3.

文字数 397文字

 あいかわらず骨のビリー・エリオットを気取りながら、優美に大胆に踊りながらクルクルと自動ドアを入った先は、町の本屋さんだった。
 回転した先輩の指が触れた本は『骨も融けるラブ・ストーリー』。
 「自由そのもののオレが出会った運命の本にちがいない」、先輩は至福の未来が予言されるであろう本を書架からぬきとった。
 骨だから本をあつかうにはぎこちない指先が繰ったページには、
「セックスを知ったわたしには、ほかのあらゆることが本当にはなんの意味ももたないこと、気候変動の問題さえ些事にすぎないのだということがわかった。」
 先輩は白骨の手から小説を取り落とした。
 そして驚愕して改めて自分を眺めまわしたが、青ざめるべき顔の皮膚はおろか全身の肉という肉がないのだ。
 柱に貼られた鏡のまえへとそろそろと近づいていく……
「ペニスがない!」

 ビリー・エリオット気分などどこへやら、先輩はパニック状態で自宅へと走る――
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