第2話 地上に降り立つ

文字数 2,937文字

異世界歴
まだ不明
朝方頃


僕は目覚めた。
一気に目を開けたが、まぶしい日差しにまた目をつぶった。

森の中にいた。
ゆっくりと周りを見た、様々な木や草、鳥の鳴き声、ふわふわ感のある白い雲と青い空。とても綺麗なところだと思った。

僕の体を見た。
刺された時の服装だったが、怪我していなかった。
額に違和感を感じた、そして触ってみた。

三本の小さな角が生えていた。

水が流れる音を聞き、音が発生しているところへ向かった。
小川だった。

水に映る自分の姿をゆっくりと見た。
角と赤い目以外、僕は僕だった。

「本当に転生したんだ。」

顔を洗い、少し水を飲んだ。
気温がちょっと暑かったものの、蒸し暑さがなく、快適に感じた。

そして思い出した。
この世界に送られる直前に魔族の女神から最後に聞いた言葉。

「あなたの名前はマーシャリ、魔王マーシャリ、世界に平和をもたらす者。」

「僕の名前はマーシャリ、魔王マーシャリ。」

独り言を呟いた。

後ろの茂みから音がした。

「誰だ!」

茂みから小さな悲鳴が聞こえてきた。

「出てきて、何もしないから。」

優しく声かけることにした。

「僕はマーシャリだ、怖がらずに出ておいで。」

茂みから3人の子供が出てきた。
3人とも、人間の子どもではなかった。

一人目はオークの男児で木の枝を握っていた。
二人目はコボルトの女児でオーク男児の後ろに隠れていた。
三人目はゴブリンの女児で震えながら刃こぼれのひどい短剣を握っていた。

「マーシャリ様は何者ですか?」

オークの男児を恐怖で途切れる声で質問してきた。

「転生者だ。」

素直に答えた。

「僕たちが美味しくないので食べないでください。」

ゴブリンの女児が言った。

「食べないので安心しろ。」

また素直に答えた。

コボルトの女児が恐怖のあまりに泣き出した。
怖がらせた責任を感じて、体をしゃがみ込み、子どもたちの目線に合わせた。

「安心して、僕は君たちの味方。」

子どもたちに声をかけた後、頭の中に声が聞こえた。

「ナビゲーション能力( スキル)、起動。」
「オーク、幼児、雄、推定5歳、名無し、戦闘能力( スキル)皆無。」
「コボルト、幼児、雌、推定4歳、名無し、戦闘能力( スキル)皆無。」
「ゴブリン、幼児、雌、推定4歳、名無し、戦闘能力( スキル)皆無。」

