詩小説『抱いてしまえば良かった』3分の後悔。

エピソード文字数 488文字

卒業を間近に控え、残されたわずかな春休み。最後の時間は何気なく、そして僕等大人へと。

時代遅れのスーファミを口実に、退居前の小さなアパートで。

コントローラー握る横顔を、冗談めかして抱き締めてた。

軽くあしらうだけで、それを受け入れてた。

抱いてしまえば良かった。
毎日君はやってきた。

抱いてしまえば良かった。
笑い話にする自信はあった。

抱いてしまえば良かった。
頬に何度もキスをした。

抱いてしまえば、良かった。
後悔を連れては蘇る。

コントローラーを投げ捨てて、君はベッドへと倒れ込んだ。

僕は君の上からゆっくりと唇を近づけた。
見つめ合い、止まった時間。しばらくの沈黙。

そこから先は踏み込めず、思わず僕は固まって。君は帰るねと言って、この部屋を飛び出した。

ゲームオーバーの画面。

抱いてしまえば良かった。
髪の匂い、蘇る。

抱いてしまえば良かった。
ひんやりとしたうなじの感触。

抱いてしまえば良かった。
失うものなどなかったはずだった。

抱いてしまえば良かった。
台本も、巻き戻しもない世界で。

抱き締めた甘い感触は消え去った。
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登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

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