冗長な話

文字数 1,157文字

私事で申し訳ないが、自分は長いお話が苦手だ。
特に140字以上になるとてんでだめ。
昨今の教育を取り巻く環境がそうさせたのかもしれない。
とにかく、長い文章を読むことはとてつもないエネルギーを使うのだ。
だいいちに、言いたい事があるなら簡潔にまとめた方が分かりやすい。
わざわざ回りくどく、あれやこれやと装飾を入れる意味が分からない。
「枕詞」なんて特にわけが分からない。
突然の来客に「ご多忙な中、わざわざお越しいただいて…」なんて、嘘もいいところじゃないか。
こっちだって暇じゃあないんだ。来るときくらい来ると言えば良いのに。

おっと、ついつい愚痴っぽくなってしまった。
とにかく、自分は冗長でかったるい「お話」が特に嫌いなんだ。

これまた私事であるのだが、妻は小説を書いている。
なんでも「今日は何万字書いた」だのと自慢をしてくることだってある。
自分からしてみたら意味不明な話だ。
そんなにながったらしい「お話」を書いてなんになるというのだ。
誰がそんなに長い「お話」を読むんだ。

自分に教養が無いせいなのかもしれない。
なんせ自分は中学校から不登校で、本なんてまともに読んだことも無いほどの世間的に言う所の馬鹿だ。
そう思っていろんな本を買って読んでみたが、大体最初の数ページで読むのをやめてしまう。
とにかく苦痛で、なんのために読んでいるのか分からなくなってくる。
年末に役所に提出する書類の方がまだましだ。
あれは要件に対して説明が成り立っているから読む気も起きるし、どんなに長くたって自分に不利益になると思うと読まないわけにはいかない。

妻に「あなたにお勧めの本があるの」と言われた本だって結局「目次」しか読んでない。
目次を読んだだけで大体の内容は分かるし、全部読んだ所で儲かる訳でもないんだから目を通す必要も無い。

そんな事にも気づかずに小説を書いている妻は本当に愚かだ。
それどころか、この世の中には小説が溢れている。
毎日のように投稿される小説。
好き好んで長い文章を読む奴なんてこの世の中に存在するはずがないってのに。

気の利いた言い回しや、粋な文章なんて無くなってしまえば良いのに。
すべてが無駄だ。要件だけを伝え合う世の中になればどれだけ多くの効率化が図れる事か。
そんなことすら考えた事も無いのだろう。なんて愚かなのだろうか。



「いや、まてよ。気の利いた言い回しや冗長な語りが出来なくなったら満足するまで愚痴をこぼす事が出来なくなるのか。それは困る。
ながったらしい言い回しにすることで、おれの愚痴のリアリティと綿密に計算されつくしたことばから生まれる繊細なコントラストが…」

男は投稿ボタンに置いていたマウスカーソルを逸らし、パーソナルコンピュータを閉じた。
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