「一体、なんだ?」

僕は独り言のようにつぶやいた。

「女神様より魔王マーシャリに付与されたナビゲーション能力( スキル)です。」

「女神様?」

「はい、ちなみに魔王マーシャリ様のみ、私の声が聞こえる。」

「なるほど。ありがとう。びっくりしたけどな。」

子どもたちに視線を戻し、微笑んでみた。

「君たち何処から来たのか?」

「山の麓にある難民避難場所だよ。」

震えながらゴブリン女児が答えた。

「ここから徒歩30分程度にある場所です。」

ナビゲーション能力( スキル)が教えてくれた。

「君たち、案内してくれるか?」

3人の子どもが困惑した表情を浮かべたが、アイコンタクトを取り、了承してくれた。

オーク男児が先頭に歩き、案内していた。

一番怖がりに見えたコボルト女児が僕に声をかけてくれた。

「マーシャリ様、何処から来たのですか?」

「別の世界、日本と言う国から。」

「国ですか?」

「はい。」

「何で名前があるのですか?」

「女神様に名付けしてもらった。」

「女神様ですか?すごい、すごい。私、いつも女神様にお祈りしているの。」

「そうか。君はいい子だね。」

コボルト女児が無邪気な笑顔を浮かべた。

「難民避難場所と聞いたが、災害か何かに見舞われたのか?」

「人間が私たちをうちから追い出したの。」

ゴブリン女児が泣きそうな顔で答えた。

「人間?」

「はい、人間の神様が魔物が嫌いから、私たちを追い出したの。」

コボルト女児が悲しそうな顔で答えた。

「おい、ナビゲーション能力( スキル)、何かあった教えてくれ。」

言葉を心の中でつぶやき、ナビゲーション能力( スキル)に聞いた。

「5年前、北の人間の国々が連合を組み、南にある魔物領へ侵攻し始めた。」

「何故だ?」

「人間の神、唯一神を名乗る、エリアスの告げがあった。」

「何の告げ?」

「魔物、魔族、魔人が神の敵、滅せよ。」

「本当に神の告げ?」

「はい、人間の神が唯一の神であるといい始めた。」

「でも唯一神ではないのだろう?」

「はい、神様がたくさんいるが、この世界を任されているのは人間の神、エリアスと魔物の神、パメラ様の二神一組。」

「何故そうなった?」

「原因及び詳細が不明。神、エリアスが人間の国々にお告げという形で召喚魔法を使うように命令し、別の世界から人間の勇者を呼び寄せている。」

「勇者?」

「はい、現時点に3名います。一人目、カンク公国、即死のシマ・ジュンキチ。即座に殺すため、そのあだ名が付いた。」

「日本人っぽい名前だ。」

「二人目、ペイルネ王国、ジョーカーのダハラ・ロベル。敵、味方関係なく騙し、殺す。」

「なるほど。」

「三人目で一番やっかいな勇者は、ユ・エリアス宗教国、性獣のエリアス・ウィリー。神の名前を名字にもらい、殺戮と強姦の権化。」

「最低な輩。」

「勇者3名は全員異世界人である。」

「人間の国、いくつある?」

「先、お話した国以外、ベルガ共和国、オクタノ連邦共和国、チャベースリ帝国、タイタニア王国。」

「なるほどな。」

「更に中立自由貿易都市オオサキン、チューウェン労働者連邦共和国や小さな小国と公国が多数あります。」

「多いな。」

「すべての国及び人間の地域が勇者召喚魔法を行っており、人間の勇者が増える見込みである。」

「人間たちの目標は?」

「魔物の滅亡です。」

「魔物の状況は?」

「種族ごとに分かれて、暮らし、5年前まで人間の領域でも多数の魔物の集落があった。」

「今はすべて絶滅している。」

「5年前まで平和だったか?」

「いいえ、時々魔物対人間の争いがあったものの、冷戦状態だった。」

「難民避難場所はいくつある?」

「この森で10か所ある。この森以外、南の砂漠地帯にもいくつあり、熱帯林にも。
亜人間大陸には魔物の小国もある。」

「亜人間大陸?」

「はい、エルフ、ドワーフ、ゴルゴン、吸血鬼が住む大陸です。」

「彼らはエリアスを神と崇めるのか?」

「いいえ、彼らは独自の信仰か女神パメラ様を崇める。」

「彼ら、亜人間も絶滅の危機にあるのか?」

「はい、人間が一番多い種です。」

「わかった。ところで名前あるのか?」

「いいえ、私は魔王様の能力( スキル)にすぎませんので名前がありません。」

「名前がないと不便なので付けさせてもらうよ。」

「はい、了解いたしました。」

「君の名はキュリー、僕の好きな女性科学者で偉人だ。」

「ありがとうございます。魔王様。」

「マーシャリ様、避難所が見えてきた。」

オーク男児が指差しながら声をかけてくれた。

「わかった。ありがとう。」

避難所から数名の魔物が僕たち目掛けに走ってきた、全員武装していた。

「キュリー、早速仕事だ、この場合のどうればいい?」

「魔王様が魔王覇気を出してください。」

「魔王覇気?」

「魔王様の魔素量が無限にあるので、意識的にオーラを見せる技です。」

「では手順を教えてくれ。」

僕は魔族や魔物ともめたくないが、攻撃をかわす必要がある。
キュリーから手順を聞いて、やってみた。
魔族や魔物たちの動きが止まった。

「僕の名前はマーシャリ、女神パメラ様より異世界から呼び寄せられた転生者です。」

僕はそう、大きな声で叫んだ。

次回:難民避難所
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