第1話

文字数 861文字

 ご多分に漏れず、山形県庄内町の人口減少は止まらない。
 その庄内町から消えたものの一つに、銀行の ATM がある。庄内町には3つの地方銀行の支店がある。そのそれぞれの支店の中にある ATM 以外には、庄内町には銀行の ATM は4カ所にしかない。
 以前には当院にも某地方銀行の ATM が設置され、患者サービスの向上に大いに貢献してくれていた。
 ところが地方銀行はこの超低金利政策の結果、どこも経営が厳しいらしい。まして人口が減少している地域だ。ATM の維持費との費用対効果の点から、当院の ATM はこの4月から撤退と相成った。
 病院から ATM が消えると寒々とする。中央だけでなく地方経済からも見放され、田舎、僻地(へきち)の病院の雰囲気が色濃く漂う。退院の会計の際に、わざわざタクシーに乗って ATM にお金をおろしに行かなければならない患者さんもいる。医師も学会費などの振り込みに、また単身赴任やひとり暮らしの職員は生活費をおろしに、休憩時間に病院を離れなくてはいけない。結局利用するのは、近隣のコンビニの ATM になる。こうして地方銀行は地元の顧客を失っていく。
 田舎で生活するということは、田舎の不便に慣れることなのだとしみじみ思う。
 社会基盤がやせ細り、不便になる庄内から若者がどんどんと減っていく。

 そして庄内から消えゆくもののもう一つに、ローカル線がある。
 山形県庄内町の余目(あまるめ)-新庄(しんじょう)間 43 ㎞ を(つな)ぐ最上川に沿って走る JR 陸羽西線だ。並走する国道のトンネル関連工事のため、2022年5月から2年間の予定で全線で営業休止、バス代替え輸送となった。営業休止から2ヶ月後、国主導の地方鉄道の存廃協議の対象路線に指定された。
 写真は晩秋の陸羽西線南野(みなみの)-余目間で、線路脇に熟した庄内柿と普通列車である。2015年11月3日に撮影した。

 列車のボケが少し強すぎた感があるが、線路脇に熟した庄内柿が誰にも採られずにいるところに、庄内の自然の豊かさを感じる。
 この風景は消えないで欲しい。

 んだの。
(2022年8月)

 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み