吞めども呑まれるな、です

文字数 1,132文字

 嗚呼、お酒が呑めない。

 何故かというと肝臓が悪いからである。不摂生が祟った結果である。

 介護職時代は結構呑んだ方である。あの頃に戻りたくないが、懐かしい時代でもある。深夜遅くに仕事の上司や先輩後輩と酒を呑むわ、呑むわ。
 今の時代からは考えられない常識である。上司から「私の酒が呑めないの?」と問い詰められることなど日常茶飯事であった。肝臓が悪くなってから酒を控えてしまい、結局酒から離れたのである。

 酒は百薬の長でもある。現代では色々欠点が指摘されているが、料理には欠かせない調味料でもある。
 私は料理する時、酒を使うのだ。味わいに深みが出るからである。
 全ての料理には合った酒が存在するのである。
 端的なものであれば寿司や天ぷらは日本の酒一択である。しっかりとした瓶で包まれ、その上で和紙に包装されたものがおすすめである。何故なら酒は紙で保存してしまうと紙の臭いが移るのである。だからこそ古くから酒造は基本瓶を使う。その瓶は一定の保温をしなくてはならない。だからこそ瓶の上に紙を包むのである。そうすると直射日光を浴びて酒の成分が変質せずにすむのである。
 葡萄酒も近しいものがある。葡萄酒は必ず地下に保存する慣わしがある。これは葡萄酒を保存するのに地下に温度が最適だからである。ちなみに葡萄酒は赤身の肉によく合う。牛肉に旨みを引き立たせるのである。古今東西の酒はそれらを寝かして古酒へと変貌させる術がある。だからこそ年代物の酒は旨みが深くなる。

 と言っても私はもう吞めなくなったので、うんちくを語るしか出来ないが。

 酒が苦手な方々には梅酒がおすすめである。梅酒は比較的健康志向の酒である。呑み過ぎなければ健康には然程影響はない。何よりしっかり造られた梅酒には生来の喉越しの良さがある。酒が苦手という方々にはおすすめである。

 この文章を書きながら久しく酒の味に想いを馳せる。

 嗚呼、呑みたくなる。けれど、健康上の理由で呑めないとは。

 人生はかくも儚い。

 酒と料理の組み合わせ程魔性の魅力はない。

 酒なぞ何が旨かろうかと問う方々へ。

 お酒の魅惑にはお気を付けください。呑んでも吞まれるな、です。いつしかあなた様がお酒の魅惑に憑りつかれた時の為にこの一文を残しておきます。

 後、特に上京したての方々には酒は要注意である。何というか良い仲間同士のお付き合いなら良いが、悪い付き合いになるとね。
 その場合は独り酒をおすすめである。家に帰って施錠してつまみと一緒にお酒を楽しむ。

 嗚呼、お酒……肝臓さえ無事ならなあ。かと言って禁酒すると今度は無性に甘いお菓子が欲しくなる。

 魅惑との闘いは永遠と続くのであった。

                            <完結>
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