国際結婚

文字数 808文字


 「結婚した」と周囲に報告すると、大抵の場合どこで出会ったのかと聞かれる。その度に彰は説明に困った。後に妻となる紗椰(さや)との出会いは、少々珍しいものだったからだ。語彙が乏しい彰が一言で説明しようとすると「国際結婚」になってしまうのだが、それだと色々と誤解を招くので、順を追って説明しなければならなかった。

 大学を卒業後、彰は地元の滋賀を離れ大阪の中小企業に就職した。学生時代の友人とは疎遠になり、平日は会社と自宅を行き来するだけの生活。
 彰には格闘技観戦という趣味があったので、休日はゴロゴロしながら、時々ボクシング等の試合動画を観て過ごしていた。

 あるとき、彰は英語学習の一環として語学学習用のSNSアプリを使い始めた。当時人事課で働いていた彰は、海外拠点とのやり取りのために英語を勉強しろと上司から言われていた。
 とはいえ、海外拠点には多くの日本人が在籍しており、実際には英語の習得は必須ではなかった。上司としても、建て前上とりあえず勉強に励むように促した、という感じであった。
 彰も特にやる気はなかったのだが、さすがに何もしないのも気が引けるので、中高生がやるような単語学習をちまちまと進める傍ら、何となく見つけた先のアプリを使い始めたのだった。

 彰はとりあえずプロフィールから作成した。翻訳機能を使い機械的な英文で、趣味は格闘技観戦であると書いた。
 このアプリの特徴は、世界各国のユーザー同士が互いの言語を学び合えるということである。彰が英語を学びたいのなら、英語を常用し尚且つ日本語を勉強したいユーザーと繋がれる、というシステムだ。
 彰がプロフィール登録してから数日後、シンガポール在中の女性からメッセージが届いた。彼女はMJと名乗った。彼女は後に、彰と紗椰を結ぶきっかけを作るキューピットの役割を果たすことになる。
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