るでしょうからね。仮に、一日一種族が全員押し寄せたとして計算しても…………十数年はかかるわ」
「そうやにゃぁ。シズナ先生が『遠見』でチェックした次元だけでも、攻撃的な種族先生は3500近くいたらしいきね」

 ですよねー。全次元から狙われてるんだから、そうなりますよねー。

「それだとあまりにも期間が長くて、学校はともかく母さんを遠ざけておけない。何か、せめて高校を出るまでに済む手はないかな?」
「敵意がない人先生も犠牲になるけど、惑星ごと破壊しまくったら可能性やにゃぁ。勝先生、革新の罪はワシが背負うぜよ!」
「フュル、そいつは何かと混ざってる。坂本龍馬は、そんな発言してない」

 今の、他の場所では口にするなよ? 龍馬ファンにボッコボコにされるから。

「それに無関係者さんは殺せないし、キミに罪は背負わせない。たとえ時間を短縮できるとしても、だ」
「師匠……! なんとお優しいがぜよ……!」
「にゅむぅ……っ。涙がポロポロ落ちるーっ」
「従兄くんは、とことん優しい人よね。ぶれない所が素敵だわ」

 魔王勇者魔法使いが、感動してる。……なんでコイツらは、当たり前の台詞で好感度を上げられるんだろう。甚だ疑問である。

「にゅむむむー。こんなゆーせー君のタメに、なんとかしてあげたいよーっ」
「そうよね。全く別の角度から、解決出来ないかしら?」
「四人寄れば文殊の知恵ぜよっ。拠点に戻って、思案しよう――ありゃ?」

 明らかに、上手くいかなそうなことを仰っていたらだ。レミア、フュル、シズナの前に、それぞれ1枚の封筒が出現した。

「誰かが、魔法か魔術でよこしたらしいね。それ、国に戻ってきてくださいって手紙?」
「そうではないの。これは――これだわっ!」

 シズナは、パンと柏手を打った。

「にゅむ?」「シズナ先生?」
「二人とも、耳を貸して。ごにょごにょごにょごにょ……」

 3人で、ヒソヒソ話。やがてそのヒソヒソタイムが終わると、レミアとフュルから歓声があがった。

「にゅむっ! にゅむむ! にゅむーっ!」
「夜明けぜよ! 日本の夜明けぜよ!!

 ヘンだなぁ。2人は日本語を喋ってるのに、片鱗すら把握できないよ。

「3バカさん。細説してください」
「今は、その時じゃないの。きっと、明日にはお話出来るわ」
「師匠、時が来るまで待ってや。勝先生、泣かぬなら泣くまで待とうホトトギスぜよ!」

 だーかーらー、混ざってるってば。それは、徳川家康さんを表す俳句だからね?

「ゆーせー君、時期がくればお伝えするよー。あたしたちのせーで全然ネムネムできてないから、帰って休もーよっ」
「この場で言えないんなら、そうするしかないね。我が家に戻りますか」

 ここに居ても進展しないので、一同帰宅。その後俺は早めに晩御飯を食べ、3人に監視を任せて朝までネムネムしたのであった。
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登場人物紹介

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

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