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エピソード文字数 585文字

 バサバサと羽音がし、思わず身を竦める。ポケットの携帯は当然圏外だ。

「一体、今、何時なんだよ」

 寒くて凍える体。
 夜道を歩くことを断念し、取り敢えず木の根元に蹲り寒さを凌いだ。

 遠くから……
 動物が走る音がした。
 地面を力強く蹴る音だ。

 あたしは思わず木の陰に身を潜める。
 ヒヒーンと馬の鳴き声がし、パカパカと蹄の音が近付く。

 こんな深夜に乗馬……?
 まさか?

 数頭の馬が段々近づいてくる。
 馬の上には人影が見えた。

 一晩中、ここにいればあたしは凍死してしまうかも知れない。今、助けを求めなければ、こんな山奥で人に逢うこともないかも知れない。

 意を決して木陰から姿を現し、身を屈め様子をうかがう。

 近づく者達が、月華(げっか)雷竜会(らいりゅうかい)ではないことを祈った。

 馬の蹄が止まり、あたしを見下ろす男達。頭には髷を結い羽織袴を身につけ、刀を腰に差し馬の手綱を巧みに操る。

 テレビで見たことがある時代劇の侍のようにも見えた。

 ドラマか映画の撮影現場に迷い込んだのかな?

「名は何と申す?」

 馬に跨がりあたしを見下ろす男達。
 あたしは男をキッと見据え、首を左右に振る。

 撮影現場に立ち入ったことを(とが)めているに違いない。

 カメラや照明、撮影スタッフは一体どこに隠れているのだろう。
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登場人物紹介

斎藤紗紅(さいとうさく)16歳

レディース『黒紅連合』総長

 斎藤美濃(さいとうみの)17歳

紗紅の姉、家族想いの優等生

 織田信也(おだしんや)20歳

紗紅の交際相手

元暴走族

 織田信長(おだのぶなが)

戦国武将

明智光秀(あけちみつひで)

戦国武将

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